第2話 異世界転移は猫のせい?

~~~3か月前~~~






「ありがとうございました――!」




 店員の朗らかな挨拶を背に、焼酎と酒の肴で満たされたおなかをさすりながら行きつけの居酒屋[どんどん]の暖簾をくぐる。




例年より少し早めに訪れた冬の夜風が、ほろ酔いの体に心地よい。




 せっかく暖まった体を冷やすのはもったいないと背中を丸めながら足早に家路を急ぐ。


 とその時である。ポケットに入れていた携帯がけたたましく着信音を鳴らす。






「もしもし~紀野か? 何しとるかい?」


電話の先は小学からの腐れ縁の直樹だ。




「お~! さっきまでどんどんで一杯やって、今帰っとるとこよ~」




「また一人酒か~まぁ独身貴族は自由でええのぅ」




 いやいや。好きで独身ではないのだよ。


ただただ出会いがないのだよ。


 毎日会社と家との往復で、楽しみといったらふらりと居酒屋にしけこむことくらい。




「息抜きには居酒屋が一番よ~ところで、こんな時間に直樹から電話とはどしたんだ?」




「いやな、来週末の夜釣りなんだが家族サービスでその日から旅行に行くことになってしも~てな」




「あぁ、そりゃ仕方ないな。また次に休みあうとき行こうか?」




「急なことで悪いな。餌代はおれがおごるわ」




「お~そうしてくれぃ。じゃまた連絡してくれな」




ふぅ。せっかくの休みの予定なくなったか。


まぁ、家族のために時間は取らないとな。




 直樹とのたわいもない会話を終え、あと数分で家に着くというところで、ふと道路脇の側溝に何かの気配を感じた。




青白い月明かりに照らされて目に入ったのは










モフモフしたにゃ――んと鳴く獣?








こんな寒いなか側溝にいるとは……








 月明かりだけではよく見えないので、携帯のライトを作動して側溝を照らして見てみると綺麗な青い目がライトの明かりに反射して光っている。






「今夜の満月みたいな目しとるな~」




猫好きの俺は、あまりのかわいさに手を伸ばそうとする。






と、その時だった。






 猫に手を伸ばす俺の手の先からカメラのフラッシュのような強い閃光をまともにくらう。






「うおぅ! まぶしっ! なんじゃ!?」




あまりの強烈な光に、視界からすべての景色が真っ白に




そして俺の意識も真っ白に……






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