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センターモニターから一連のバトルを見ていた四人は、一〇連勝を達成したあいね・シルフィードに驚くしかなかった。
「あれが魔法? どう考えても――」
ハヤト・ナグモの方は色々と言いたいところだが、話が進まなくなるので
中には魔法と言う名の物理攻撃だったり、魔法とは名ばかりの攻撃方法だってあるので――そのレベルでの設定にツッコミを入れるのは揚げ足取りと変わらない。
ハヤトの方も思い当たる部分はあるだろう。設定レベルで言えば、その辺りはどっこいどっこいといった具合だ。
ロボットオタクな自分が巨大ロボットを異世界で作りだし、遂には自分の世界で放送されていたロボットバトル物アニメのようなデュエルで決着を付ける、という具合だ。
ただでさえキャラ萌えのような二次創作が無双するような小説サイトもある関係とはいえ、退場キャラを最低限にする為の無茶な設定を作っていたのだから。
「言いたい事は分かるけどね、感じ方は人それぞれ――と言う事だよ」
しかし、中にはその設定を借りて二次創作でオリキャラを作って――と言う様なコミュニティだってあるので、あまり深く干渉はしたくないのかもしれない。
そうした状況を打破しようと、近年では一次創作オンリーのWEB小説サイトが増えている。それに加え、出版社がサイト立ち上げに関与し、出版化をやりやすく――とも言われているが。
あいねのバトルを見ていたのは、蒼流(そうりゅう)の騎士だけではない。他にも、チェックしていたまとめサイト管理人だっている。
彼らは別のリズムゲームが設置されているベンチスペースで座りながら話しているようだ。
「まさか、あの六代系少女を広めたあいねまで現れるとは」
「想定外はこっちだ。マルスを召喚し、その後に音信不通だった管理人の消息がわかった」
「どうせ、警察に捕まったのでは? もしくは――」
「その、まさかだ。ガーディアンが事情聴取を行っているらしい」
「ガーディアンはまずいだろ? 何としても、奪還しないと」
「奪還は止めておいた方がいい。既に蒼流の騎士が再び動いている。あの正体も同業他社のまとめサイト管理人だったらどうする?」
「つまり、蒼流の騎士の動きを見逃せと? ガーディアンの為に?」
数人規模のサイト管理人の集まりは、様々な情報交換をする為にARゲームフィールドに来たらしい。
ここならばジャンルによっては爆音等の関係で他人に話を聞かれる事も少ないし、さすがのガーディアンが強制捜査を行ってフィールドの運営を妨害すれば草加市も黙っていないだろう。
さすがに災害等の非常事態ではガーディアンも動くが、そうした災害対策も万全なのが草加市である。
ある意味でもコンテンツ事業で全ての事業で必要な予算を――と言うだけあるかもしれない。
「ほぅ――詳しく聞かせてもらいたいものだな」
管理人たちの目の前にいたのは、先ほどまで歩いていて通り過ぎようとしていたメイドのコスプレイヤーだ。
身長がベンチに座っている自分達よりも高く、明らかにアスリート並だろう。その長身の女性が、ツインテールでメイドのコスプレをしている。
その光景を見て、まとめサイトの管理人の一人がガジェットか何かをかばんのポケットから取り出した。
「貴様こそ、ARゲームの闇を暴こうとする我々を邪魔するな」
ガジェットは即座に鍵へと変形し、管理人の周囲には謎フィールドが展開され、黒のシュヴァリエに変化した。
どうやら、先ほど敗北した黒のシュヴァリエは彼が変身していたようである。
「ARアバター、動画サイト的にはバーチャルアイドルみたいな物か」
彼女の方はガジェットを取り出すようなことはせず、そのまま⇒手を拳にして――。
「おい、馬鹿止めろ! あのメイドはビスマルクだ!」
「なんて、別ジャンルのゲーマーがARゲームに介入する?」
管理人の一人がガジェット解除を指示、最終的には黒のシュヴァリエに変化した管理人も変身を解除する。
そして、その人物がビスマルクと知った管理人たちは即座に逃げ出した。どうやら、誰なのか知って逃げ出した様子。
「彼らを放置すれば、いずれ草加市は――」
まとめサイト管理人が逃げた方向を向くが、彼女が追いかけるような事はなかった。
おそらくはサイト管理人を追いかけるよりも重要な事が、ここで起きようとしている事を予言しているのだろうか。
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