第227話 アトスの最後……?
「先読みですか……?」
「あぁ。モンスターの動きを読む」
俺が何を言っているのか、分からない様子のマーズである。
そんなマーズに説明している暇も無い為、中型に視線を向ける。
「集中……集中……」
俺は、少しの動きも見逃さない様に中型を観察する。
そして、中型が再び重心を落とすのが見えた。
来る!
「ガード!!」
スキルを発動した事により防御担当の下に青ラインを敷く。
その瞬間……目の前には中型が居た。
防御担当を見ると、なんとか受けきれてはいる。
「アームズ……」
「3……4………5 フィンフショット!」
「オラッ!」
「オイラの毒をくらいな!」
「ワシの全力ジャ!」
「……」
続いて攻撃担当が中型に向けて総攻撃を仕掛ける。
「アタック!」
それぞれの足元に赤ラインを敷き攻撃力を高めた。
「全然効いてない……」
マーズが言う様に中型達は傷一つ付いていなかった……
「あーん、全然効いてないよー!?」
「姉さん、諦めないで!」
「クソ……傷一つ付いてねぇ」
「傷口が無いとオイラの毒が効かない」
「中型が成長すると、ここまで強くなるんじゃな……」
「次が来るぞ!」
攻撃担当達が、中型に対して全く攻撃が効かない事に嘆くが、中型は攻撃を待ってくれなかった。
尻尾による攻撃が防御担当を襲う。
もちろん、先読みをしてスキルを付与したが、流石に中型の攻撃を連続で受けきる事は出来なかった……
「グッ……」
防御担当が後ろに飛ばされた事により、攻撃担当と俺達の前は何一つ壁は無い。
俺達の攻撃が一切効かない事が分かったからなのか、中型はゆっくりと俺達に近付いて来る。
そして、俺達の前で一度止まる。
暫く俺達の事を観察した後に何やら奇声を発した。
その奇声は小型達に指示するような感じとは少し違う様に思えた。
「……も、もしかして私達に向かって話しているのでしょうか……?」
マーズは恐る恐る呟く。
「さ、流石にそれは無いだろ……」
否定をしつつも、マーズが言う様に中型は俺達の方を向いて何やら話し掛ける様に奇声を発している。
「か、仮に俺達に話し掛けているとしても、何を言っているか分からないぞ……」
中型は暫くの間、俺達に話し掛けている様子であったが、話が通じて無い事に気が付いたのか、奇声を止めた。
そして、俺達に向かって尻尾によるなぎ払いの様に攻撃を始めた。
その攻撃自体も早過ぎる為反応出来たのはリガスだけであった。
「カネル!」
一度目の攻撃を防ぐが、直ぐに次の攻撃をする中型にリガスは吹き飛ばされる。
「グッ……」
「リガス!?」
「魔族さん!」
チルとロピがリガスに駆け寄る。
「ほっほっほ。流石に中型の攻撃は堪えますな……」
珍しく顔を歪めるリガスを心配するロピとチル。
「魔族さん、大丈夫?!」
「リガス、怪我は無い!?」
「ほっほっほ。この程度なんともありません」
直ぐに笑顔を浮かべて二人を心配させない様にと表情を作るが、相当な威力だったのか、リガスは未だに立ち上がれずに地面に膝を着いたままである。
そして、中型の一体がリガス達の方に向かう。
「お二人共私の事はいいですから逃げなさい!」
リガスは中型が近付いて来るのを見て二人に移動する様に言う。
「家族を置いていくなんて有り得ないよ!」
「姉さんの言う通り!」
二人の行動を見た瞬間に俺は身体が動く。
「ア、アトスさん!」
マーズが止めようとするが俺は静止を振り払い、三人がいる所に全力で走る。
ロピとチルがリガスの前に立ち、まるでリガスを守る様に中型の前に立ちはだかる。
「二人共、やめなさい!!」
リガスが必死になり叫ぶがロピとチルは聞く耳を持たない。
「アームズ……」
「1……2……3……」
中型は二人が攻撃の構えを取るのを見ても、気にした様子も無く大きな口を開けて捕食しようとする。
「クッ、動かん!!」
リガスは必死に身体を動かそうとするが、やはり成長した中型の攻撃を直撃した影響で未だに立ち上がれない様だ。
──ッ絶対守る!
「ロピ、チル、リガス!!」
俺の声に三人が反応する。
「オラッ!!」
俺は腰にぶら下げていた調理用のナイフを取り出し中型に飛び掛かる。
そしてモンスターの部位の中で柔らかそうな目に突き刺すが、一瞬でナイフが折れた。
「──ッ諦めるかよ!!」
無駄な事かもしれないが、俺は必死に中型の目の部分を殴ったり蹴ったりした。
すると、流石に気が散るのか三人に向かって動かしていた口を止めて、俺を振り解こうと頭を揺さぶる。
「は、離さないぞ……」
必死に中型にしがみ付くが、元々腕力など無い為直ぐに中型から落ちてしまった。
俺が顔から離れた事を確認し、再び三人を捕食する為口を開ける。
クソ……俺の攻撃じゃ全然効かない!
何か良い手が無いか考える暇も無く、とにかく俺は三人の所に走る。
そして、中型が三人を丸呑みにしようとした瞬間、俺は何も考えず飛び込む様にして三人を全力で突き飛ばした。
「キャ!?」
「ムッ!?」
「アトス殿?!」
ロピとチル、リガスを突き飛ばした事により中型の大きな口の範囲外に移動させる事が出来た俺は一安心する。
だが、その代わりに俺が中型の大きな口の範囲内に移動してしまった……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます