第4話 結奈乱舞

「あれはもしかしてスライム…スライムですかっ」

「え…あ、うんそうだけど」


 …あれ? なんで目を輝かせて見ているんだろうか。気のせいでなければこの状態に俺はとても見覚えがあるのだが…


「すばらしいです…っ あれが健太様の好いていらっしゃる魔物! 初めて見ましたっ」


 何なのこの人は。もしかしなくても健太と同族なの? スライム博士とか言い出したりするあれか…?


「そりゃ~初めてだろうね…?」

「はいっ まさか実在する魔物にこうして会える機会があるとは思いもよりませんでした!」

「えーと…魔物とか好きなの?」

「好きと言われればそうですと答えますが、そうではなく…話に聞いていたんです。健太様がファンタジーとかお好きで色んな話を聞かせていただいていました。まさかそれを自身で体験することが出来るなどとは…っ」


 つまりこのファンタジーな状況に感動している、ということらしい。類は友を呼ぶってやつなんだろうかね…はっきり言って騒がしい。


「あー…うん、よかったね?」

「はいっ それでですがここがダンジョンだというのであれば、もしかして魔物を狩るのでしょうかっ」


 なんでそんなに嬉しそうなんですかね…はっきり言ってドン引きだわ。


「まあそうだけど…」

「なるほど…つまりこの金属バッドで私は殴り倒せばいいんですね!」


 ぎゅっとバットは握りなおした結奈さんはおもむろにスライムへと走り寄っていった。無防備にただまっすぐとバットを握りしめて。


「あははははははははははははははははっ 雑魚ですわ! スライムなんてっ」


 ドン引きだわ…部屋で紅茶を入れてた人と同じに見えないんですけどもっ 結奈さんはバットを振り回し次々とスライムを倒していく。


「あはははははははははははははっ」


 怖いよ! なんでこの人俺に預けたのっ


「あ~~~~~すっきりしました。なるほど納得です。健太様が入り浸っている理由がよくわかりました。しかも11階層ということはここから10階層も離れた場所にいらっしゃるのですね」

「そうですね…」

「どうしたら私も11階層へ行けるのでしょうか?」

「順番に階層ボスを倒せば行けますけど…」


 結奈さんがなにやら考え込んでいるみたいだ。腕を組み視線は明後日の方向を見ている。これはあれですかね…もうお約束というか…ね。


「では私も11階層を目指したいと思います。よって由雄様にこのダンジョンの指導などを頼みたいのですが…よろしいでしょうか?」

「……ええ~」

「快いお返事ありがとうございます」

「違うよ! 心底いやそうな顔してただろうっ?」

「……」


 都合のいいように受け取るなよ…面倒だなって顔に出たよね、俺?


「ダンジョンの指導を頼みたいのです」

「…はい」

「ありがとうございます」


 こえ~~っ 結奈さんの顔が怖いよ!! 笑顔とのギャップがありすぎだろう?


 俺は半脅迫めいた結奈さんのお願いでダンジョンの攻略を手伝うことになったらしい…です。

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