第7話 外来種 アメリカザリガニ
「では、私が」
無言でお茶と菓子を用意する。
月白・釧路・光・闇さんでメンツ内最後の闇の番である。
「今回外来種について話そうと思う」
「さきのウリミバエも外来種でしたね」
「釧路君。その通りだね。外来種って意味は知ってる?」
「え、外国から持ち込まれたからじゃないんですか?」
「そうね。でも在来種も言えるのよ」
「え、そうなんですか?」
「そうね、例えばビワヒガイっていう琵琶湖でしか生息していない生き物が異なる場所で生息していても外来種というの」
「へぇー」
「環境省の文を簡単に言えば、そこにしかいないのに他のところで生息してるのは外来種ね」
「なんて大雑把な言い方ですが、わかりやすいです」
「身近だとザリガニやアリゲーターガーね」
「ザリガニって外来種なんですね」
「そうね。もう身近になりすぎて忘れがちだけどあれらも持ち込まれた生き物よ。まぁ、でも外来種に指定はされてはないけどね」
「へぇー。ザリガニは食べれるんですか?」
「そうね。でも下処理が面倒ね」
「た、食べれるのか」
「そうね、可食部は少ないけど、アメリカとかでは普通に食べられている」
「これって、今回はザリガニですか?」
「別に、なんでもよかったけど、釧路君がすごく食いつくから今回は、ザリガニで」
「そ、そりゃさーせん」
「では、始めます。
ザリガニとは言っても今回はアメリカザリガニ、外来種のほうね。
和名はアメリカザリガニ、分類は節足動物門 甲殻綱
海外から持ち込まれたのは1927年、米国のニューオリンズ市から持ってきたの。
寿命は約5年で長い個体で8年くらいね。
自然に生息してるのはアメリカザリガニの名前からわかると思うけどアメリカ、アメリカのミシシッピ川流域に生息しています。
日本では水田、用水路、池など水深が浅くて流れが緩やかなところにいるね。
「はーい。闇さん質問でーす」
「はい。釧路君」
「輸入はわかりますけど、経路はどんな感じですか」
「んふぅ。じゃ、それも踏まえて説明するね」
確定的な事は言えないから1918年とするけど、
その人が養殖は副業として最適であると確固たる信念の元ウシガエルを輸入し始めたの。
大正から昭和の初めには農家の副業として
当時は腿肉ももにくの缶詰が米国本土やハワイに輸出されて昭和24~26年には年間2~3億円を稼げるほど+当時は田んぼが一杯あったし、餌となる蛾とかも誘蛾灯で勝手に集まるし、子供でも老人でも育てやすくて設備費用もなかったからね。
当時のキャッチコピーは「ドルを呼び輸出水産物のホープ」ね。44年には農薬残留問題でこれを機に輸出は止まったよ。
副業の話に戻るけど、当時国内で蛙は「ゲテモノ」だったから好んで食べるかと言われればうーんだったのでも輸出で売れたから国内では育てていたの。
そんなときに餌としてアメリカザリガニに目をつけたの。
昭和2年、1927年に持ち込まれ神奈川県大船町(現、鎌倉市大船)の養殖池、今は鎌倉食用蛙養殖場跡ってところだね。
その池に放したけどその池から逃げ出して全国に広まったとされるわ。
「さて、何か質問ありますか釧路君」
「なんで名指しなんですか、ウシガエルなんですがその後はどうなりました?」
農林水産省が適地に卵やオタマジャクシを放流を手配して、昭和23年、1948年には熊本、奈良、大阪、京都、石川その他府県に
本来なら捕獲業者の現象、養殖業者の管理不備による蛙の逃亡。そして一番大きな人間という狩人が居なくなりあっという間に増えて特定外来生物に指定されたの」
「政府の施策が原因だった。ってことですか?」
「そうね。天敵が居ないのに食料だけわんさかあったら大量発生は目に見えてるよね」
「確かに、それからザリガニはどうしました?」
「では、話の続きを、何故繁殖したのかだけど、釧路君はザリガニのハサミって何に使うと思う?」
「ハサミですか? そうですね、普通なら獲物を捕まえるためにあるんじゃ」
「そうね。じゃ、池とかの水中に生えてる水草の意味は?」
「水草、たしか卵生んだりとか隠れ蓑にするとかなんとか習ったような気がします」
「あってる。水草をハサミでチョキチョキ出来たらどう?」
「え、逃げ場というか、隠れるところがなくなるんでは」
「まぁ、卵だったら逃げる云々の前の話だけどね。
アメリカザリガニを入れた水槽に餌となるトンボやユスリカの幼虫を入れるとザリガニが多いほど幼虫が減少したの。
でもここに水草を一緒に入れると幼虫の減少が減ったけど、体重が増えたの。理由としては水草を沢山刈り取る為に餌を見つけやすくなって効率厨のように沢山幼虫を食べることが出来たの。
で、この水草をプラスチック製に変えると幼虫は多く生き残って、ザリガニも体重増加量が減ったの。
ここから言えるのは、水草などを切り取って物陰もない獲物が平地に立っているのを狙うスナイパーのような立ち位置、自分の狩り場を作ったの。
蛙、天敵も居なければ餌は水草で隠れているけど、隠れている水草ごとチョキチョキして無抵抗な相手を一方的に捕食する。
個体は当たり前のように増えるよね。
「はーい。闇さん。では何故外来生物、の指定はされないのですか?」
「釧路君は子供の頃、小学校で田舎に行くか、なにか、自然と触れ合うという名目でザリガニ釣りとか学校行事で行かなかった?」
「あー、んー。どうだったかな。行ったような気もします」
「一昔前の世代だったらありえるかもね。
アメリカザリガニの被害が統計学的に立証され、テレビでも外来生物云々やってようやく認知されてきたけど、それでもアメリカザリガニは教材に使用されたり、住んでる場所によっては子供の遊びとしてね。
私達は言いすぎかもしれないけど、多くの人が認知している中、簡単に飼えるアメリカザリガニを食用で飼ったり趣味で飼ったりしている人だって多くいると思うの。
そんな人達が、え、外来指定、何か有る前に捨てようってなるかもしれないよね」
「なるほど、飼育規模が推定出来ないですし、大量に捨てられてしまったら、かうーん」
「そう、だから指定は見送りを続けているの」
「ははーん。対策としてはなにかありますか?」
「売れるなら売る。食べることができるから食べる、ね。村や街でザリガニを食べようというキャンペーンすれば一気に減るとは思うけどね」
「金が絡むと人間の行動力は凄まじいものがありますからね」
「そうね。対策も環境省のホームページからダウンロードできるから気になったら見てみてね」
「そうします。ザリガニかぁ、ちょっと食べて見てもいいかもね」
「四川料理とか美味しそうね」
「いいですね。ちょっとぐぐろ」
「光とツッキーはなにかある?」
「私は別にー」
「私はあります」
「はいツッキー」
「白いエビや青いエビっているんですか?」
「そうね。品種改良した物もいる。そもそもザリガニは食べた植物に含まれる化合物から赤い色素を生成することによって身体を赤くしてるの。
だから青い色になる色素の元となる餌を与え続ければ人為的に作り出すこともできるの」
「へぇー」
「むふぅ。他になければ私の話はこれでおしまい」
言い終えるとすごい勢いで用意して残ったお菓子とお茶を食し始めた。
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