第25話 レイノアールの目的1

 目の前に映し出されているダンジョンの様子を眺めながら私はため息をついた。中級ダンジョン…もちろんこれはダンジョンを管理するものとしてランクが上がるのはいいことなのだ。だけど実はもう少しだけ待って欲しかったとも思っている。


 ちらりと視線を移動させ視界に丸い球体を移す。全体の約8割ほど黒っぽく上のほうの2割ほどが透明なガラスのようになっている。これは魔法球といいダンジョンの維持をして余った魔力をためておくための物なのだけど、下級ダンジョンの維持はそもそも攻略者すらろくに来なかったためにここまで溜まってしまったものなのだ。


「もう少しで満タンだったのに…」


 もちろんこのためられた魔力は必要な時には引き出して使うもので、ダンジョンの維持を最優先として使用するものなのだけど…


 私はマニュアルのページをぱらぱらとめくった。開かれたそのページの文字をなぞるように私は指を這わせる。


「はぁ…」


 再びため息をつく。本当にままならないものでダンジョンがないと貯められない。ダンジョンの維持にも魔力が必要…一体この魔法球はいつ満タンになるのだろうか。マニュアルの開かれているページにはこの魔法球についての説明が書かれており、その内容に私はとても惹かれているのだ。


 目の前に映し出されている画面に再び視線を戻す。あの人がまたダンジョンへ足を運ぶようになった様子が映し出されている。


「これを見てしまったら私もやらずにはいられなかったんだもの…」


 私はもう一つのノートを手に取る。『ダンジョン育成記録』と書かれているものだ。これは前のダンジョンマスターが記録したダンジョンの様子だ。これには私がダンジョンを攻略したときの様子が記録され、それをダンジョンマスターが手助けしたことも記録されていた。この記録に嘘は書けないのだ。毎日の様子を魔力を注ぐことによって保存しているものなので、目にしたものはすべて記録される。きっと前のダンジョンマスターは記録はしても中の内容を確認しなかったんでしょうね。


「私を助けなければ満タンだったのに」


 ジワリと目頭が熱くなった。私は彼にもう一度会うためにも魔法球を満タンにしなければいけないでしょう。もう一度会ってお礼をいいたいから…


 魔法球に手を伸ばし私は今日も残りの魔力を注いだ。目でわかるほどではないけれど、ほんの少しだけ黒い部分が増えた気がした。


「さて、たまには顔を直接見てこようかしら」


 私は実体化をするとタッチパネルを操作しあの人の部屋へと向かうのだった。


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