内政プレイヤーさん その2
イースさんの攻略サイトは、ディルセイバークエスト初心者の俺が見てもよくわかるつくりになっている。
トップページを見れば、欲しい情報がどこに書かれているのかすぐにわかるし、内容も小難しい言葉を使用することなく、シンプルでかつわかりやすくまとめられている。
ただ……
ディルセイバークエストをはじめて、時々イースさんのサイト以外の攻略サイトや攻略動画も時々チェックしているんだけど、中にはかなりひどいサイトもあるんだよな。
イベントの強敵の攻略方法で、滅多に入手出来ないレアアイテムを使用することを前提にして説明してあったり……しかも、そのレアアイテムを入手しようとすると、課金ガチャを相当数回さないと……
記事の内容にも「え? そんな仕様だったっけ?」と、思わず首をひねってしまう物がアップされている事も少なくない。
例えば、俺がSSS級モンスターのポロッカを仲間にしたことを記事にした攻略サイトがあったんだけど、
『イベントフィールドで同じSSS級モンスターを5匹連続で狩ると仲間に出来る』
と書いてあって、唖然としたことがあったんだよな。
これに関してはイースさんが内容に誤りがありますよ、ってメールを送ってくれたらしいんだけど、管理人からの返信は、
『トップページに『内容は保証しない』って書いているでしょ? あくまで伝聞なんだからw』
と、まぁ……なんとも微妙な気持ちにさせてくれる内容だったんだよな。
ただ、このサイトの管理人はスクショの無断掲載なんかをやりまくっていたせいで、運営からアカウントを停止されてしまって、結局サイトも放置になっているんだよな……
で、だ……なんでこんな事を思い出しているかというと……
俺の目の前で、ツルハとエデンの2人が、エナーサちゃんと話をしているんだけど、
「え~!? そんなはずはないでしょ!? だって攻略サイトにはこう書いてありましたよ!?」
「そうそう! イースさんサイトの攻略方法に従ったのに、あのサイトが嘘を書いてたっていうの!?」
「ですから、先ほどから説明していますようにでしゅね……そんな内容はイースさんの攻略サイトには記載されていましぇんので……おそらく他の攻略サイトと混同されているのではないかと……」
と、まぁ……ツルハとエデンの質問攻めの前に、以前の噛みまくりな癖を再発させながらも必死に説明を続けているエナーサちゃんだったわけで……
今のエナーサちゃんは、イースさんの攻略サイトの手伝いをしている。
その関係で、イースさんのサイトの内容は全て把握しているんだよな。
そんなエナーサちゃんが言っているんだから、その内容に間違いはないと思うんだけど、ツルハとエデンはその言葉に納得いかないみたいで……
「もう、仕方ないわね。私がもう一度一喝してあげるんだから!」
その様子にイラついたのか、エカテリナが肩を怒らせながら歩きだしたんだけど、そんなエカテリナの手をとって、ストップさせた俺。
「いや、一喝するよりも、論より証拠だろう。ここは俺に任せてくれないか?」
そう言うと、エカテリナは俺に手を握られたまま固まっていたんだけど……よく見ると、その顔が真っ赤になっていて……
「あ、あの……だ、旦那様の考えは理解したんだけど……そ、その……い、いきなり手を握られたら、ドキッとしちゃうというか……その……う、嬉しいんだけど……こ、心の準備が……」
モジモジしながらそんな事を口にするエカテリナ。
なんというか……そんな事を言われてしまうと、俺まで恥ずかしくなってしまうんだけど……
◇◇
そんなわけで……
俺は、ツルハとエデンを連れてログインの街へと移動していった。
「すごいなぁ……村のレベルがあがるとあんな地下道まで所有することが出来るんだ」
「街まで一瞬だもんね! 絶対にアレも作ろうね!」
地下通路で移動してきた2人は、嬉しそうにそんな会話をしているんだけど……あの地下通路にしても、土竜族のモグオを仲間にして、かつクレイントーラ神様のイベントをクリアしたおかげで利用可能になったわけで……って、ちょっと待てよ……クレイントーラ神様のイベントは別に関係なかったというか、ただのお邪魔イベントだった気がしないでもないというか……
