変人とのお話
「苅田くんってタイプの人とかいるの?」
「苅田は胸が大きい子が好きだよ」
面倒なことになったな。
「今、好きな子とかは?」
「うーん、今はいないかな。苅田、最近は二次元の方にハマっちゃってたから」
「そ、そうなんだ……」
どうして俺が、他人の恋を応援しないといけないんだ。
「苅田くん、仲良い女の子いるの?」
「全然! 昔っから女の子と話せないの。苅田、恥ずかしがり屋だから」
「じゃあ恋人とかは今まで」
「うん、フリー。ずっと。人生で彼女なんてできたことないよ。苅田には」
彼女いない歴=年齢ってか。
まぁ確かに俺も昨日までそうだったんだけどな。
それにしても。
「なんでさっきからお前が答えてんだ!? 赤岸!?」
俺は叫んだ。
「おかしいだろ! さっきからずっと青波は権三に質問してるのに、どうしてお前が答える」
「え、なんとなく」
「しかも! 権三も自分で答えればいいのに、なんで『うんうん、そうなんだよね』みたいな顔してんだ!?」
「えっ」
「えっじゃねーよ!」
なんだこいつら。
わけわかんねえ。
どうなってやがるんだこいつらの中学は。
卒業生全員頭狂ってんじゃねえか。
しかも、なんで俺が突っ込んでも二人ともぽかんとしてんだ。
俺がおかしいみたいになってるぞ。
え、俺がおかしいのかな。
不安になってきた。
「私も同じこと思ってた……」
すると、青波も苦笑いしながらそう言った。
救われた……
青波の一言で俺の孤独感が癒された。
さすが彼女。
持つべきはガールフレンドよ、このご時世。
まぁそれはともかく。
「お前、好きな子もいないのに、どうやって彼女作るって言うんだよ?」
俺がそう言うと、権三は首を捻る。
「うーん、曲がり角でパンを咥えた女子高生とぶつかったりして出会って……」
「あー、ごめん。そういうのいいから」
ダメだ。
頭ん中までオタク野郎だこいつ。
リアルでパン咥えてる女子高生なんかいねえよ。
曲がり角でって、そんなところでぶつかったら危ねえだろ。
第一この学校の近くは車通りが多い。
道路に飛び出して、車にはねらるのがオチだ。
まぁ確かにその場合、ある意味再開できるかもな。
あくまで病室でだが。
「なんかまともな案ないのか」
「あっいいこと思いついた」
すると赤岸が手をピシッとあげる。
「はい、赤岸さん」
「えーっと、夜に飲屋街で女の人に声をかけていくのはどうかなーって」
「それはナンパだね」
はい却下。
期待してなかったが、俺の予想の斜め下をいく回答がでた。
流石は赤岸。
変人は発想がオモシロイナー。
しかも、権三がイケメンならまだしも、このゆるキャラフェイスで堕ちる女なんて余程の物好きだ。
青波レベルに相当する。
そんなことを考えていると、青波が言った。
「まぁ、簡単には彼女なんてできないっということで」
ざっくりまとめると、にっこり笑う。
そして、俺に抱きついた。
「え? 青波?」
「ふふーん」
「ふふーん、じゃなくて……」
頭がおかしくなったんだろうか。
俺は強引に青波を引き剥がす。
「おい。人前で何してんだ」
「ちぇー、別にいいじゃん」
青波は甘えた子供のような声を出して言った。
そして、何故か俺の後ろに強い視線を送った。
まるで俺を自分の所有物だと言わんばかりに。
「依織くん、今日は放課後寄りたいところがあるんだ!」
「そ、そうか? できれば離してくれるとありがたいんだけど」
そう言うと、青波は俺から手を離す。
ふぅ、一件落着。
ほとんどクラスに人がいなかったのが不幸中の幸いだ。
「だから、一緒に帰ろうね?」
「あ、あぁ」
だが、どうしたんだろうか。
やけにべたべたしてくる。
急にだ。
急になんだかべたべたしてくるようになった。
そんな時、昼休み終了の予鈴が鳴る。
「じゃあねー」
青波はそのまま自分の席へと帰って行った。
「何がしたかったんだ、あいつ」
俺はそんな青波に呆れて振り返る。
すると、赤岸が俯いていた。
「どうかしたのか?」
俺がそうたずねると、赤岸は机に頭をゴンッとぶつけて言った。
「全然だいじょーぶ!」
「どこが大丈夫なんだか」
隣の席の赤岸は、未だ謎ばかりである。
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