第69話


 国境門北の森にて、勝利の雄たけびが響いた。


 ファイアーストームでの大打撃プラス分断作戦も成ったが、思いの外ステラの方へと残った敵兵が多かった。


 というか多過ぎた。百程度残すつもりが二百以上残ってしまったのだ。

 流石にアリーヤ、ソフィ、ソーヤの三人だけの援護では足りない。


 仕方が無いので『絆の螺旋』総動員してステラと共闘して貰い、更に百以上を削れば、俺が足止めしていた敵兵は一目散に逃げていった。

 ステラが追撃に走ったが、森を抜けた所で止まり戻ってくれた。


 現在、うちの隊は全員集まり被害報告を尋ねているところ。

 わかってはいたが被害はゼロ。皆興奮して各々雑談を行っている。


 一度報告を入れようと徽章に魔力を送り通信を繋げる。


「こちら、カイト。北の森に入った兵は蹴散らしました」

『うむ。逃げ帰った敵兵を確認した。見事だ。それで、戦果と被害はどれほどだ?』

「被害はありません。敵兵を七百ほど削れました」


 あれ? 返事が返って来ないと徽章をトントンと叩いてみた。


『な、なにぃ!? それは真か!?』


 おお、繋がった。


「ええ。かなり弱かったですね。

 ダンジョンで言うなら二十階層レベルじゃないかな……」

『そ、それでも被害が無い訳が……』

「あ、怪我人すらない訳じゃないですよ? 軽傷でしたけど。それより南の森はどうなってます?」


 うん。無茶するステラは怪我をした。

 アレクやアーロンさんも多少は怪我を負っている。うちのやつらも数人は怪我は負った。

 ああ、シールドを掛けて無ければ大怪我だっただろうから驚くのも仕方ないか。


『南は厳しいようだ。援軍を要請されているが、それが狙いだろうから出すのも厳しい』


 ハロルドさんの言葉に何故か「あ、それ私が行きます!」とステラが横から返答を返した。


 はぁ? おいステラ、お前勝手に決めんな!


 彼女の肩を掴み、口に人差し指を当てて黙れとゼスチャーしたのだが、目を合わせようとしない。


『い、行ってくれるのか!?』

「お任せ下さい!」


 あーあ、言っちゃったよ。お前、馬鹿じゃん?

 いや、けどここからどうやって行くんだよ……


「えっと、行くとなるとこの森は放棄する形になりますが、大丈夫ですか?」

『ああ、そこは問題ない。これ以上そっちに兵を送るならそのまま本隊を攻める。

 そろそろ向こうも魔力が心許なくなってきた頃だ』


 聞けば、ロックバレットに変えて防壁を破ろうと数回の試みがあったそうだ。

 だが、破られたのは一つだけ。それを見て魔法攻撃を止めたらしい。

 今はにらみ合いが続いている状態。


「えーと、取りあえずそっちに向かいます」

『すまん……頼むぞ』


 そうして通信を切った。


 その瞬間、ヘレンズの団長が怒号を上げた。


「貴様ぁ! 何故、隊長の言葉を無視して勝手に返事を返したのだ!

 貴様の所為で我らまで死地に行く事になったのだぞ!?」


 うん。気持ちはわかる。これは正直正しいと思う。

 ヘレンズ子爵が諌め、こちらに頭を下げるが彼がそう言うのは当然だろうと返した。


「はぁ? 何言ってるのよ。私が一人で行くに決まってるでしょ。私が受けたの!」


 いや『何言ってるの』と言いたいのはこっちだと、皆頭にハテナマークを浮かべた。

 ステラが要請に応えたから一人で行かせましたが通る訳ないだろと彼女を叱り付けた。


「俺の徽章を使って俺の隊としての通信をしてたんだよ。

 今更知りませんが通じる訳無いだろ? 当たり前だよな?」


 彼女はその言葉に数十秒のタイムラグを起しながらも理解した。

 今からハロルドさんの所に行って訂正すると言っているが、彼女の行動は戦に勝つという点から見れば正しい。

 無傷で魔力もまだ余裕がある俺達が行くのが一番有効と言える。


 本陣に戻り他を出してもらうという手もあるが、それをすると俺達は本陣同士のぶつかりすらも体験する羽目になってしまう。

 南の森も取り返し、後は任せたとするのが一番楽な気もするとうちのギルドメンバーに説明した。


「それは確かに。無傷だと知られている俺達がずっと戦わないのは許されませんね」

「うむ。主の言うとおりじゃな。確かに南の森へと赴きそちらを片付けて魔力を使い果たしたと言えばそれで少なくとも今日はわしらの仕事は終りに出来るじゃろ」


 コルトの言葉にホセさんが同意して皆が深く納得した。

 だが、他の面々は違う。『おっさんの集い』の若手やヘレンズ騎士団は不安を露にしている。


「皆落ち着いて聞いてくれ。

 行くのはうちのメンバーとアーロンさん、アレクだ。

 正直、潜伏地点で最初から潜んでて貰わないと死亡率が高すぎる。悪いが希望しても連れて行けない」


 そう告げれば、全員の視線がこちらに集中した。


「ああ、流石は名誉伯爵殿。戦況をしっかりと見ておられる!」とヘレンズの騎士団長が声を上げた。


 いや、戦況を見た訳じゃないけど……

 取りあえず『おっさんの集い』の皆とヘレンズ騎士団は本隊に合流させる旨を説明した。


 よし、漸く落ち着いた。これで移動できると安堵したのだが、落ち着いてない子が一人いた。

 暴走しまくったステラだ。


「わ、私が最初に特攻して数を減らしておくわ!」

「はぁ? いや、ちょっと待て、一緒に行かなきゃダメなんだって!」


 と静止するが、飛び出した鉄砲玉は止まらない。

 唖然として放心する面々。


「ち、ちくしょう。この馬鹿ステラぁぁぁ!」


 俺は走って彼女を追う。

 森を抜けて、睨み合う軍隊の中央を走り。


 その後ろをうちのメンバーとアレク、アーロンさんも付いて来ている。


 東には自軍本隊。西にはオルバンズ軍本隊。

 ポカンとこちらを見詰める両軍の間を走る。


 そうして最短ルートという奇策中の奇策は成った。

 うん。最短過ぎた。

 恥かしくて顔から火が出そう。


 着いて早々に俺達は頬を引き攣らせステラを囲んだ。


「主よ。こやつの面倒は見きれぬ……」


 悲しそうにホセさんがつぶやく。


「俺だって無理だよ……」


 ステラは腕を組んだ俺達に囲まれ、いつもの様に可愛く口を尖らせて俯いている。


「あー、もういいや。お前、マジで鉄砲玉にするから。

 回復してやるから、特攻し続けろ!」

「ま、任せて!」


 彼女の顔は一転晴れやかなものと変わる。

 皆俺と気持ちは一緒なのか、叱責の言葉もなく頬を引き攣らせたまま固まった。


 そしてすぐに首元に付けた徽章が光った。

 魔力を当てた瞬間、大声が響いた。


『カイトぉ! おぬしは何をやっておるのだ!』

「……ステラに言って下さい。

 言う事を一切聞かないんです。行くなと言っても行くんです」

「うん。お爺様、ここでカイトを責めたら可哀そうだよ……」


 そう、通信の相手はルンベルトさんだ。

 慌てて本陣のハロルドさんの所に向かって通信を繋げたのだろうと容易に想像がついた。


『むぅ。しかしそれだけの人数では無理であろう。一度戻るのだ』

「いえ、元より精鋭のみでの作戦を行うつもりでした。

 少なくとも数を減らしてから戻ります。

 足で大きく勝っていますし、シールドもあるのでそこまで危険ではなさそうですしね」


 彼は物申したい気持ちを飲み込むように『うむぅ』と唸ったが『わかった』と了承してくれた。


 もうこれ以上ステラを責めても仕方が無いとコルト、ホセさん、レナード、アーロンさんに索敵を頼み散ってもらう。


「雑魚とはいえ厄介な数だ。先ずは現状を把握して落とせそうな場所を攻める。

 近衛にも協力して貰いたいし現在地を突き止めての合流は必須項目だな。

 他に提案はある?」

「今回は潜伏できないよね? 正面からいくの?」


 アディの問いかけに俺は首を横に振る。


「相手の位置と向かう場所さえわかってりゃ、森の中だしいくらでも待ち伏せの不意打ちは狙える。成功するかは置いておいて常にやって行くべきだろ」

「カイト様、魔力は大丈夫なのですか?

