第25話 入学式 1

 今日は魔導学園への入学式があるため、ミアは学園の制服を着て、朝からバタバタと準備に落ち着かなくしてた。


 魔導学園の制服は男女共に共通で私服の上に膝下までの黒色のロープをすっぽりと頭から被るというもので、胸元に学園の紋章が銀糸で刺繍されている。一見すると地味だが生地が上等で胸元の刺繍だけというのが反って上品さを醸し出していた。


「ミア、大丈夫? 忘れ物はない?」

「はい、お母様‥‥‥‥許可証も持ちましたから」


 心配そうな母様に笑顔で答える。

 許可証も持ったし指輪も嵌めてるから忘れ物はない。後は身だしなみのハンカチくらいかしら、と念のためポケットを確認する。うん、大丈夫、ハンカチも入っていたので準備は万端である。


 忘れ物がないか確認したところで、侍女のリリーがジュリアスが迎えにきたことを伝えてきた。母様に行ってきますと挨拶をして玄関へ行くと学園の制服であるロープを見に纏ったジュリアスの姿が目にはいる。

 表情からは分からないが、チラリとこちらを一瞥した瞳の鋭さから、朝から機嫌が良くはなさそうだと思いながら笑顔で挨拶をする。


「おはよう」

「‥‥‥‥おはよう」


 ぶっきらぼうに挨拶を返して馬車へと歩いていくジュリアスの後ろ姿を見ていると朝から小さなため息がでてきた。


「これから毎日‥‥‥‥はぁ」


 魔導学園への通学をジュリアスと一緒にすることになったのだ。確かに婚約中なのだから一緒に行くのは可笑しくはない、可笑しくはないが気持ちは別だ。


「お嬢様」


 心配そうな顔で侍女のリリーがミアを見ていた。心配をかけてしまったと気づき、慌てて気持ちを切り替える。


「リリー、行ってくるわね」

「いってらっしゃいませ、お嬢様」


 心配そうなリリーに大丈夫という気持ちで頷くとジュリアスの後を追いかけた。


 馬車の中ではお互い一言も話さず、気まずい思いをしていたので魔導学園へついた時にはホッとした。

 ジュリアスから差し出された手を取り馬車を降りる。周りにはミアたちと同じように学園の制服を着て馬車を降りる者や、校門に向かって歩いていく男女の姿がある。

 ミアとジュリアスも校門へ向かって歩いていく。

 校門を入って白い二階建ての建物の前で受付の人に許可証を見せると、透明な何も書かれていない一枚のカードを渡された。

 それを表裏とも興味深く見ていると受付の人に、


「カードに魔力を流してください」


 と言われ、横を見るとジュリアスが魔力を流している。ジュリアスの手にしているカードが一瞬強い光を放ち、光が消えるとカードにジュリアスの名前と魔導学園の紋章が入っていた。


 ジュリアスのカードを凝視していると視線を感じ、受付の人と目があった。


 大丈夫‥‥‥‥大丈夫。


 ミアはローズから貰った指輪の存在を確かめるように触ってからカードに魔力を流す。カードはジュリアスの時と同じように強い光を放ち、光が消えるとミアの名前と魔導学園の紋章が入っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る