第291話 エルフ達との戦い

 あれよあれよと、エルフ族代表と戦う事になった俺達。


「どうしてこうなった……」

「全部大鎌さんのせいだよ……」


 協力だけの筈が何故か実力を示すべくエルフと戦うとかおかしくねぇーか?!


「アトス様、ボコボコにしてやりましょう」

「ほっほっほ。勝負を挑んだ事を後悔させてやりましょう」


 俺とロピ──チルとリガスの温度差がとんでも無くある気がする……


「お兄さん、私戦いたく無い……」

「俺もだよ……」


 落ち込んでいると、シャレが近付いて来る。


「アトス、悪いな」

「「本当だよ!」」


 俺とロピは全力で言葉を放つが、当の本人は気にした様子も無く──


「ん? アトス達なら余裕だろ?」


 何か問題ありますか? と言わんばかりに首を傾げるシャレ。


 クソ……美人は何をしても様になるな……


 俺が黙っているとシャレが相手の情報を話してくれる。


「先程、アトスに勝負を吹っかけて来たものはエルトンだ」

「あの、イケメンの名前か?」

「イケメン? ──まぁ、イケメンかどうか知らないがそうだ。アイツは別の村の村長だが戦闘力はそこそこ高い」

「ほぅ……どれくらいですかな?」


 戦闘力という言葉に反応する様に先程まで身体を伸ばしていたチルとリガスが近付いて来る。


「私と同じか、それ以上だな」


 シャレ以上と言ったら、相当だな……


「他の四人もエルトン程では無いにしても相当なやり手だ」

「なんで、俺達がそんな奴らと戦わないといけないんだよ……」

「腕がなります……」

「ほっほっほ。病み上がりには丁度良さそうですな」


 チルとリガスの言葉に頷く様にシャレも言う。


「まぁ、二人の言う通りアトス達なら余裕だろうから、手早く済ましてくれ」


 一体シャレはどれくらい俺を過剰評価しているんだ……?

 ロピ、チル、リガスに対してなら分かるが、俺は全然強く無いんだぞ……?


「シャレ……俺は別にこの三人より──」


 シャレに対して弁明しようとすると、またもやエルトンが俺に向かって凄い形相で睨み付けているのに気がつく。


 こ、こぇーよ……


「お、おいロピ」

「なに?」

「あのエルトンとか言う騎士が俺の事を凄い睨んでて怖いんだが……」

「お兄さん! ──ここで舐められていたらダメだよ! ここは睨み返そう!」

「そ、そうか?」

「そうだよ!」


 た、確かに──勝負が避けられない以上、ここで舐められるのもダメだよな。


「わ、分かった」

「相手を睨み殺す程でいけー!」


 ロピの掛け声と共に俺は自分の中で精一杯怖い表情を作り睨み付ける。


「キッ!」


 すると、ニルトンは更に表情を険しくして睨み返して来た。


「お、おいロピ──向こう……更に怖い表情で睨み返して来たぞ……?」

「こうなれば、実際の戦いで決着付けるしか無いよ!」

「お前、さっきまであんなに嫌がってたのに……」

「あはは……、もう諦めただけだよ」


 ロピを見ると乾いた笑いで目の奥が死んでいた……


「でも──勝負するなら絶対勝つ!」


 ロピの目に力が宿る。


「姉さん、やっとやる気出してくれたんだね」

「うん!」

「ほっほっほ。これで更に圧勝出来ますな」

「私は遠距離最強の女になる!」

「姉さん素敵」


 何やらロピの中でスイッチが入った様でロピは装備の具合を確かめている。


「さぁ、そろそろ始めるぞ、人間族よ」


 騎士の様な鎧を来たニルトンが声を掛けて来る。


「死ぬ前に聞きたい──人間族よシャレさんとはどういう仲だ?」


 真剣な眼差しで俺を見て来るニルトン。


 どんな仲って言われても友達……だよな?


 俺が口を開き掛ける前にロピが応える。


「一つ屋根の下で暮らしているよー」

「──なっ!?」


 ロピの言葉に目を見開くニルトン。


「こ、こんな奴が……シャレさんと……」


 何やら盛大に勘違いしている様子のニルトンに弁明しようとするが……


「やはりここで殺すしか無い様だ……」


 何やらブツブツと、とんでもない事を呟いているニルトン。


「人間族よ、お前は必ずこの私が仕留める」


 有無を言わさず仲間の元に戻ったニルトンの背を見ながら俺はため息を吐く。


「はぁ……これからどうなるんだ?」


 俺とニルトンのやり取り後、俺達は勝負する為に広場に移動する。


「今回は他のエルフ達にもアトス達の実力を知って貰う為に障害物が一切無い広場で勝負して貰う!」


 そう言って、戦場に選ばれた場所は周りの木々を全て切り取った場所であり一切の障害物が無い場所であった。


「ふむ。何も無くてロピ殿に取っては最高ですな」

「そうだねー! どこからでも狙えそうだよ!」

「姉さん、私達の力を見せ付けてアトス様がどれ程偉大が証明しようね」

「あはは、そうだね! ボコボコにしてお兄さんの偉大さをアピールだ!」

「ほっほっほ。お手伝い致します」


 既に三人はやる気満々で、俺だけが気乗りしない状態だ。


「では両者準備は良いか?」


 シャレの言葉に俺達は敵側のエルフ四人と十メートル程の距離を開けて対峙している。


「私はいつでも大丈夫です」


 シャレの言葉にニルトンが応える。そしてシャレは俺の方を見る。


「アトスの方は準備いいか?」


 全然良くねぇーよ! と思いつつ頭を縦に動かす。


「それでは始め!」


 こうして、急ではあるがエルフ代表と勝負が始まった……

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