転生したら剣聖と大賢者の息子で勇者になるしかなかった件~転生特典【絶対吸収】で魔術も剣術も極めて無双ハーレム~

しのこ

第1話貴族転生

「どうされたのです! アルクぼっちゃま!」


 目が覚めると、執事やメイドさんらしき人達3人が俺のことを心配そうに見つめていた。


 周りを見てみると、豪華な装飾を施された置物が置かれていたり、自分の服を見てみるとまるで貴族が着るかのような衣装で身を包んでいた。


 昨日は自室ベッドで眠ったはずなのに、どうしてこんなところにいるのか全く分からない。


 もしかしたら、やけに意識がはっきりしてるけど夢なのか? それなら、少し話に乗ってみるのも面白い。


「大丈夫だよ、爺。少し眠気が襲ってきただけだ」


「体調が優れないのでしたらもうお休みになられては? 時間も遅いことですし」


 窓を見てみると太陽はほとんど水平線にかかり、空を闇が支配しようとしている。


 部屋の中は煌々とした光があるせいで気がつかなかったけど、どうやら時刻は夜らしい。


「そうだね。今日は早めに休ませて貰うよ」


 眠ればこの夢からも覚めるだろう。

 そう思って席を立とうとした時だった。


「な、なんだこれ!?」


 体からふわふわした白い光が現れたのだ。

 最初は手から現れた光は、次第に全身から現れ始める。


「こ、これは!? 魔法覚醒の兆候!?」


「セバス様、魔法を扱えるのは女に限られています。アルク様が魔法を使えるようになるはずがございません」



 メイドの一人が答える。

 ただ、そうは言っても俺の身体から放出される光は勢いを増していく。自分が照明にでもなったかのようだ。



 慌てる執事に、動揺しながらもメイドが答える。

 この夢の世界では女性しか魔法を使えないらしい。随分と男の立場が低そうな世界だ。


 


