第4話 へたくそ

「よし。じゃあ1年生は希望の守備位置に付いて」

監督の号令と共に1年生部員たちが守備位置に散った。


僕は中学時代、監督の指示でライトを守っていたが

肩も強くないし、足も速くない。

それに、本当は内野手をやってみたかった。

僕はセカンドの守備位置に付いた。


監督のノックが始まった。

1年生の実力を見極め、即戦力になりそうな選手を探すのが目的だ。


高坂くんはやっぱり上手だ。

難なく打球を捌いている。


上山くんも偉そうにしているだけあって

華麗に打球を捌いている。

僕はというと・・・


1巡目、真正面の打球

バウンドにタイミングを合わせることができず後逸。

上山くんが訝しげに僕を見ている。


2巡目、右方向の打球

何とか追いつくも、グローブに当てて、弾いてしまう。

上山くんが呆れた様子で僕を見ている。


キャッチャー松島くんの前に監督がゴロを転がした。

松島くんは捕球して、セカンドへ送球。

僕はセカンドへ入り、グローブを出した。

唸るような剛速球が、一直線に僕に向かってくる。

ボールは僕のグローブの横を素通りし、センターへ。


上山くんが苛立ちを抑えきれない様子で僕に言った。

「なにやってんだ!へたくそ!」

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