第328話

「お兄さん、本格的に戦いが始まちゃったね……」


 ロピはスリングショットで雷弾を敵に対して撃ち込みながら、呟く。


「あぁ……始まっちゃったな……」


 俺もロピ同様に話しながらも味方のサポートを行なっている。


 しかし、まだ始まったばかりだと言うのに、既にかなり数の味方が負傷、あるいは殺されてしまっている。


 相手側も被害としては同じくらいだが、とにかく人数が多い為、状況は劣勢だと言わざるおえない。


「チルちゃんと魔族さん大丈夫かなー?」


 今さっき、ニルトンの方に向かった二人を心配するロピ。


「まぁ、リガスが居る限りチルが死ぬ事は無いから安心しろ」

「うん……」


 俺もロピもリガスには全幅の信頼を置いているが、やはり妹の事は心配の様子だ。


「アインスショット!」

「アタック!」


 次々と矢倉から敵を倒しては居るが……


「あーん、もう全然減らないよ!」


 ロピは愚痴りながらも攻撃は止めない。


「それにしても、多過ぎだろ……」


 一人一人は対して強くも無いし、寧ろ弱いと言えるだろう。


 種族的にも人間族は特に身体能力に秀でている訳では無いので、エルフ族とドワーフ族であれば、一対一の状況なら確実に負けないだろう……


 しかし、やはり人数が多い為、人間族は常に一人に対して複数で襲い掛かり、それも良く訓練されているのか、連携がとてもスムーズである。


「敵さんはズルだよ! 卑怯だよ!」


 相手の戦法を非難するロピであるが、戦いに卑怯もズルも無い──それを知っているロピだが、やはりこの状況は言わざる終えない様だ。


「お兄さんは、この人数サポートし切れる?」

「いや、流石に無理だ……俺が見える範囲だけしか出来てない……」


 その為、俺達がいる矢倉からは、チルやリガス、シャレやキル達の姿が見えない為、サポートが出来ていない状況だった……


「クソ……こんな時こそ俺のスキルの出番だと言うのによ……」

「しょ、しょうがないよ! それにお兄さんがサポートしている人達は無傷で相手に勝っているし!」


 ロピがフォローする様に言葉を掛けてくれる。


 どうする……矢倉から降りて、俺が移動しながらサポートするか?


 確かに、この矢倉からだと全体的な状況を把握しやすいが、やはり木々が邪魔で少しでも矢倉から離れていると味方が木々に隠れてしまいサポートが出来ない。


「下に降りれば、もっとサポート出来そうだな……」

「だ、ダメだよ! お兄さん、片腕失って、まだ前みたいに早く走れないんだから、敵に目をつけられたらヤラレちゃう!」

「そうだよな……」


 ロピの言う通り、まだ身体のバランスが上手く取れない為、早く走る事が出来ないで居る。


「八方塞がりだな……」


 もっと、良い策が無いか考えていると、遠くで何かが光ったのが見えた。


「ん? なんだ?」


 その光に俺とロピは視線を向ける。


「「──ッ!?」」


 そして、その光を見て目を見開く。


「お兄さん、また来たよ!」

「ロピ、迎撃出来るか!?」

「や、やってみる!」


 俺の言葉に、ロピは直ぐに反応して、カウントを唱えた。


「1……2……3……」


 向こうも、直ぐには撃て無い様だが、赤い光がどんどん強くなっているのを感じる。


「あれが、炎弾……」


 先程、撃ち込まれた炎弾と同じくらい赤く燃え上がる大木がこちらに放たれる。


「ロ、ロピ──来たぞ?!」


 炎弾による、攻撃がこちらに向かって飛んできた。

 

 しかし、どうやらロピの方も迎撃準備が出来た様だ。


「4……5……フィンフショット!」


 バチバチと音を鳴らしながら炎弾に向かってロピは雷弾を撃った。


 二つの攻撃が接触した瞬間に、とんでもない爆発が空中で起きる。


 その爆発に誰もが一度動きを止めて、空を見上げる程であった。


「おー! ロピ良くやった!」

「へへ、私が炎弾を抑えるって二人に約束したからね!」


 俺が褒めた事が嬉しいのか、ロピは腰に手を置きドヤ顔する。


 だが、本当に凄い!


「まさか、迎撃出来るとはな……」

「ふふふ、遠距離最強は私だ!」

「あぁ! お前が最強だ!」

「あははははは──もっと褒めると良いよ!」

「ロピ最高!」

「「イェーイ!」」


 俺とロピはテンションが上がりハイタッチをする。


 すると、また赤い光が見えたのだ。


「また、来るぞ!」

「ふふふ、無駄な事を!」


 相手の攻撃を迎撃する為にロピもカウントを始めた。


「1……2……3……」


 ロピのカウントが進むに連れてバチバチと音が鳴り始める。


「よしよし、炎弾は何とか抑え込めそうかな──ッん?!」


 先程まで赤い光を放っていた筈なのに、いつの間にか黄色く燃え上がる炎になっていた。


「な、なんかヤバそうじゃないか……?」


 そして、黄色い炎を纏った大木がこちらに飛んでくる。


「4……5……フィンフショット!」

「アタック!」


 このままでは、何かが不味いと思い、俺はすかさず、ロピの雷弾に赤いラインを敷いてサポートする。


 雷弾と炎弾がぶつかり、先程よりも更に大きな音を立てて空中で爆発した。


「ふぅ……なんとか迎撃出来たか……」


 


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