第2話 赤ちゃん、外法に手を染める
死にたくない!
正直に言う。
一度死んでも、死ぬのは怖い!
次に救済措置があるかもわからない!
いや熊に食われるのも凍死もいやだ!
でも親父の死体から這い出る体力もない。
せめて腕が! 腕に筋力があれば! そういや腕痛えな。
俺は腕を見る。
関節じゃないところから変な方向に曲がっている!
折れてーら。さすが赤ちゃん、体力:1。
あっははー!
痛すぎて逆に麻痺してやんの!
【凍死まであと4分】
くぁwせdrftgyふじこlp!
ぽ、ポイントだ!
ポイントを魔法に全振りするぞ!
それしかない!
い、いや待て。知識にも振るぞ!
知識大事!
生き残ったからのことも考えないと!
ステータスウィンドウオープン!
名前:なし
種族:ヒューマン
LV:1
HP:1e−5/1 MP:70/70
力:1 体力:1 知力:50 魔力:100 器用さ:0 素早さ:0 EXP 100/65535
スキル
魔法 LV:10 苦痛耐性 LV:5 精神耐性 LV:5 低栄養耐性 LV:7 物理耐性 LV:5 寒耐性 LV:7
スキルポイント:300
バッドステータス:凍傷、内臓損傷、骨折、低体温
地味にダメージ受けている!
つか体力の表記!
残り体力0.00001か。
つか凍傷になるの速えぇ!
こりゃ前から凍傷だったかも。指もげちまうぞ。
こんなに早く体温が下がるって、外は何度だ。
業務用冷凍庫クラスなのか。
いや違う。元からステータ薄に出ない程度に体調がおかしかったんだ。
それが一気に表面化したんだ!
神様仏様! どうか魔法と知識にポイントを!
頼む! まだ死にたくない!
ピコン。
今、システム音がした!
俺の必死な思いが天に届いたか!
ピコン。
【スキル:スキルポイント割り振りを手に入れました】
そっちまでスキルかい!
要するに今までは気合が足りなかったようだ。
ステータスウィンドウオープン!
名前:なし
種族:ヒューマン
LV:1
HP:1e−5/1 MP:70/70
力:1 体力:1 知力:50 魔力:100 器用さ:0 素早さ:0 EXP 100/65535
スキル
魔法 LV:210 苦痛耐性 LV:5 精神耐性 LV:5 低栄養耐性 LV:7 物理耐性 LV:5 寒耐性 LV:7
賢者 LV:100 スキル割り振り LV:1
スキルポイント:0
バッドステータス:凍傷、内臓損傷、骨折、低体温
おっしゃ!
イメージ通り!
第一歩を踏み出せた。
【心停止まであと3分】
次に知識検索!
たぶん賢者ってのが学者とか知識のスキルだ。
よし行くぜ!
賢者スキル発動!
俺は頭で念じる。
【森羅万象にようこそ!】
よし、起動した。
今すぐ魔法で暖を取る方法を教えてくれ!
【……検索終了まで一時間】
死ぬわボケッ!
しーんじゃーいまーす!
【心停止まであと2分】
しかたねえ。
「僕の考えた最強のサバイバルプラン」を試すしかねえ。
俺は俺に覆いかぶさる親父を見た。
顔が半分になってる。
親父どうすればいい?
俺が生きていたほうがいいか?
俺を憎んでないか?
なあ、俺はどうすればいい?
【心停止まであと1分】
その瞬間、俺の頭の中で悪魔的発想が生まれた。
「肉、カロリー、防寒……治療」
火をおこす肉体が必要。
壊れた家の代わりの断熱材も。
カロリーも必要だ。
使えるのものは……。
吹雪の中で生き残るために動物の腹を裂いて潜り込む。
どこかで聞いたことがあった。どこだか忘れたが。
今、俺より大きな生き物が俺の上にある。
つまりそういうことだ。
すまねえ親父。
まずは死霊術。
死体を使ったフレッシュゴーレムだ。
知りもしない魔法陣が頭の中から浮かんでくる。
なるほど具体的な事象の検索は高速なのか。
俺は折れた腕で親父の血を使って魔法陣を書く。
【死亡まであと20秒】
行くぜ!