 私たちのシールドまですべて担当して……」


 そういえばまだまだ余裕だな。ソフィアにヘイスト貰ってるし、最初からここに一緒に来た面子にだけしか掛けてないしな。

 魔法は受けてないからマジックシールドに関しては掛けなおししてない。

 本当に魔力が三倍くらいになっているのだろうな。


 その旨を説明し、アレクも余裕だろと問い掛けた。


「そうだった。僕もガンガンスキルを使うべきだね。ついダンジョンの時の癖で控えめに使ってたよ」

「ああ。温存してる場合じゃない。魔力が切れれば堂々と帰れるんだからガンガン使って行こうぜ」


 そうしていると、コルトが慌てて戻ってきた。


「近衛兵が交戦中で、押されていたので三人は応援に回りました。数は推定七百!」


 マジかよ。撤退できないかな。

 というか、合流しよう。先ずはそこからだ


 コルトの案内で交戦地帯へと向かう。

 戦場が見えてきて俺は思わず顔を顰めた。

 近衛兵は百人丁度送ったはずが、立っているのは数人しか居なかった。


「アリーヤ、ソフィ、ソーヤ、突っ込んでファイアーストームだ。シールドが解けた時点で引いていい。

 他のやつらは近衛兵を無理やりにでも下がらせろ!」


 そのまま走り、後ろに転がる兵士達に無詠唱ヒールを配る。

 節約したいから詠唱するべきだが、今は一刻も早く離れるべきだ。

 十数人に掛けたがやはり四人程度はまだ立てないレベルだ。


「俺はカイト・サオトメ名誉伯爵だ。援軍に来た。

 一先ず下がるぞ。怪我人はこちらに任せて近衛兵はそのまま撤退しろ!」


 俺の指示を聞いてくれるか不安だったが、彼らは安堵を浮かべて後ろに走った。


「魔法要員とアレク以外は怪我人を抱え離脱。

 ソフィたちも魔力か負傷で厳しくなったら声を上げてから離脱しろ!

 ステラ! 今から遅滞戦闘を行う! 相当厳しいが耐えぬけよ!」

「任せて! 大好きよ!」


 ……こいつ何言ってんの。全然嬉しくねぇし。


「カイト様、そろそろ魔力が尽きます!」

「よし、全員下がれ!

 ステラ、特攻して搔き回せ!

 アレクは中に入らず、避けながらの全力でスキル攻撃だ!