で、そんな2人と、エナーサちゃんとエカテリナを引き連れて、ログイン広場の一角に立っているフオドーハの元へ出向いた俺なんだけど……
「あら? 誰かと思えば、フリフリ村長さんじゃなぁい、お・ひ・さ」
俺の目の前に立っている女性はですね……すっごいゴージャスな毛皮のコートを着て、派手な化粧をしていて、細長いキセルみたいな物を使って煙草をプカァってやっていて……最初に出会った時のフードを目深に被った、見るからに怪しい人だった容姿が別な方向に突き抜けているというか……
「あ、あぁ、フオドーハ。久しぶり」
まぁ、容姿の事を突っ込んでも仕方ないので、小さく咳払いをしてから言葉をかけていく俺。
「フリフリ村長さんが来たってことは、仲間キャラの買い取りたいってことね?」
「あぁ、そうなんだけど……今日は俺じゃなくて、こっちの2人に仲間キャラを販売してほしいんだ」
で、ここで俺はフオドーハの耳元に口を近づけた。
「……あのさ、前に俺に販売してくれたテテみたいに、村長補佐のスキルを持った仲間キャラを1人、斡旋してほしいんだけど……お願い出来ないかな?」
「そうねぇ……いつもなら『おととい来やがれ』で終わらせるお話なんだけど、他ならぬフリフリ村長さんのお願いじゃあ無碍には出来ないわねぇ」
そう言うと、フオドーハは笑みを浮かべながらツルハとエデンの方へ歩いていった。
「いらっしゃい。仲間キャラを購入したいってことでいいのかしら?」
「え、えぇ……えっと、村のレベルをてっとり早くあげるために、たくさん売ってください」
「そうそう! さしあたって100人くらい買っちゃおうかな」
フオドーハの前で、そんなことを言っている2人なんだけど……おいおい、イースさんの攻略サイトに、
・一度に購入出来るのは10人まで
って説明されていたはずだぞ?
そこも読んでいないのか、この2人ってば……
こういったあたりって、ネット社会の弊害だよな。
自分の興味のあるところだけをかいつまんで読んで、興味の無いところはスルーする……その結果、大事な事が抜けている……って、部下の中にもいたんだよな、こんなヤツが……
ちょっと黒歴史を思い出してしまい、若干ブルーになってしまった俺。
「旦那様、どうかしたのかしら? 何かあったら私に相談してもいいんだからね!」
そんな俺の様子を察したのか、エカテリナが努めて明るい声でそう言った。
そうなんだよな……エカテリナってば、こういうときに即座に反応してくれるんだよな。
それだけ、俺の事をよく見てくれているってことなんだろう。
「あぁ、大丈夫。ありがとな、エカテリナ」
「そう、大丈夫ならいいんだけど……」
ここで、俺の耳元に口を寄せるエカテリナ。
「旦那様……さっきのフオドーハとお話されていた時って、ちょっと距離が近すぎたと思うんだからね?」
って……そ、そんなことで嫉妬までしていたのか……
「わかった、以後は気を付けるよ。俺の奥さんはエカテリナだし、そのエカテリナが嫌がる事は俺もしたくないからな」
笑顔でそう言った俺。
すると、エカテリナの顔がみるみる真っ赤になっていった。
俺の言葉が嬉しかったのは想像出来るんだけど、どうもエカテリナのキャパを超えてしまったらしく、口をあわあわさせるばかりで言葉が出てこないというか……
そんな俺達の前で、
「一度に購入出来るのは10人までなんでねぇ……」
と、ツルハとエデンに説明をしていたフオドーハ。
エナーサちゃんも一緒になって説明していたおかげで、ツルハとエデンの2人もどうにか納得したみたいだった……相当不服そうでもあったんだけど……
んで……
「じゃあ、今回はこの10人でいかがかしら?」
フオドーハがそう言うと、その後方に10人の仲間キャラが出現したんだけど……ちょっと待って、1人だけ……見るからに異質な人が混じっているんだけど……
他の仲間キャラ達は、ごくごくありふれた村人の服を身につけているんだけど……1人だけ、タイトスーツでビシッと決めている眼鏡の女性が……
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