第428話
「なんだったんだよ……」
ポツリと言った俺の呟きに答える者はおらず、誰もが漆黒のモンスターと傷だらけの中型達が去っていった方向を見ていた。
あの二体は仲間だったのか……?
暫くの間、誰もが動かず、戦闘態勢のまま様子を伺っていたが、二体の気配は既に無く、いつまで経っても感じる事は無かった。
「アトス様、姉さん無事ですか?!」
「チルちゃん……あの黒いモンスター怖かったよー」
ロピが妹に向かって抱き付く。
「姉さん、大丈夫?」
「うん……」
二人はお互いの無事を確かめ合う様に抱き合う。
「アトス殿、ご無事ですか?」
「あぁ、リガス達も平気か?」
「えぇ。我々は特に怪我など無いです」
それからディング達も集まって来る。
「アトス、無事か?」
「あぁ、俺達は大丈夫だ──そっちは?」
「俺は大丈夫だ。コイツらもお前のお陰で対した怪我には至らなかった、感謝する」
ディングの部下達はお互いに肩を貸しあいながら足などを引きずりながら近づいて来る。
「それにしても、あのモンスター達はなんなんだ?」
「いや、俺も分からない……」
ディングの疑問は誰もが考えている事だろう。
「ふむ。まずあの傷だらけの中型ですが変異体の可能性もありますな」
「どういう事ー?」
「見た目は、ただのモンスターに傷が無数に付いていただけかと思いましたが、恐らく隠蔽か、なんかの能力を持っていると見ていいでしょう」
確かに……気配があったにも関わらずアレだけ探し回ったのに、結局見つからなかったし──かと言って、油断していると、気配も無くいきなり目の前に現れた……
「なるほどー。だから私達や魔族さんでも、気配に気付かなかったんだねー」
「私や姉さんだけでは無くリガスまでモンスターの気配が分からないと言うのは不思議に思っていましたが納得いきました」
仮に、あの傷だらけの中型が変異体だとして、隠蔽の能力なんて、かなり厄介だぞ……
「これは、何か対策を考えた方が良さそうですな」
「対策って言っても、どうにも出来なく無いか?」
俺達はその場で頭を悩ませるが、直ぐには思いつか無い。
「それじゃ、アトスよあの漆黒のモンスターは何なんだ?」
「それ、私も気になる!」
「あの、モンスターは異様でした……」
確かに、皆んなの言う通り、あの漆黒のモンスターはこれまで見て来た、どのモンスターと比べても異様で異常だった。
「ふむ。気配はもちろん規格外でしたが、それよりも、あの中型が守る様にしていましたな」
「あぁ、それは俺も思った。リガスの部下達が攻撃する為に走った時に慌てた様子だったな……」
「確かにそうかもー。私の攻撃を受けて痺れていたのに、無理やり身体を動かしてたよ!」
ロピの雷弾を受けて、決して軽く無い怪我を負っていたのにも関わらず中型は急いで漆黒のモンスターに向かって走って行ったのを覚えている。
「あの、中型に取っての神様……」
ん?
「チルちゃん?」
「チル様?」
何やら神妙な面持ちでチルが呟く。
「あの漆黒のモンスターは傷だからの中型からしたら神様なのかもしれません……私と同じです」
チルの言葉に俺の頭ははてなマークで一杯になる。
すると、リガスがご主人様であるチルの言葉の意図を説明する。
「ふむ。なるほど、流石チル様ですな」
「え? 魔族さんはチルちゃんの言っている事が分かるのー?」
「ほっほっほ。分かりますとも」
「教えてー!」
この場でチルの言っている意味が分かるのはリガスだけの様だ。
「そんなに難しい事ではありませんぬ。チル様に取ってアトス殿は命の恩人であり、生きる為の希望です」
それは、俺が過去にチル達を助けた事を言っているのだろう。
「命を助けて貰った事や生きる希望を与えてくれたアトス殿はチル様からしたら神様に等しいのですよ」
「あ、私も分かった!」
「ほっほっほ。流石姉ですな」
俺も何となく分かって来たが、ディング達は未だ持って俺達が何を言っているか分からないだろう。
「要するに、チル様に取ってのアトス殿は神様の様な存在であり、先程のモンスター達の関係も同じなのでは無いかと言う事ですな」
「ちょ、ちょっと待ってくれ……ならあの傷だらけの中型はピンチな時に漆黒のモンスターに命を救われた事があるってことか?」
「ほっほっほ。詳しい事までは分かりませんが、そういう過去がある可能性はありますな」
今までの話は全て俺達の想像である為、合っているか分からない。
しかし、こうやって理由を付けていかないと、頭が混乱するので、頭の整理には丁度良い。
「あはは、実際の所は分からないけど、そんな風に考えた方が未知のモンスターって思うよりいいよね!」
「姉さん、これは想像でも何でも無く、絶対に合っているから!」
チルは姉に向かって、リガスが説明した仮説が合っていると言い切る。
「あはは、分かった、分かったよ!」
妹の少しムッとした顔を愛おしそうに見つめるロピは普段はあまり分からないが立派なお姉さんの顔付きをしていた。
「それにしても、魔族さん良くチルちゃんの言っている事が分かったねー?」
「ほっほっほ。それは私も同じだからですぞ?」
「どう言う事ー?」
「私に取っての命の恩人であり、生きる希望がチル様なんですよ」
「あはは、そっかー!」
こうして、俺達は村に戻るので合った。その後も、一週間程オークの村に留まり、二体のモンスターが居ないか探したりしたが、結局見つからず気配も一切感じ取れなくなっていた……
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