第40話 『ハタチまでに』

その男性は入院中、


深夜にノドがかわいて

1階の自動販売機に向かった。


誰もいない待合室の長イスに腰かけて

ノドをうるおしていると


廊下のずっと奥、

非常灯の薄明りの下を

白いモヤのようなものが動いている。


それはゆっくりと移動し、


レントゲン室や

採血室の中に出たり入ったりしている。


やがてモヤが

こちらに向かってきたようにおもえたので


危機感をおぼえて

あわてて階段をかけあがった。


退院してから聞いたが

その病院の1階では

幽霊の目撃談が多いのだという。


「ハタチまでに

 幽霊を見なけりゃ

 一生見なくてすむって話な

 

 ありゃあ


 ウソだぞ!」


武勇伝でも語るような

口ぶりの男性は


今年


70歳をむかえる。

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