あなただけが、なにも知らない。

masato

第1話プロローグ

 魚になる夢をよく見る。暗澹の思いで底の見えない忘却の中を漂い泳ぐ夢。光の届かない海は、目の前の物が見えない盲目の世界。




 音が響かない真空世界。




 誰の言葉も寄付けない……沈黙の世界。




 それはまるで、見えない相手に存在を否定され続けていた遠い過去のような……。




 重苦しい雰囲気に包まれながら、それでも自分を主張しようと進む意志に気味の悪さを感じたんだ。悉く憂鬱な夢の果てに、僕は報いとしての罰を望んでいたのかもしれない。




そしてまた、僕は何かに飲み込まれてしまうんだ。






……つづく

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