「邪神よ。何よりも汚らわしきものよ。死者を冒涜し、世界を犯す邪神よ。混沌の力を我に与え給え。
死者に命を与え、生者の命を消すために。悪よ。破壊よ。蛆虫と蝿、病魔と腐敗よ! 世界の秩序を壊し給え!」
親父の死体がでろんと溶けた。
うわー、詠唱が長い。
【心停止まであと10秒】
溶けた肉が繭を作る。
「5.4.3,2,1……」
よし、覆った!
俺は親父の肉に包まれる。
【温度低下停止。内臓損傷。内臓機能低下。
凍傷により脚部一部欠損。凍傷により腕部一部欠損。
低体温により脳機能低下。思考力低下。
死亡まで1時間。
損傷箇所を修復してください。
フレッシュゴーレム体温低下。
フレッシュゴーレム機能停止まで30分】
ちょっとだけ死亡までの時間が伸びたか。
寒くて出血が少なくなったのかも……?
あと親父の臓器を使って応急処置してるっぽい。
……クソッ! 頭が痛い。
でもやることは決めてある。
最初は差し迫った死の回避だ。
俺の作ったフレッシュゴーレムは肉の繭。
こいつを使って助けを求めねば。
よしフレッシュゴーレムを操作するぞ。
俺は神経を集中する。
肉の繭を伸ばせ。触手だ。触手を出すんだ。
ズルリと触手が伸びるのを感じる。
肉の中じゃ目が見えないから魔力センサーで代用しよう。
まずは生存者の捜索。
だが俺のセンサーにはなんの反応もない。
村全体まで捜索をしたが生存者はいない。
詰んだ……完全に詰んだ。
親父の肉まで使って生き延びたのにあと一時間で死亡確定?
外道まで身を落としたのに、まさかの詰み?
いやいやいや……とりあえずステータス見よう。
名前:なし
種族:魔人
LV:2
HP:13/666 MP:10000/10070
力:30 体力:666 知力:94 魔力:666 器用さ:666 素早さ:5 EXP 0/65535
スキル
魔法 LV:666 苦痛耐性 LV:666 精神耐性 LV:666 低栄養耐性 LV:30 物理耐性 LV:666 寒耐性 LV:30
賢者 LV:666 スキル割り振り LV:1
スキルポイント:666
バッドステータス:凍傷、骨折、内臓損傷、低体温
称号:邪神の寵愛、ダークメサイア
……レベルが上がってる!
ナンバーオブビーストなのは気にしない。絶対気にしないからな!
なんだよ邪神の寵愛って! ダークメサイアって! 終わらない中二病か!
悪いことしたけど、そこまでじゃねえだろ!
……いいもん。死ぬまであがくもん。
ちょっとIQ下がったけど心の余裕ができたわ。
繭が死ぬ前に体温調節。同時に俺の治療。
この二本立てで行こうと思う。
まずはすぐに思いつく体温。
内臓がぶっ潰れてるのはどうしたらいいかわからないからな。
賢者先生のあいまい検索はクソの役に立たないので、なにをするか具体的に計画しよう。
まずは炎だ。暖かい家が必要だ。
でもうちの家は全壊。
なら隣の家に移って魔法で炎をつけよう。
まずは移動。今ある触手は一本。これで移動するのは辛い。
じゃあ増やすか!