 期を見て撤退する事を忘れるな。今回は従わなければ本気で置いて行く」


 ステラは頷いて敵に向かい走る。

 その後ろをアレクと共に後ろから付いて行く。


 凄い数の遠距離攻撃がステラへと集中する。


 彼女はすぐにシールドを解かれ、切り裂かれながらもスピードを上げた。

 それに途中まで付いていき、シールドとヒールを掛けて離脱する。


「アレク、足を止めずに移動しながら遠距離攻撃を続けろ。

 負傷したら俺の地点へと戻りながら攻撃を続けてくれ!」

「うん、わかった。けど、カイトは大丈夫なの……?」

「俺はスキル攻撃が届かないラインで待機する。あの馬鹿を――――――――」


 そう言っている間にもステラが重症を負った。足を裂かれ肉が見えている。

 即座に魔力を纏い接近して、一閃で切り込みヒールとシールドを掛けなおして一閃を移動に使い離脱する。

 流石にシールドが切れて数回切りつけられたが、何とかこなせた。


「シールド! ヒール! おいアレク! 止まってんな!」

「あっ! ゴメン!」


 驚いて足を止めていたアレクに声を掛け、再び敵から距離を取る。

 アレクが攻撃して止めてくれないとステラがどんどん敵の中に埋まって行く。そうなると元々無茶な支援の仕方だ。届くはずが無い。


 盗賊の時よりステラの被弾が多い。これは厳しいかと思ったが、アレクの斬撃を飛ばすスキル飛翔閃の滅多打ちのお陰でこっちを無視できなくなっている。


「主、距離は大分取れた。もう十分じゃ」

「よし、ホセさん、一度あの中に付き合って。ステラを回復してやらんと拙い」

「了解した。道は作ろう」


 ホセさんに続いて後ろを走れば、とても安全な空間だった。

 凄いな。飛翔閃とかなら普通に全部切り落としてる。やっぱりレベルが違うわ。


 ステラの元へと付いて、獣の様に唸る彼女に再びヒールとシールドを掛けて撤退だと告げた。


「りょ、了解……フーッ、フーッ!」


 興奮しているが言う事を聞くようなのでアレクの援護を受けながらも距離を取る。

 敵も当然興奮しているのでもの凄い勢いで追ってくるが、一度ファイアーストームで先頭を焼いてやれば足が止まった。


 そうして暫く離れた所で腰を落ち着けていた皆と合流した。


「ステラ、いくつ削れた?」

「百、とちょっと。楽し過ぎた。興奮しすぎて鼻血でそう……」


 あそう……


「合計二百とちょっとか。あれだけ危険なことして……」


 魔力ももう結構厳しい。やっぱりヒールとシールド連発は消費がきついな。

 正直もう逃げたいところだけど……


「このまま本陣に逃げたら拙いかな?」

「それは宜しくないでしょうな。五百は無視できない数です。

 それが後ろに回れば相当な不利は否めません」


 さーどうしよう。と顔を顰めた時、徽章が光った。

 どうしたんだと繋げてみれば、即声が聴こえてきた。


『良くやってくれた! そっちはどうだ? 無事か!?』


 えっ?


「交戦して二百ちょっとを削りましたが、俺達も耐え切れず一先ずの後退を決めたのですが……?」

『なに!? 満身創痍な様子で敵兵が出てきたぞ。それよりも無事なのか? アレクは!?』

「ええ。俺達に死者は出ていません。ただ、近衛兵が……」

『ああ、そちらは聞いている。もう森の守りはいらん。本陣に戻り休んでくれ』


 や、やったぁぁ!


「了解です。近衛と共に帰還します」


 そうして通信を切った瞬間レナードとハイタッチした。

 やっと終わったぁと声を上げるレナード。


「後はじっくり観戦させてもらおうぜ。俺たちは仕事を終わらせたんだしな!」

「はいっ! 今回は役目が多くて疲れました……」


 ソーヤも疲弊した顔で言う。確かに魔法特化の三人には結構無理させたな。

 皆も対人は初めてだっただろうし。


 本陣へと足を向けながらも改めてよく頑張ってくれたと感謝の言葉を贈る。

 その時、後ろから声を掛けられた。


「サオトメ殿、救援、真にありがとうございました」


 一人が深く頭を下げると後ろに続く三十人の兵士も揃って頭を下げた。

 まだ半数近くは一人で歩けない状態だが、表情は意外と明るい。


「いえ。理不尽な数でしたね。少しでも救えたのは良かったのですが……」

「はい……ですが散った者達もここが勝利に終わった事で報われました。

 感謝してもしきれません」


 あぁ、そういう考え方もあるのか。


「まだ戦いは始まったばかりです。

 そういう話は後にして一先ずは休ませて貰いましょう」


 うん。今日は凄く疲れた。主にステラの所為で。

 そう思ってジト目を向けたのだが、何故か彼女はしな垂れ掛かってきた。


「ね、ねぇ、私の事抱かない? なんか収まり着かないのよ……」

「いや、お前何言ってんの? ちょっと二人でそっちの影行こうか!」

「カイト様ぁ!?」


 おおう。違うってば。

 お説教しようと思ったの。その体に……


 てか、最近サラも言うようになってきちゃったな。前は笑って流してくれてたのに。


「もうっ! すぐ他に女作るんだからぁ!」


 アディさん? 作ってないよ?

 うん。こいつを俺の女とは認めない。絶対に。


 それは、たとえやってもだ!


