第490話

「デグ……住む場所は見つけたけど、食料と水はどうする……?」


 木の上に作られた家を見つけた俺達は、そこで一先ず何日か休もうと決めた。


 だが、住む所が見つかっても食べる物が無い為、どっちにしろこのままでは死んでしまう。


「取り敢えず、家の何処かに食える物とか無いか探してみようぜ」

「分かりました! なら私はあの家を探してきますね!」

「自分はアッチを見てくるッス!」

「なら、私はあそこ……」


 それぞれが、別々の家を見て回る。


「それにしても、良くこんな木の上に家を建てようと考えたもんだな」


 木の上に家を建てるなんて、思い付きもしなかったぜ。


 そして俺は、家の床などを見る。


「よく見ると、多少荷物とかもあるな」


 急いでいたのか、荷物があっちこっちに転がっていた、


「荷物も置いて逃げるってどんな状況だよ……? まぁ、理由なんてモンスターしか無いか」


 床に転がっている荷物を一つ一つ見て回るが、やはり食料らしきものは無い。


「デグ……全然見つからなかった……」

「すみません、私の方もです」

「自分も荷物とかはありましたが、食料とかは全然無かったッス!」


 やはり、食料や水は無く結局どこからか探して来る必要がある様だ。


「よし、無いならしょうがない。食料と水を探しに行くぞ」


 俺達は、そのまま自分達の荷物を家に置き、身軽にしたうえで再びジャングル内で何か食べられるモノや水場が無いか探す事にした。


「食料や水とかありますかね?」


 レギュが心配そうに聞いてくる。


「分からねぇーが、ここに家を建てたって事は少なからず生きていく為に都合が良いから作ったんだと思う」


 モンスターから身を隠す意味合いがもっとも高いだろうが、食料や水が無ければそもそも生きていけない──なので、ここからある程度の距離内に必ず食料や水場がある筈だ。


「あ、そう言えば自分達を騙したドワーフ達が水場もあるって言ってたッス!」

「確かに……でも、結局それも嘘の可能性がある……」

「そうですよ、ラバさん! 私達はもう騙されません!」

「うぅ……そう言われると確かに湖の件も嘘くさそうッスね……」


 まぁ、ドワーフ共が言っていた大きくて、見晴らしの良い湖は嘘だとしても、何処かしらに水場はあるだろう。


 モンスターだけでは無く、レギュには水の音も注意深く拾ってもらう様に言う。


 そして、俺とラバは何処かに木の実や動物などが居ないか周囲を警戒しながら進んでいく。


「取り敢えず、今日は軽く周囲を探すだけにするぞ」


 仮に見つからなくても、今日までの分の食料と水は確保されている。その為、今日は身体を休める方を優先した方がいいだろう。


「日が落ちたら、収穫が無くても一旦戻って、明日から本格的に探すぞ」

「分かった……」

「分かりました! ですが全力で水の音を探しますよ!」

「自分も何か食べられる物が無いか見つけるッス!」


 二人は気合を入れ、レギュはスキルをフルに使い、ラバは何一つ見逃さない様に常に視線を色々な場所に動かしていた。


 そして、幸いな事に水場は見つからなかったが、木の実を見つける事が出来た。


 持って行く前に、皆んなで一つずつ食べてみると程よく甘く、疲れた身体に力が湧いて来る感じがする。

 何よりも良かったのは水っ気がある木の実だった為、水分補給も出来た事だな。


「よし、運良く見つけられた、この木の実を持っていけるだけ運ぶぞ」

「こんな事だったら鞄を持って来れば良かったですね」

「まぁ、明日も来ればいいさ」

「そうッス! 自分が大量に運ぶッスよ」


 木の実を入れる物が無いため、俺達は手で持てる分だけ収穫し、家に戻る。

 途中で何体ものモンスターが居たが木の上を移動している俺達に気が付くモンスターは居なかった。


「木の上が、こんなにモンスターに見つからないとは思わなかったッス!」

「確かに……。音を出せば気付かれるかもしれないけど、黙っていればバレない……」


 一度気が付かれたらお終いかもしれないが、今の所は問題無くやり過ごせている。


「それにしても、気を付けないと行けねぇーのは、中型だな」

「ここに来てから何体か居た……」


 木の上に建つ家を見つけてから、ここまで来る道すがら中型を見つけた。


 元々、小型であっても戦う気は無いが中型がいる事で、より一層、モンスターを倒しながらココを脱出するのは無理だと悟る。


「とりあえず一刻もはやくここから脱出したいぜ」


 それから俺達は無事に家に着き、早めに休む事にした。

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