【肉が足りません】
はい、肉必要。
まずは部屋の中を触手で漁る。
うさぎの干し肉ゲット。
肉に取り込む。スライム方式でずぶずぶと肉の繭に取り込まれる。
【肉補給。ミネラル補給。過剰分は繭にストックします】
ミネラルゲッチュ。
次は外に触手を伸ばす。
触手はどんどん細くなる。肉が足りない。
一応水分も雪を取り込む。
【繭温度低下。水補給。過剰分は繭にストックします】
よし。次はセンサーの切り替え。
もう住民は死んじゃったから、魔力じゃなくて物理センサーにする。
音波にするか。
赤外線使えなさそうな気がするし。
魔法起動。
「音の神よ。小さきものの音を我に」
音を可視化するのは初級魔法なので呪文が短い。助かったわ。
【繭に音波センサーを搭載しました。切り替えます】
よし、白黒映像。
でも吹雪の音で見づらいな。
本当は光学センサーでカメラを搭載したい。
そういう魔法が今は思いつかない。
賢者先生を使う余裕ができたら改造しよう。
音波センサーの白いノイズの中、触手を動かす。
隣の家が見えてくる。
入り口が壊されていて、そこから熊が無理やり侵入……いや前足だけ入れて住民を殺害したようだ。
中はひどい惨状だった。
おじさん、おばさん、お兄さん。
一家の死体が転がっている。
部屋には液体が飛び散っている。
光学センサーじゃないから断定できないけど、たぶん血だ。
吐くな! 吐くなよ俺!
今の状態だと吐いたら喉に詰まって確実に死ぬからな。
戸は外れているが壁は壊れていない。
こちらのほうがマシだ。
生きるために三人を繭に取り込む。
ズブズブと繭に肉塊が取り込まれていく。
こちらの触手を基準にして外を移動する。
ズルズルと肉の繭が吹雪の中を這っていく。
寒! 揺れる! 気持ち悪い!
【繭の温度低下! 繭の温度低下! 繭の温度低下!】
最後に俺の家の戸を持っていく。
数分かけ隣の家に移ると触手を増やす。
今度は普通に生えた!
増えた触手で持ってきた戸を立てかける。
壊れた戸をはめ込んで、隙間を持って来た戸で埋める。
音波センサーがガタガタという音を可視化する。
ある程度マシになった。
あとで布でさらに隙間を埋めよう。
外から薪を拾い暖炉に入れる。
着火剤の松ぼっくりと何かの繊維が暖炉の横にあったので手に取る。
「炎の神よ。すべてを浄化する炎を我に」
着火剤に火をつけ触手で振り回し火を強くしてから暖炉に入れる。
火起こしの経験はないが一度で薪に火がついてくれた。
部屋が温かくなる。
ふう、凍死は免れた……と思う。
次は治療だ。
今の炎で確信した。
回復魔法使えるに違いない!
【死亡まであと40分。フレッシュゴーレム機能停止まで20分】
はいはい。死にそうなんですね!
次は治療っと。
回復魔法を唱えるぞ!
賢者先生のおかげで呪文がスラスラ出てくるわ。
「光の神よ。万物を照らす慈愛を。命を救い、死者を葬る光を」
うん?
死者を葬る光?
キラキラと俺と繭を光が包む。
【繭中破! 触手欠損あり】
アンデッド扱いかー!
いやわかっていたけど。
とりあえずステータス確認!
名前:なし
種族:魔人
LV:3
HP:1e−6/9413 MP:10000/10070
力:31 体力:999 知力:108 魔力:999 器用さ:690 素早さ:5 EXP 13/65535
スキル
魔法 LV:999 苦痛耐性 LV:666 精神耐性 LV:666 低栄養耐性 LV:90 物理耐性 LV:666 寒耐性 LV:90
賢者 LV:666 スキル割り振り LV:2
スキルポイント:9413
称号:邪神の寵愛、ダークメサイア、死を乗り越えしもの
なるほど……。
よくわかった。
肉の繭も俺扱いだった。
これほとんどが肉の繭のステータスだわ。
光属性が弱点と。
完全に悪役じゃねえか!
それで今回は肉を取りんこんで体力アップと魔法のスキルが上がったわけだ。
四人分の肉なのに力が弱いのは触手だからではないだろうか。
骨と筋肉の構造ってやはりすごい。
なんにせよ数時間で死ぬことはなくなった。
凍傷とかもげた指とか骨折も治ってるし。
さあ、次の問題の解決だ。
食料の問題と
これも持ち時間は少ない。
母親を連れ去った熊がいつ戻ってくるかわからんからな。
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