8-5

 衝撃のバトル内容から数日後、ある人物が瀬川せがわプロデューサーの会社に姿を見せる。

それを見た周囲の来客も驚いているが、それ以上に驚いたのは堂々と正面入り口から会社に入ったこの人物の方だろう。

周囲を見る限りは一般来客や入り口付近にあるショップに足を運んでいた人物だけで、スタッフに驚くような表情の人物はいなかった。

「瀬川と言う人物に会いたい」

 受付スタッフも動揺するその人物、それはARスーツ姿のナイトブレイカーだった。

さすがに警備上の都合でメットは外しているのだが――。それを見たスタッフも若干機械調子かもしれないが、マニュアル通りの対応を行う。

「瀬川ですか? あいにく、留守にしているようで。しばらくお待ちください」

 瀬川が席を外していると考えたスタッフは、開発室の方へ連絡、瀬川がいるかどうかの確認をとる。

開発室にはいなかったようで――受付スタッフが別の場所へ確認をしようとした所、何と瀬川が姿を見せた。

「なるほど。まさか、鍵の持ち主が直接来るとは」

 瀬川の方もナイトブレイカーが来る事は予想していなかった。

それとは別に、ある人物にもメールを送ろうと考える。状況からしてナイトブレイカーは止める気配なのだが――何も行わない。



 数分後、ナイトブレイカーが通されたのはあるゲームの開発室だった。しかし、部屋に入っても人は見当たらない。

こういう場所では開発中の新作を作っていそうだが、ここではおもに既存タイトルのバランス調整やバグ修正と言った箇所を担当している部署だ。

そうした関係もあって、特にみられてはいけないようなデータがある訳でもない。それでも相応のセキュリティがあるので、部外者が入る事は出来ないのだ。

時間的にお昼と言う事でスタッフは出払っている。誰かいそうな雰囲気がするかもしれないが、それを突っ込む気配もなかったので瀬川は何も言わない。

「別の客人が来るまで、ここで話を聞こう」

 瀬川はスタッフの会議用テーブルとソファーのある場所へと案内し、ナイトブレイカーもソファーに座る。

瀬川の視線はナイトブレイカーの方を一直線に向いており、何か理由があってきた事も把握していた。

「何故疑わない? 俺は敵かもしれないのだぞ」

「それはないだろう。鍵の使用者は敵と認識していない。彼らにとっての敵は、基本的に炎上勢力やネット炎上に加担する存在」

「断言出来る理由があるのか? それとも、それを承知して通したのか?」

「どちらにしても、今呼んでいる人物を見れば分かるだろう」

「誰を呼んだ?」

「おそらく、君が一番会いたいと思っている人物だ。鍵の使い手と言えば分かるだろうな」

(まさか?)

 話をしていくにつれて、何となく瀬川の言いたい事を察していき――。

それから数分した頃だろうか、瀬川宛に来客があった事を告げる放送が流れた。



 受付にいた人物、それは私服姿の舞風まいかぜとマルスだった。既に到着し、ハヤト・ナグモと話をしている。

「鍵の持ち主を全員招集と言うと、ただ事ではないと思うけどね」

 ハヤトは今回の招集で何か重要な事を話すと考えていた。そうでもないと緊急で呼び出しはしない。

舞風の方は何か情報が得られると考えているが、マルスの方の表情は――。

(明らかに、何かが動きだそうとしているのか)

 表情からは緊張こそはないが、明らかに今回の招集は何らかのフラグと考える。

元々、マルスも異世界転移であの世界へ来た事もあり、同じような人物が見つかったとも。

(それにしても、WEB小説からヒントを掴もうにも、あそこまで振り出しになってしまった以上は――)

 舞風は法則がリセットされた事で、情報集めまでやり直しになった事には悩む。

本当に、一連の事件を解決に導く情報があるのか――と言う意味でも。


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