ポケ○ンG○に見るカクヨムの攻略法

ポケ○ンG○に見るカクヨムの攻略法

 皆さんは、“ポケモンGO”というスマホゲームをご存じだろうか。

 いや、この尋ね方は、ポケモンと言う巨大コンテンツに対して少々失礼だった。


 二○一六年にダウンロード可能となったこのゲームは、携帯ゲーム機を主戦場にしていた“ポケットモンスター”が満を持してスマホで遊べるようになったと、爆発的な人気を博した。

 但し、“ポケモンGO”は、元のシリーズ作品をそのまま移植したものではない。


 ポケモンと称されるキャラクターたちを捕まえゲットし、自分の味方として各地のライバルと戦って行く。

 その本質は同じくして、スマホ版ではストーリーやバトルの戦略性を削ぎ落とし、ゲット&コレクトに特化された。

 より手軽に、短時間で遊べるようにという狙いであろう。

 GPSを活用し、現実世界に現れるポケモンを探して歩くプレーヤーの姿は、社会現象として報道された。


 さてひるがえって、この文を掲載している“カクヨム”が開設された年を、あなたは覚えておられるだろうか?

 奇しくも“ポケモンGO”と同じ二○一六年、カクヨムはその全貌を顕わにした。

 軽く読みやすい話が好まれるウェブ小説という形態は、時代の申し子だろう。

 この取っ付きやすさという点で、二つのコンテンツが似た傾向を示すのは必然であった。


 しかし、それだけではないのだ。

 この二者には、もう一つ、不思議な共通点が存在する。


 ポケモンをゲットするには、モンスターボールと呼ばれる捕獲器を、ポケモンにぶち当てる必要がある。

 これでポケモンが脳震盪を起こすのか、理屈は知らないが、急所にジャストヒットすれば捕獲率が上がる仕組みだ。

 タイミングや位置を外すと、せっかく出会えたポケモンは、また電子の虚空へ消えてしまう。

 一期一会、諸行無常、ポケモンたちはかつ結び、かつ消え、世の理を教えてくれる。


 なるほど元祖は日本産のゲームだと感心するものの、本題はそこではない。

 捕獲対象にボールを当てた瞬間、それがどのくらい有効な一撃であったのか、親切にも画面に表示される。

 曰く、“Nice!”。或いは“Great!”。

 見事この評価を得られれば、脳震盪を狙うのは無理でも、敵ながらアッパレとポケモンたちにも賞賛してもらえそうだ。


 いつ、どこに当てるべきかも、初心者に優しいこのゲームは色付きのサークルで示す。

 常に大きさを変えるその捕獲サークルが、ポケモンの全身を覆うほど大きい時なら、円内にボールを投げ込むのも容易だ。

 だがそれでは、決して必殺の一撃は成し得ない。

 サークルが、老眼では厳しい大きさまで小さくなった瞬間。

 ドライアイなら、まばたきを連続誘発するような極小のピンポイントを指定した刹那。


 この一毫いちごうのチャンスを物にした時、最大級の賛辞が送られることだろう。

 画面には、輝かしき“Excellent!”の文字が映る。


 ――お気づきになったであろうか。

 これこそが、カクヨムとポケモンGOを裏で紡ぐ一本の糸。いや、真理へ導く同じ一本の道である。


 カクヨムへ投稿した作品も、読者が評価すべきと感じたものには、レビューという形で星が与えられる。

 その最高到達点が三ツ星、ポケモンGOと同じ“Excellent!!!”なのだ。


 茫洋たる投稿サイトの海で、自分が目指すべき指針を見失う者も多い。

 一体、どうすれば高評価を獲得できるのか。

 何を書けば、誰かの心を射抜けるのか。


 答えはポケモンの中にあると、ボブ・ディランは歌った。さすがノーベル文学賞受賞者である。

 人生に大事なことは、全てポケモンで学ぶべし。


 当てやすい緩慢なサークルよりも、ぐっと絞った小さな目標に作品を放つ。

 的を見据え、ここぞという一点を狙う。

 そうでないなら、“Excellent!!!”は獲得できないであろう。


 多くの一般読者には預かり知らぬことではあるが、カクヨムには投稿者用の隠し機能が盛り込まれている。

 あなたが作者だと言うなら、カクヨムのマイページから小説情報編集の画面を開けてみて欲しい。

 その中央下には、赤と白で塗り分けられた円いボタンが表示されているはずだ。上部にはゲットすべき読者が、色とりどりのアイコンで浮かんでいよう。

 無ければ不具合が考えられるので、運営に問い合わせた方がよいかもしれない。


 その中央ボタンに指を置き、狙う読者に向けてスライドさせる。

 読者名を囲うサークルが最小になった時に、ベストタイミングで原稿を当てろ!

 スライド量の加減が難しいが、こればかりは練習を積むしかないだろう。


 古いバージョンのブラウザを使っていると、読者捕獲サークルが表示されないこともある。

 こんな時は、ブラウザを最新の物へ更新するか、カクヨムの専用アプリを導入するのがオススメだ。



 最後に一つだけ、とっておきの秘策をお教えしたい。

 あまり他人にペラペラと喋るのも考えものだが、ここまで読んで下さった方へのサービスである。


 モンスターボールには、カーブスローという投げ方がある。

 ボールを回転させてから、指をスライドさせると、モンスターボールは大きく曲がって投擲とうてきされる。


 一見、狙いを外しやすくなる悪手にも思えるだろうが、世で活躍するポケモンGOのプロたちは、一人の例外も無くこの投法を使用している。

 ポケモンの体内へ、カーブスローは螺旋の波動をねじり込む。腹を掻き乱されたポケモンは意識を失い、結果、捕獲率はなんと一・七倍にも跳ね上がるのだ。


 カクヨムの場合、書いた文字数によっては回転させにくいと思うものの、是非この投げ方をマスターするべきだ。

 高速で回る原稿を食らっては、読者も一撃で昇天するに違いない。


 これは公募のような紙原稿での投稿でも適用可能なので、プロの作家を目指す方は、投げやすい紙質にこだわるのも良い。

 一次選考では飛距離が問われるらしく、ライバルに差をつける超遠投にもカーブスローは有利となる。


 それでは、皆さんの素晴らしいポケモンライフを祈りつつ、今回はここまでとする。





※ 作者注


1 これを書いた作者は、ガラケー所持者です。


2 同じ作者による『十八番煎じの勇者放浪譚』には、ポケモンの“わざ”をモチーフにしたスキルが登場します。ご興味を持たれた方は、ぜひ読んでみてください。この話の主目的は、『十八番』の宣伝ダイマでした。

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