04 誰か
何時間も走り続けて、足はボロボロだった。
血が流れていて、痛い。
けど追手から十分な距離をかせいだ。
背後から追いかけてくる声がきこえなくなったのを確認してから、私はその場に倒れ込んだ。
疲れた。
でも、疲労以上に心が苦しい。
つい数時間前まで、明日何をしようか考えていたばかりなのに、その明日がなくなってしまった。
たくさんの人に囲まれて笑っていたはずなのに、周囲から誰もいなくなってしまった。
変わってしまった日常に涙を流していると、声がかかった。
「おい、そこのお前。泣き虫女」
乱暴な言葉遣い。
普段なら無視しているところだけど、事態が事態だったから私は声がした方へ顔を向けていた。
「そんなところでうずくまってるな。路傍の石ころの仲間にでもなりたいのか」
彼は誰だろう。
誰だか分からないけど、こんな風に話かけてくれるなら、多分私の事を忌まわしい禁術使いだと気が付いていないんだろう。
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