神様より
この前、失敗したんだって? 仕事でかな? それともプライベート? 恋人がいたんだっけ? あ、家族だったかな?
すんごく落ち込んでたよね。消えてなくなりたいって思ってたんだろう?
でもまあ、失敗なんてみんながするものだし、そうくよくよしていても仕方のないことだと思うけどね。
え? 私は誰かって?
紹介が遅れたね、私は神様です。
自分で様つけるのどうかと思ったけど、ただ「神」っていうのもなんだか傲慢に聞こえるでしょ?
まあ、そういう話は置いといて。
今回は、君にぜひ伝えたい話があって手紙をしたためたんだ。
テレパシーみたいに脳内に直接声を届けようと思ったけど、いきなりそんなことされても困るよね? だから手紙を書いて自分で届けたんだ。いやあ、字が下手で申し訳ない。
君が他の人よりも頭脳明晰で理解力が高いと知った上で、私の手伝いをしてほしくて連絡したんだよ。
まず、大事なことを言っておこう。
君は学校や本で、約百三十八億年前に生まれたこの宇宙の中で、約四十五億年前にできた地球の上にいると思ってるよね?
人類史は一万年ぐらい前から始まって、二千年ぐらい前から日本の歴史が紡がれだしたと。
実はそれが嘘だったとしたらどう思うかな? いや、質問はよそう。それは嘘なんだよ。全部が全部、私が植え付けた「偽の記憶」なんだ。
世界中の人々は私が作り上げたキャラクターたちで、それぞれに「設定」を持って生まれて、勝手に行動してるんだ。
君がよく通っていたコンビニの店員さんも、毎日乗り降りしていた駅の駅員さんも。近所のご老人も、君の両親も。
あの言動が派手な大統領だってそうだし、君が好きだったあのアイドルもね。
外側はよくできてるけど、中はがらんどうなんだ。いわゆるハリボテ。3Dゲームとかで見たことあるだろう?
もちろん、この地球も同じようなものなんだ。中身は空っぽで、海とか山とかそれっぽく見せてるけど、中はスッカスカだしね。
夜空が寂しいから、星とか銀河もそれなりに見えるようにランダムに配置したりして、けっこう大変だったんだよ。
キリスト教の神様は六日で作ったらしいけど、私はもうちょっとかかっちゃった。
で、賢い君はこう思っただろうね。何の目的でそんなことしたんだ? って。
こうも思ったかもしれない。まるでロールプレイングゲームを作ったみたいだ、って。
実はそれって正解なんだ。
君を主人公にしたロールプレイングゲームの舞台としてこの宇宙を創造してね。まさに今プレイしてたところだったんだよ。
でも、深刻なエラーが起きたから、ゲーム製作者として私が介入したんだ。
だって、何もかも嫌になったから消えたい主人公なんて、ゲームにいちゃまずいよね?
だから、君に本当のことを伝えにきたんだ。
これはゲーム、君を主人公にした人生という名前のロールプレイングゲームなんだ。
ということはどういう意味か分かるかい?
これはゲームなんだから、最後は必ずハッピーエンドになるってことなんだよ。
つまり、やり遂げる意味のあるゲームってことなんだ。
今やっている仕事ってクエストがきつかったら、辞めればいい。
付き合う友達を間違えてパーティーの人間関係で苦しんでるんなら、メンバーを入れ替えちゃえばいい。
気にすることないよ? ゲームキャラだから、それなりの反応はするけど、しばらくしたら離れてくれるようになってるから。
ゲームだから、必ず解決策は用意されてるんだよ。
困ったら、君の近いところに配置した家族や友人っていうモブキャラに相談してみたらどうかな?
彼らは必ずヒントをくれるようにしてあるんだ。
神様が言うんだから、間違いないよ?
というわけで、もう一度主人公としてプレイさせてくれないかな?
うん、分かってくれたようで私は嬉しいよ。
それじゃ、行くよ。
ゲーム再開!
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