第470話

「シャレ様、そろそろ会議が始まりますのでご準備をお願いします」


 ニネットの言葉に返事をして、私は会議室に向かう。


「今日は何の会議だ?」

「本日はネークさんの方で手配していた戦場場所についてですね」

「ほぅ……調査が終わったのか?」

「その様です」


 ネークが調査に頼んだという信頼出来る仲間は相当優秀な様だな。


 そんな事を考えていたら、あっという間に会議に到着した。既に他の者達は集まっていた様で、私とニネットが最後の様だ。


「待たせて悪かった」

「がはは、気にするな。ワシも今来た所だ」


 ドワーフ族のキルが豪快に笑い飛ばす。


 会議室には、ドワーフ族のキル達、獣人族のネーク達、そしてエルフ族の代表であるエルトンが居た。


 なんでか、分からないが私は全種族の代表になってしまった……

 そんな柄では無い事を私自身が一番分かっていた為、他の者を推薦したが、見事に断られたな。


「はぁ……私よりアトスの方が絶対相応しいだろうに……」

「シャレ様、私達がこれから戦争する相手は人間族なので、それは無理かと」

「分かっているよ……」


 ニネットに指摘されながらも、私は代表の席に着く。


「さて、今日はネーク達が調査してくれた戦場についてだったか?」

「えぇ。そうです──仲間の報告が入りましたのでご報告になります」


 ネークが席から立ち上がる。


「私達が調査した戦場は全部で5つでした──ですが、戦場として適しているのは一つだけでした」

「どこだったんだ?」

「ここになります」


 そう言うと、ネークの後ろに控えていた、ガルルとググガの双子の獣人が大きな地図を広げ、その地図にネークが指を指す。


「むっ? 大分人間族の住処から近く無いか?」


 キルの言葉に、私も同意だな……人間族の住処から、かなり近い位置だ。


「確かに、人間族達の場所から近いですが障害物などが、かなり多いので人数の差で圧倒的に不利な我々からしたら、ここしか無いでしょう」

「むぅ……そう言われると、確かにそうだな」


 腕を組み唸るキル。


「ちょっと待ってくれ、もう一つの方はどうだ? そっちは離れているし、いいと思うのだが」


 続いて、エルトンが口を開く。確かに、程よく遠い上に障害物になりそうなのが沢山あるな。


 しかし、ネークは首を左右に振る。


「確かに障害物の多さから、戦い易さで言えば此処の方がいいですが、ここじゃダメなんです」

「何でだ?」

「ここは、人間族の住処から遠すぎるんですよ」


 それからネークは自身の考えを語り始める。


「あまりにも遠過ぎると、人間族が戦場に来てくれません──その場合に人間族が取る行動は人海戦術でバラバラに攻めて来るかもしれません」


 息継ぎをして、そのまま言葉を繋ぐネーク。


「数で圧倒的に不利な我々は絶対に纏まって戦わないとダメです──その為には人間族の全兵力を一箇所に集める必要があります」


 確かに。


「なので、遠すぎてはダメなんです。その事を考えると、一番良いのがココになるんです」


 そう言うと再びネークは一番最初に指した場所に指を置いた。


 ネークの説明は理解出来るものであり他の者達も納得した。


「それでは、シャレさん人間族との戦場はここで問題無いでょうか?」

「あぁ。調査感謝する──調査した者達にも直接お礼を言いたいのだが?」


 どうやら、今回の戦場の調査にはネークが最も信頼する者に頼んだと言っていたから、私も一度見てみたいと思っていた。


 しかし……


「すみません。白い閃光とその部下達には再び人間族の同行や他にも仲間になってくれそうな種族が居ないかなどを調べてもらう為、既に出発してしまいました」

「そうか……。それは残念だ──また此方に来た時は是非教えてくれ」

「分かりました」


 これで会議が終わり、我々が戦うべく戦場が決まった。


 戦争まで日にちが着々と近付いていく中、順調に戦争の準備が進んで行く中、ロピとリガスが村に戻り、アトスが亡くなったと報告を受けた……

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