25話 台風一過
すでに何度目か分からないキスを終えると、窓から陽光が射し込んでいることに気が付いた。
始めたのが夕方ぐらいだから、かれこれ半日ぐらい経っている。
私たちの記念すべき初体験は、足腰立たない状態になるほど激しく、思いもよらないほど長く続いた。
ふと外に意識を向けて気が抜けたのか、私たちはすっかり脱力して布団に横たわる。
まともに会話もできないほど疲れているのに、清々しい気持ちでいっぱいだ。
ふわふわした浮遊感と言い知れぬ多幸感に包まれ、疲労による息苦しさすら愛おしく思えてくる。
一生忘れないであろう出来事の余韻に浸りながら、萌恵ちゃんと見つめ合い、満ち足りた笑顔を浮かべた。
少し経って、息が整い、どうにか体が動くようになる。
敷布団の上で裸のまま半日ほども過ごし、運動を終えて汗やその他もろもろが冷え、ここにきて初めて肌寒さを感じた。
いままでむしろ暑いとさえ思っていたから、よほど熱烈な情交だったんだと改めて実感する。
「染みになっちゃったね~」
上体を起こしつつ、萌恵ちゃんが下の方を見て苦笑混じりにつぶやいた。
行為中は気にしてなかったけど、こうして観察すると布団は酷い有り様だ。
私と萌恵ちゃんから溢れた大量の蜜が、布団のあちこちに染みを作っている。
体が面していたところは汗でしっとりしているし、一部にはわずかに薄まった血が付着している。
名実共に“初めて”を捧げ合ったことに後悔はないけど、せめて破瓜の血ぐらいは拭いておくべきだった。よく見ると、指にも微かに残ってるし。
もちろん、シーツは洗濯係の私が責任を持ってきれいにする。
「萌恵ちゃん、痛くない?」
どこが、とは言わない。
わざわざ口に出さなくても、萌恵ちゃんには通じるはずだ。
「う~ん、ちょっとズキズキする。真菜は大丈夫?」
「私も同じ。でも、なんか幸せな痛みって感じがする」
「んふふっ、あたしも幸せ~っ」
萌恵ちゃんが嬉しそうに抱き着いてきて、体勢を崩してそのまま二人一緒に再度布団に倒れる。
そう言えば、水分補給をおろそかにしていたわりに、あまり喉が渇いていない。まぁ、飲み物を口にしていないだけで液体は体の中にたくさん取り込んだから、不思議ではない。
「ねぇ、萌恵ちゃん。今日だけは、学校サボらない?」
「いいよ~。実はあたしも、それ言おうと思ってた」
決して褒められたことじゃないけど、私たちは意見が一致し、生まれて初めてズル休みすることになった。
上手く言葉にできないけど、授業が頭に入って来なさそうだし、まだしばらく余韻を楽しみたい。
「萌恵ちゃんって、えっちの才能あるよね。気持ちよすぎて気絶しそうだった」
「真菜の方こそ、言葉にならないぐらいすごかったよ~。あと、たまに赤ちゃんみたいだな~って思った」
技術面で言えば、初心者の私たちは下手の一言に尽きるはずだ。
それでもお互いにこの上なく満足できているということは、体の相性が抜群なのはもちろん、相手への愛が尋常じゃなく強いということ。
ただ、それを抜きにしても萌恵ちゃんは驚異的だった。触ってほしいって思ったところを的確に触ってくれて、力加減とかタイミングとか、なにからなにまで絶妙で。思い出しただけで、体の芯が熱くなる。
私が赤ちゃんみたいだったという感想については……恥ずかしながら、反論の余地がない。だって、触ったり揉んだりしてたら、吸いたくもなるよ。
「……真菜、まだ疲れ残ってる?」
「全力疾走は無理だけど、散歩ぐらいならできるよ」
学校を休むのだから外出はできないけど、体力の度合いを示すにはちょうどいい例えだ。
「真菜がよければ、なんだけど……このままもう一回、しない?」
萌恵ちゃんが恥じらいながら、甘えた声で訊ねてくる。
私は萌恵ちゃんの肩を掴み、返事とばかりにキスをした。
「もう外は快晴だから、今度は大声出さないようにしないとね」
「んふふっ、あたしに名案があるよ~。ずっとキスしてれば、声は漏れない!」
「あははっ、確かに名案かも。それじゃあ、萌恵ちゃん……」
かくして、わずかばかりの休憩を経た私たちは、再び快楽の海へと飛び込むのだった。
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