「威張る事じゃありません!」

「あ、はい」


 そうしてふざけていれば、本陣に着いていた。

 一応戻った報告をしようとルンベルトさんの所へと向かうと、アンドリューさん達も一緒にいた。


「ルンベルトさん、只今帰還しました。

 アンドリューさん、ヒューイさん、お疲れ様です」


 アンドリューさんたちに声を掛ければ、ルンベルトさんよりも先に声が返って来た。


「いや、聞いたよ。凄いね、サオトメ殿は。私も単騎で特攻してこようかなぁ」

「ヘレンズ騎士団を連れながらも千人切りとは感服しました。

 まさかこれほどとは……」


 いや、千人切りなんてしてないよ!

 うちの隊でやったのは九百人程度だってば。

 いや、でも凄いなマジで。そんなにやったんだ?


「全く……無茶をするなと叱りたいのに、褒め言葉しか出てこぬわ。

 良くやってくれたな、カイト」

「アレクも凄い働きをしましたよ。ちゃんと褒めてやってくださいね」

「むぅ。後でじっくり聞かせてくれ」


 嬉しいのか困っているのかわからない彼の複雑な表情に苦笑して「では、今日は休ませて貰います」と後ろに下がった。

 本隊の後方。何故か戦場だというのに、沢山の椅子が用意されている。


 そこでは、うちの隊の他に王女二人や南の森を担当していた近衛騎士もいた。


「お帰りなさい。聞いたわ。圧勝したんですってね?」

「いや、所々で危ない場面はあったよ。誰の所為かは言わずともわかるな?」

「ええ。ステラは返ったらお仕置きです!

 カイトさんを誘惑するなんて許せません!」


 いや、そこじゃねぇよ! てかそこすらも報告されてんの!?

 しかしステラも興奮状態が終わったのか。めっちゃ小さくなってるな。


「まあ、最後の働きはかなり凄かった。

 単騎で七百の敵を足止めとか、何処の英雄だよってレベルだったな」

「「「えっ?」」」


 と、皆の視線がステラに集まった。

 ああ、これは俺とアレクとホセさんくらいしか知らなかったな。

 しかもなんか驚きの視線を受けたからかステラが元気になってる。


「あんたが回復してくれたからね。最高のパートナーよ!」

「ちょっと! こいつのパートナーは私!」

「こればかりはエリザベス様でも譲れません!」


 あーもう勝手にほざいてろ!

 と二人の言い合いを切り捨てるが、周囲の面子がステラの事を聞きたがった。


「いや、普通に切れらながらも切り返して敵軍の中で戦い続けたんだよ。頭おかしいだろ?」


 うんうんと頷く一同。


「痛く、なかったの?」と、サラが苦い顔で問い掛けた。


「痛いわよ! けど、すっごい爽快感よ。やってみるといいわ」

「誰もやらねーよ!」


 うちのサラに変な事を吹き込むんじゃねぇよ!

 流石に真似はしないだろうけど。


「あら、あんたはやってくれたじゃない。あの中に入って来て回復してくれた。

 あれがあれば私はずっと戦えるわ。最高のパートナーよ」


 こいつ……俺を回復道具かなんかと勘違いしてやがるな。

 今度からこいつを付けない様に頼もう。


「てか、敵軍との間を走りぬけた時マジで恥かしかったんだからな!?」


 なぁ? とうちの面々やアーロンさん問い掛けた。


「いや、私は戦々恐々としてましたな。

 流石にあの人数から魔法を撃たれたら死ねますから」

「カイトさん、恥かしいって次元じゃねぇだろうよ……」

「そうじゃな。恥かしいとか考える余裕があったのは主くらいじゃろう」


 はぁ? 何で俺の味方してくれないの!?

 ここは一致団結して叱らなきゃいけないところじゃん!


「じゃ、もういいよ! ホセさんはこれからステラ担当ね!」

「ま、待て! わしも恥かしかったわ!」


 ふはは、初めてホセさんの弱みを握ってやったぜ。


 しかし、戦況が動かんな。

 と、にらみ合いのまま動かない両軍を見回し首を傾げた。

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