第29話 開始

 謎肉の串焼きを食べ終わり、あと少しで冒険者ギルドというところで、急に立ち止まるガーリット。


「っ! 物陰に隠れろ、クウっ」と、ガーリットの叫び声が路地に響く。


 私は思わず近くに転がっていた木箱の陰に身を隠す。


 ひゅーんという、やや高めの音が聞こえてくる。

 串を握り締めながら、キョロキョロと辺りを見回す。


 衝撃音。


 背後を振り返ると、壁にいつの間にか穴が空いていた。

 さらに、いくつもいくつも、音が響く。

 ひゅーん。ひゅーんと。


 その度に、街中のそこかしこから響き伝わってくる衝撃。


「ちっ、もう始まったかよ……」


「ガーリットさんっ、これ、なにっ!?」


「投石だっ。エントが石投げてんだよ。スタンピードだ。もう来やがった!」


「ええっ! 何か偵察とかしてなかったのっ」


 私はガーリットに叫ぶように答えながらスマホを取り出し、ユニット編成で、とりあえずディガーとディアナ、ショウを呼び出す。

 ついでにいいねの数を確認するが、ユニット限定ガチャにはまだまだ足りない。


 魔法陣の光とともに現れるディガー達。

 最初きょとんとした様子のディガーに、話しかける。


「攻撃されているんだっ。周囲の警戒をお願い!」


 素早くサムズアップして、スコップを構えるディガー達。


「偵察依頼を受けた冒険者パーティー、帰ってきてないんだよ。急いで冒険者ギルドへ行くぞ、クウ。」


 と、さすがに焦りを見せるガーリット。

 私はディガー達を連れ、駆け足で進み始めるガーリットのあとを追いかけ始めた。


 投石の続くなか、何とか無事に冒険者ギルドへと到着する。

 ガーリットはすぐに自分のパーティーの仲間と合流すると、冒険者ギルド員に呼ばれる。何か指示を受けている様子のガーリット達。すぐにギルド員は別のパーティーへと移動する。

 ガーリットがこっちを向くと話しかけてくる。その間にもメンバーから渡された装備品を手早く身につけるガーリット。


「クウ、じゃあなっ! 俺たちはこのまま迎撃に出る。お前さんはギルドの二階に行ってくれ。ガッソの旦那がいるはずだ」


「ガーリットさん。お気をつけて……」


 私は、去り際に声をかける。

 後ろ姿のまま無言で片手をあげると、ガーリットはパーティーメンバーを引き連れ、慌ただしく出発していった。


 ディガー達を連れ、混雑するギルドの中を進む。

 何故か皆、こっちに気がつくと道を空けてくれる。

 何でだろうと疑問に思いつつ、歩きやすいからいいかとそのまま階段へ。

 急ぎ二階へと向かった。

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