「ぼっちゃま! 身体に、身体に異変はありませんか!?」


「セバス様はまず落ち着いて下さい。そんなに慌てたらぼっちゃまが慌ててしまいます」


「問題ないぞ」


 身体から大量に光が放出されているが、特に異変はない。そもそも夢の世界の話だし、どうだっていいけど。


 執事が言うことが本当なら、今の俺は魔法が使えるかもしれないんだったか。ちょっと試してみたい。


 次第に光も収まってきたので、尋ねることにした。



「ねぇ、どうやったら魔法を使える?」


「えっ!? どうされたのです」


「ぼ、ぼっちゃまが素直に物事を聞くなんて珍しいですね」


「そんなことは良いからさ、教えてよ」


 いきなり人格が俺になったから今までと差が出てしまったらしい。仕方ないことだ。


 ただ、魔法は使ってみたいので気にしないことにした。


「手を前に出してイメージするのです。魔法の力がもし目覚めているのなら、それで魔法が出ます」


 落ち着いている赤髪のメイドが、慌ててる他の2人を無視して俺に魔法の使い方を教えてくれた。


 詳しく話を聞きたくなったので、どうすれば良いのかメイドさんに細かく聞くことにした。


 ◆


 魔法の基本属性は火、水、風、土、雷の5つで構成されているらしい。



 魔法は階級で分かれており、初級、中級、上級、最上級となっている。



 複合属性なるものもあるらしい。属性を掛け合わせて新たな属性を生み出すようだ。


 使い方は魔法をイメージするだけらしいが、階級が上がるごとにイメージを具現化する難易度が上がっていく。


 ちょっと試してみようかな。


「やるなら炎の魔法がオススメです。基本の魔法の中でも一番」


「炎のイメージかぁ」


「火の粉をイメージして、それを掌の上に出すのが良いと思います」


 メイドさんのクリスタが教えてくれた通りにやってみることにした。

 掌を上に向け、そこに炎が生み出されるのをイメージする。


 すると、野球ボール程度の大きさの火の粉が出現した。メラメラと燃えて辺りを照らす。


「ままままさか!? 男が魔法を使えるなんて話し、伝説でしか聞いたことがありません」


「ぼ、ぼっちゃま!? 実は女の子だったのですか!?」


「いえ、ぼっちゃんには小さなぼっちゃんがついておいでです。先日確認しました」



 魔法の出し方を教えてくれたクリスタが淡々と答える。いや、何ひとのぼっちゃん見てるのさ。



「これ、そんなにすごいの?」


「すごいなんてものではありません! この世界で男で魔法を扱える人間なんて存在しませんから。それに、話を聞いただけで魔法を具現化するなんて、大天才ですよ!」


「さすがぼっちゃまです。話を聞いただけで魔法を具現化をできるのなんて1000人に1人もいないでしょう」


 夢の俺は随分とスペックが高い。

 イメージするだけで出来るならもう少し魔法も使ってみたいということで


「もう少し強い魔法も使ってみたい」


「かしこまりました。では、私クリスタがぼっちゃまが魔法を使えるようにサポートさせていただきます。室内では危険ですので、お外に出ましょう」


 魔法を使ってみることになった。

 クリスタに手を引かれ、俺は外に案内される。


 淡々と喋っていたクリスタだったけど、よくみたら目をキラキラさせていた。魔法をここまで使えるのが珍しいからなんだろうけど、意外と楽しんでるようだ。



「ぼっちゃま、今から教えるのは中級魔法です。これを一発で使いこなせれば本当に伝説に名を刻む逸材と言えます」


「へぇ。試してみようか」


「炎の剣を作り出し、それを遠くに飛ばしてみて下さい」


 それならイメージするのは簡単だ。ギル●メッシュのようにしてみよう。


 背後に大量の炎の武器を背後に生成させる。



「こ、この規模は!」


「クリスタ! これはぼっちゃまがやっておられるのか!?」


「えぇ……間違いなくぼっちゃんがやっています」


 俺が炎の武器を大量に作り出すと、クリスタも含めてメイドさんや執事が慌てる様子が見えた。


 イメージしたものがちゃんとできたのか確認するために振り向くと、確かに大量の武器が空に停止している。


 このまま停止させておくのもおかしな話なので、近くにあった岩に武器をぶつけると、大岩は粉々に砕け散った。


 木っ端微塵である。



「ク、クリスタ。これは、相当すごいのではないか?」



「相当なんてものではありませんよ。出したのは中級魔法ですが、ここまで多数の武器を生成する難易度は上級クラスの魔法に匹敵します」


「そんなにすごいんだ。全然実感わかないけど」


「さすがですぞぼっちゃま! これはブレイブ様とアリア様もさぞかし驚かれることでしょう」


 文脈から察するに、今の俺の父さんと母さんってことか。今は2人ともいないようだけど、戻ってきたらさぞかし驚くんだろう。


「これは面白いことになりそうですね」


「クリスタは魔法が得意なんだ?」


「はい。多少腕に覚えがあります」


 せっかく面白くなってきたところだけど、なんだか眠気? が襲ってきた。夢の中で眠るっていうのも妙な話だけど、ベッドで休むことにしよう。


「疲れたし部屋で休むよ。みんな、戻ろうか」


「初めての魔法は相当気力を使いますからね」


「また今度があれば、魔法教えてよ」


「は、はぁ……。構いませんが……」


 流石のクリスタも言葉の意図が分からずに首を傾げた。面白いのは本当だし、またこの夢を見れるなら是非教えてもらおう。


 外の風は少し肌寒いし、早く暖かいベッドに潜りたい。

 俺はメイドと執事を連れて館に戻ると、すぐにベッドに潜り込む。



 なんだか特別な立場になったようで面白い夢だった。

 こんな特別な立場に生まれたらさぞ楽しかったことだろう。


 ベッドの中でそんなことを考えていると、俺の思考は闇に飲まれていった。

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