13話 お風呂で拝む絶景

 頭と体をきれいに洗い、萌恵ちゃんと向かい合って湯船に浸かる。

 密着して座るのもいいけど、こうして顔を突き合わせて入浴を楽しむのも捨てがたい。


「やっぱりお湯に浸かるのって気持ちいいよね~」


 手ですくったお湯を肩にかけながら、萌恵ちゃんが吐息多めにつぶやく。

 心から賛同してうんうんとうなずきつつも、私の視線は萌恵ちゃんの胸を捉えて離さない。

 重力から解き放たれてお湯にぷかぷかと浮かぶ二つの膨らみ。


「萌恵ちゃんなら、自分の胸を吸えたりしない?」


「ん~、どうだろう……」


 ふと気になって口から滑ってしまった疑問に、萌恵ちゃんが実践という形で答えてくれた。

 萌恵ちゃんはおもむろに自分の右胸を持ち上げ、先端を口に近付ける。


「あっ、れひふぁ」


 おそらく「あっ、できた」と言ったのだろう。

 桃色の突起を咥えた状態で発音が曖昧ではあったけど、短い言葉だったので理解するのは容易だった。

 可能か否かの結果が判明したことで、萌恵ちゃんは自分の胸から口を離す。


「真菜、なんで拝んでるの?」


「え……?」


 萌恵ちゃんに指摘されたことで初めて気付き、ハッとなる。

 私は無意識のうちに両手を合わせ、なにかを拝むようなポーズを取っていた。

 それだけの魅力を秘めた絶景であることは間違いないので、驚きはするけど不思議には思わない。

 慌てて手を太ももの辺りに移し、ごまかすように笑顔を浮かべる。


「あはは、体が勝手に動いちゃった。それより、急に変なこと言っちゃってごめんね」


「謝るようなことじゃないよ~。手首がどこまで曲がるか試すのと同じようなことでしょ? そうだ、真菜も――」


 私が唐突に明後日の方向を見た瞬間、萌恵ちゃんがなにかに気付いて言葉を止めた。

 責めるつもりは毛頭ない。萌恵ちゃんに悪意がないことは分かっている。

 だけど――


「うにゃーっ!」


「まっ、真菜、落ち着い――ひぁんっ、そこはダメっ」


 萌恵ちゃんには申し訳ないけど、ちょっとばかり八つ当たりさせてもらうことにした。

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