第2話 苦戦しているらしい
コポコポと音を立て湯気を上げているカップを俺は眺めている。いつの間に俺の部屋は喫茶店になったのだろうかと少し首を傾げるが問題はそこじゃないだろう。
「どうぞ…」
「ども」
俺にカップを差し出してきたこの女性。実はこの人が少し問題があるというかなんというか…というかなんで健太はこの人を置いていくんだよ。
「あんたは健太についていかないでいいのか?」
「もちろんついていけるのなら行きたかったのですけど、ここで待つように言われましたので」
面倒くせぇ…というかどこからティーセットとか持ってきたよ。俺は軽くため息をつきながらカップに口を付けた。…うまいし。
「ただいまーっ」
「おかえりファーナさん。健太は?」
「もう来るよ」
ダンジョンへと通じているタッチパネルの前にファーナさんが戻ってきた。先ほど健太と2人で昼前だけど少しだけダンジョンへ行くと言って出かけたのだ。
「ふひぃ~やっぱきついわーっ」
「そんなに厳しいのか11階層…」
「何言ってんだよよっすー…そもそもきついのは2人だからって言うものあるんだぞっ」
初級ダンジョンである10階層までの攻略が終わり、11階層以降が解放された中級ダンジョンは2人で進むには厳しい狩場なのだそうだ。すでに夏休みも終わり3か月、12月に入っているのだが未だ11階層のボス部屋にたどり着けないらしい。
「それに学校もあるから休みの日にしかいけねぇし…あ、サンキュ」
「ありがとうございます」
「………」
健太とファーナさんの前にティーカップが差し出された。女性はじっとファーナさんを見て難しい顔をしている。まあ…なんでそんな顔をしているのかわからんでもないが、健太が教える気がないのかこの女性に対しての扱いがひどいと思う。そもそも健太とどういった関係なのかも俺は知らない。
「健太様この後の予定ですけど…」
「ん? 昼食後また出かけるけど??」
「それは聞いております。そうではなく、いい加減私も連れて行ってくれませんか? 何をしてらっしゃるのか教えていただきたいのです」
「うーん…どう思うよよっすー」
いや、俺に振るなよ。確かにここは俺の部屋だけどその先のことまで責任持てないぞ流石に。
「自分で決めろよな」
「そうか? んー…じゃあよっすーも一緒なら許可しようかな」
「はぁ? ちょっとまてよ健太なんで俺を巻き込む。そもそももう行かないって言っただろうが!」
「由雄様っ お願いします。一度でいいんですお付き合いをどうか…っ」
女性が深く頭を下げた。年上の女性にここまでされるとは思っていなかった俺はとても困ってしまった。
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