第73話 激突


8回表、光南学園の攻撃。

1アウトで迎えた3番バッターが放った打球は右中間へ。

まるで6回表の再現かのように、池崎くんは猛然と打球に突っ込んでいきます。

6回表と違ったのは打球が少しセンター寄りだったこと。

センターの千葉先輩も猛然と打球に突っ込んでいきました。


「危ない!」

先輩の声は届かず、池崎くんと千葉先輩は勢いよく激突。

「きゃっ!」

私は思わず顔を背けてしまいました。

2人は倒れ込んでしまいました。

千葉先輩はすぐに立ち上がり、こぼれ球を拾ってセカンドへ送球。

バッターは既に悠々とセカンドへ到達していました。

池崎くんは一向に立ち上がりません。


「池崎くん!」

先輩がベンチを飛び出しました。私も後に続きました。

タイムが掛かり、ナインが一斉に池崎くんの元へ向かいます。

池崎くんは右足を押さえ、うずくまっていました。

その横で千葉先輩が心配そうに池崎くんを見ています。


「池崎くん!大丈夫か!」

先輩の問いかけに

「痛てててて。すみません、足やっちゃいました・・・千葉さんは?」

「ああ、大丈夫だ」

横にいた千葉先輩が答えました。

「良かった。すみません、俺が深追いしたせいで・・・」

「もう良いから、とにかく医務室に行こう」

先輩はそう言うと、池崎くんをおぶってベンチへ向かって歩き始めました。


「すみません・・・」

「良いから、気にしないで」

「後はお願いします。児玉さん」

「えっ?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る