第49話 対峙


「随分、楽しそうだったじゃねぇか」

オレが部室に入ると上山が座っていた。

上山はボールに回転を掛けながら

上に投げては捕ってを繰り返していた。

「すまんな。朝から呼び出して」

「お前が児玉仲良しクラブに入会してるとはねぇ」

「そんなんじゃねぇよ」

「で、話ってなんだよ」

上山は相変わらず、ボールを投げたり捕ったりしている。


「昨日、1年が3人辞めた。柿崎も含めて4人。

 1年は大村、池崎、鈴木の3人しかいなくなった。

 鈴木もそろそろ限界らしい」

「ふーん」

「お前は一体、何がしたいんだ

 このままじゃ、チームがバラバラになるぞ」

「だったらなんなんだ!」

上山はオレをキッと見据えた。


「練習に付いて来れないような根性無しは、辞めちまえば良いだろうが!」

「根性とかそういう問題じゃねぇだろ!

 お前だってわかってるはずだ!

 自分が何をしてるのか」

「わかんないね。俺は一体、何をしてんだ?あぁ!」

オレと上山は睨み合った。


「お前、どうしちまったんだよ!

 なんでそんな風になっちまったんだよ!

 出会った頃のお前はそんなんじゃなかっただろ!」

「なんだとコラァ!」

「いい加減にしろよ!

 まだ怪我のこと引きずってんのかよ!

 怪我する前はもっと真っ直ぐに野球と向き合ってただろ!」

オレと上山はしばらく睨み合っていた。

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