第296話 マーズからの手紙
ニルトン達と戦った次の日に部屋をノックされる。
「どうぞー」
返事と共に入って来たのはシャレだった。
「アトス、昨日はお疲れ様──悪かったな」
少し申し訳無さそうな表情と共に部屋に入って来たシャレ。
「いや、気にするな──ああするしかあの場は収まらなかっただろうし」
ニルトン達と戦う事が正解だったかは分からないが、あのまま勝負をしなかったら更に状況は悪化していた場合があるからな。
「エルフ達を説得出来そうか?」
「出来る──してみせるとも!」
シャレは出来ると言い切る。
そして、シャレは思い出した様に話し始める。
「あぁ──そういえば今日来たのは昨日とは別でな」
何やら紙の様な物をシャレが俺に渡して来る。
「これは?」
「アトス宛の手紙だ──中身はまだ見てないが、マーズからだな」
「マーズ?」
何故、マーズから手紙が来るか疑問に思う。
「あぁ、何やら緊急らしくてな──村の入り口付近に人間族が居ると話を聞いて迎撃する為に慌てて確認しに行ったら、一人の人間族がその手紙をアトスと言う者に渡してくれと言って渡して来てな」
人間族がエルフ族の住処付近に来る事自体が略奪目的が殆どの為シャレ達は慌てただろうな……
「その人間族ってマーズだったのか?」
「いや、話を聞く限りマーズの部下の様だ──危なかったよ、私が止めないと殺されていたからな」
今は特に色々とエルフ族と人間族の間にしがらみがあるもんな……
「その人間族はどうしたんだ?」
「緊急って事らしいからな──手紙だけ貰って帰って頂いた」
ふぅ……シャレがその場に居なかったら、その人間族は……
俺はその先を考えるのをやめて手に持っている手紙に意識を向ける、
「それで、そのマーズの部下が持ってきた手紙って言うのがこれか?」
「あぁ」
「緊急ってなんだろ……」
俺は手紙の中身を開けてマーズから来た手紙を読むと、そこには驚く内容が書かれていた。
「──ッ!?」
手紙を読み進める程に俺の表情が険しくなっていくのが分かったシャレは恐る恐る手紙の内容を聞いてくる。
「ど、どうした? ──何かマーズにあったのか?」
人間族とは言えドワーフの村で一緒に戦った仲の為心配の様だ。
すると丁度ロピ達も起きてきた様で三人が俺の部屋に来た。
「お兄さん、大鎌さんおはようー! 今日も……どうかしたの?」
勢い良く部屋に入って来たロピだったが俺とシャレの雰囲気を察した様だ。
「丁度良かった──皆んなに話す事が出来たから聞いてくれ」
「アトス様、どうかされたのでしょうか?」
「ふむ。どうやら深刻な問題のようですな」
俺はまず皆に一言、マーズが送って来た手紙の内容を伝える。
「近々、人間族が戦争を起こすらしい」
「「「「──ッ!?」」」」
皆の表情が険しく変わる。
「どういう事でしょうか?」
「今日の朝、マーズの部下という者から緊急で手紙が届いた」
「手紙?」
「あぁ──そこには人間族が一年後に人間族以外の種族を奴隷にする為に戦争を起こすとマーズの手紙には書かれていた」
奴隷という言葉に皆が表情を歪ませる。
「この手紙では手始めに獣人族とエルフ族、ドワーフ族など住処が分かりやすい所が狙われるだろうとある」
「……確かに我々エルフ族は住処を移動したりしない……」
シャレが呟く。
「アトス様、獣人族は移動こそしますが人間族程では無いにしても母体数が多いので見つけやすいと思います」
獣人族の状況をチルが教えてくれる。
「ならドワーフさん達は、なんで狙われるの?」
「ドワーフ達は住処の移動はするが、移動する場所は決まって同じ場所だからな、比較的に狙い易い」
ドワーフの説明もしてくれるシャレ。
「マーズの方で確認出来た種族はその三種族だけらしいが、実際にはもっと狙われている種族があるだろうと書かれている」
一度に大量の情報を与えられて、俺も含めて、この場の全員が黙り込む。
「ど、どするのー?」
不安そうなロピの表情に俺はなんて応えれば良いか分からなかった。
「アトス殿──手紙には、何か指示みたいなのは書かれていたのですかな?」
「いや、ただ気を付けてくれとしか──恐らく危険が迫っている事を教えてくれただけだとは思うが、他にもドワーフのキルと獣人族達にも同じく手紙を寄越したと書いてある」
マーズは情報を手に入れて直ぐにこの手紙を書いたのだろう。
時々、字が崩れていたりする所を見ると、相当慌てていたのが分かる。
「た、大変だ……同胞を取り返すだけでは済まなくなって来たと言う事か」
ポツリと呟くシャレ
「こうしては、居られない──皆に今の事を話さないと!」
シャレは慌てて、部屋を飛び出していく。
そして、一瞬だけ部屋に沈黙が流れて、ロピが口を開けた。
「お兄さん、私達はこれからどうするー?」
「うーん、どうするか……」
俺が悩んでいると、チルが話しかけて来る。
「私はアトス様の判断に従います──もしアトス様が人間族と戦争をすると言えば全力で戦います」
「ほっほっほ。私もチル様の意見と同じですな──相手が誰であろうと我々家族の敵ならば戦うだけですな」
「わ、私もだよ! お兄さんの敵を私も倒す!」
そう言ってくれる三人に感謝をしながら、俺はどうするか考え始めるのだった……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます