第462話
「おいおい……また無傷かよ……」
ロピの放った雷弾は確かに変異体に直撃したが、先程同様に変異体は無傷である。
だが、先程と違うのは俺がシッカリと雷弾が当たった瞬間を見た事だ。そして、その様子を見て、何故モンスターが無傷なのかが分かった。
「ダンゴムシみたいに丸まりやがって……」
そう、俺が見たのは背中に岩の様な物を乗せた変異体が、自身の身体を縮こませて、丸まる様にして球体になったのだった。
そして、丸まった事により変異体は一つの巨大な岩になっている。
「お兄さん……あんなの反則じゃない……?」
「そう……だな……」
あの背中にある岩は見せかけでは無い様だ。
「どうやって、あんなの倒すのー? 私の雷弾が一切効かないよー?」
「どうやってと、言われてもな」
倒す方法はあるだろう。それは、丸まって無い時に、柔らかい箇所に雷弾を撃ち込む事だ──しかし、そんな事が出来るのか……?
丸まった事で岩の様になった変異型は、なんとそのまま転がる様にして移動を始める。
「あのまま、移動出来るのかよ!?」
「あーもぅー! あんな状態で移動されたら、どんな攻撃も効かないよ!」
変異体はこちらがシッカリと見えているのか、俺とロピが居る木に向かって転がって来る。
そして、そのまま木に激突するのであった……
「うぉッ?!」
「あわわッ?!」
木に激突されて、俺達の居る木が大きく揺れる。変異体は続けて、何度も何度も木に激突しては、少し下がり、また激突するのを繰り返していた。
「お兄さん、こ、このままじゃ、落ちちゃう!」
「ロピ、シッカリ捕まっとけよ!」
「む、むりー。こんなに揺らされたらー!」
不味い……変異体の標的がチルとリガスから俺とロピに切り替わった。
いや……これは俺と言うよりかは、ロピか?
とにかく、このままじゃ落とされる。
「ロピ、隣の木に移動して逃げるぞ」
「う、うん!」
俺とロピが隣の木に乗り移る。すると、変異体はすぐ様標的を、その木に移し続けて突撃して来る。
「もー、やだー! あんなに丸くなっているのに、なんで私達が見えるのー?!」
「ロピ、いいからどんどん移動するぞ!」
俺達は木から木えと移動するが、その度に変異体も追いかけて来る様に移動する。
「アトス様、戻りました」
ロピと木の上を移動していると、いつの間にか他の皆んなも木の上に移動していた様だ。
「アトス殿、あの変異体は無理ですな。恐らく我々だけでは倒せないでしょう」
「あぁ、俺もそう思う。ロピの雷弾が効かない以上お手上げだ」
「なら、どうするのー?」
「このまま、逃げる……しか無いな」
禁止区域の入り口には大分近付いて居ると思う。だが、果たしてこのまま逃げ切れるかが問題だな……
「ふむ。ここは私にお任せ頂けませんかな?」
「どうするつもりだ?」
「オーハンを使って、吹き飛ばした後、逃げて、そして時間が経過したら、またオーハンで吹き飛ばすを繰り返せば恐らく逃げ切れるでしょう」
なるほど……
「魔族さんすごーい! それでいこう!!」
「リガス、大丈夫なの?」
「ほっほっほ。心配ありませんぞ? 防御力は凄いですが、攻撃は他のモンスター達とあまり変わらないですな」
「そうなのー?」
「はい。あの丸まった状態の攻撃は少し厄介そうですが、カネルで有れば問題無いでしょう」
俺達はリガスの案を採用する事にした。
「アトス殿達は私の少し先を移動して下さい」
「それじゃ、リガスがあの変異体の攻撃を一心に受ける事になるぞ?」
「ほっほっほ。何も問題ありませんな──私であれば多少足場が揺れても移動に遜色はありませんぞ」
リガスはいつも通り、飄々した表情を浮かべる。
「他の方達は足場が揺れたら危ない方達も多いので、これが最善ですぞ?」
「分かった……」
俺達はリガスの言う通りスピードを上げて走り始める。
「チルちゃん、いくよ!?」
「姉さんは、先行って! 私はリガスと行く」
「だ、ダメだよ!?」
「そうですぞ? チル様もアトス殿同様に一緒にお逃げ下さい」
リガスの言葉に首を振るチル。
「私はリガスのご主人様だから、一緒に居る」
決意した様子のチルにリガスは微笑む。
「ほっほっほ。流石私のご主人様ですな──分かりましたチル様も手伝って下さい」
「最初から、そのつもり」
二人のやり取りを聞き、姉のロピは慌てる。
「あ、危ないよチルちゃん!」
「私は大丈夫。姉さんはアトス様を絶対に守ってね?」
「う、うん……だけど……」
それでも妹が心配なロピはチルの方を向き不安そうな表情を浮かべる。
「ほっほっほ。ロピ殿、チル様の事は私にお任せ下さい──絶対に守り通して見せますぞ?」
「……うん。分かった、チルちゃんをお願いね?」
「はい」
リガスの強さを知っているロピは納得した様だ。
「チル、リガス、気をつけろよ?」
「はい。アトス様もお気をつけ下さい」
「ほっほっほ。こちらは私とチル様にお任せ下さい」
「あぁ、頼んだ!」
俺とロピ、グイン達は一度木を降りて地面の上を全力で走り出すのであった。
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