第4話 ここはどこですか
男の子から「そういえばお互い名前も知らないよね」と言われて気が付いた。
「僕はアルバート、君は?」
「ミアです」
アルバートはマルティネス伯爵家の三男で、教会へ行った時にミアを見かけていたようだ。
鑑定するために教会へ行った時かしら?
ミアは気づかなかったが、きっとその時なのだろう。そんなことを考えていると小さな窓が目に入る。
窓から外を見ればここがどこか分かるかしら?
そう思って窓の下まで行って手を伸ばしてみるが窓枠にも届かない。部屋の中を見回すと、木箱があるのに気がついて動かそうとしてみたがミアひとりでは無理だった。
「これ、窓の下まで動かせないかしら?」
「やってみようか」と力強い返事が返ってきた。
アルバートと一緒に窓の下まで運び、木箱の上に乗って窓から外を見ると見知った建物の屋根が目に入った。
あの青い屋根は教会よね? それから‥‥‥‥ここは二階で、前は路地裏なのね。
「ここって拐われた場所の近くよね?」
「うん、そうだと思う」
アルバートもミアの隣で木箱に乗って、食い入るように窓から外を見ていた。
ミアは全く知らない場所に連れて来られたのではない、と分かっただけでも良かったと思うことにする。
ここから出られたら助かる可能性があるものね。
二人は取り敢えず木箱を元の場所に戻しておく。自分たちを拐った男達が、木箱を見てどういう反応をするか分からないから慎重になっていた。
ミアとアルバートは木箱を戻してから、床に隣り合わせに座った。しかし二人の間に会話はなく、重苦しい空気に耐えきれなくなったミアは、気になっていたことを聞いてみた。
「アルバートは‥‥‥‥魔導学園の生徒なの?」
「ううん、今年入学するよ‥‥‥‥ミアにも許可証が届いたんだよね?」
アルバートが確かめるように聞いてきた。それにミアは浮かない顔で頷いた。
「‥‥‥‥ええ」
「でも、止めたいの?」
アルバートは不思議そうに聞いてきた。
ミアはあまり話したくない話題を、自分からしてしまったことを後悔しながら、気まずそうに呟いた。
「‥‥‥‥魔法が、使えないの」
「!‥‥‥‥使え、ない?」
アルバートは予想もしていなかったミアの言葉に大きく目を見開いた。
ミアが頷くと気まずい沈黙が流れる。
そしてアルバートが「‥‥‥‥それは」と何か言いかけた時、外が騒がしくなって鍵が外され扉が開けられた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます