第221話 ドワーフ族の頼み

「ら、雷弾よ……頼みがあるのじゃが……」


 俺達三班に声を掛けて来たのは、ドワーフ族のリーダーであるキルであった。


 キル達を見ると最初に居た人数よりも大分少なくなっているのが分かる。


「モジャモジャさん、なーに?」

「無理なお願いだと言うのは分かるが、ワシらも、その陣の中で一緒に戦わせてはくれないかのぅ?」


「私達と一緒に戦いたいって事ー?」

「う、うむ。どうか頼む!」


 そう言うと、自分よりも圧倒的に年下であるロピに向かってキルは頭を下げる。他のドワーフ達もキル同様に頭を深々と下げている。


 ドワーフ達の姿を見ると、全員ボロボロであり、負傷している者も何人もおり満身創痍な状況である。


「ふ、ふざけんじゃねぇーよ!!」


 ドワーフ達が頭を下げた瞬間に、三班の誰かが声を荒らげて怒り出す。


「お前らは、俺ら三班を見捨てた所か囮にしやがっただろ?!」

「そうだそうだ! 俺らがどれ程辛い思いをしてここまで生き残ったか分かるか?!」


 三班の怒りはもっともである。俺も少なからず憤りを覚えてはいるが、それはドワーフ達がやった事では無く、リンクスと副官がやった事である。

 恐らく今、声を荒らげてドワーフに文句を言っている奴もそれは分かっているのだろう。


 だけど、やはり怒りが湧いてくるのは仕方が無い事だと思う……


「お前ら虫が良すぎるんだよ!」

「そうだ! ピンチになって自分達ではどうにもならなかったら、俺達に助けを求めるなんておかしいだろ!? お前らは俺達を囮にしたんだろ!?」


 一度、文句を言い出し、火がついた様に次々三班から罵声を浴びせられるドワーフ達だが、誰一人言い返さずに頭を下げ続けていた。


 それから、ロピが俺の方に視線を移し聞いてくる。


「お兄さん、どうするー?」


 多少なりとも、思う所はあるがドワーフ達が考えた事では無いし、戦闘員は多い程生き残れるよな……


 俺はロピに対して頭を縦に振る。


「お、おいアトス! 本気か!?」

「コイツらは俺達を囮にしたんだぜ?」

「気持ちは分かるが、恐らく囮にしたのはリンクスと副官であって、ドワーフ達は関係無いだろ」

「知ってて、従った時点で同罪だ!」


 やはり、なかなか認めようとはしない三班達だったが、何人かが冷静になりフィールが俺に聞いてくる。


「アトス、何かドワーフ達を陣に入れる意味があるのか?」

「あぁ。確かに俺も思う所はあるが、俺達の目的はあくまで三班全員で帰る事だよな?」


 三班が頷く。


「なら、少しでも生き残る確率を上げるべきだと思う」

「それが、ドワーフ達を入れる事によって確率が上がるのか?」

「あぁ。周りを見れば分かると思うが、そろそろ俺達以外は全滅するだろう」


 周囲を見渡すと、だいぶ人数も減り、殆どが中型の腹に収まっているか、小型達に捕まり捕食待ち状態である。


 すると、何人かが俺の意見に賛同を示す。


「俺は、アトスに賛成だ。誰を仲間に引き込もうが生き残れるならするべきだ」

「俺もだ。コイツらドワーフを信じる事は出来ねぇーけど、アトスの事は信じられるぜ!」

「そうだ! お前らも家族に会いたかったらアトスの事信じてればいいんだよ!」


 それは、俺が助けた三人であった。そして、三人の意見をきっかけに次々に賛成の声が上がった。


「ほっほっほ。初めの頃と比べたらアトス殿に対しての態度が皆さん随分と変わりましたな」

「うん。遅いくらい……でも、アトス様の良さを分かってくれて嬉しい」


 こうして、三班全員がドワーフ達を仲間に入れる事を許可した。


「よーし! ならドワーフさん達を仲間に入れてあげよー!!」

「あ、ありがたい……」


 ロピの言葉にドワーフ達はより一層頭を深く下げてから頭を上げる。


「ただーし! 私から一つ条件があるけどいい?」

「なんでも言ってくれ。ワシらに出来る事であれば何でもする」

「うんうん。良い心がけだね!」


 ロピは腕を組み、頭を何度か上下に振る。


「今から、ドワーフの村に帰るまでお兄さんの言う事をちゃんと聞く事!」


 ロピの指した先を見たドワーフ達の視線は俺に留まる。


「うむ。陣に入れてくれるなら、従おう」

「なら、私達の仲間に入って良いよー」

「有難い……感謝する」


 直ぐに陣形を組み直したマーズはドワーフ達に素早く動き方を説明する。


「ぼ、防御は三人一組で交代は無しなのか!?」


 どうやら、小型の防御を普通は三人一組で行うが基本連続で攻撃を受けるのは難しい為、ドワーフのキルは相当驚いている様だ。


「えぇ。防御の交換は基本無しです」

「それじゃ、直ぐに攻撃を受けた時の衝撃で戦えなくなるぞい?!」

「普通はそうだと思いますが、私達の班にはアトスさんがいますので」


 マーズの言葉にまた、ドワーフ達が俺に視線を移す。

 ドワーフ達の視線は、またコイツかよ……? と不思議そうな表情をしていた。


 まぁそうだよな……俺の二つ名はよくわからない奴だもんな……


 戦闘には慣れているのか、マーズの伝えた事を直ぐに理解してドワーフを組み込んだ陣形を築き小型達を待ち受ける。


「さて、これからは、どんどん俺達に向かって来るぞ……」


 小型達も餌である人間達が大分少なくなり俺達三班に視線を向けている小型が、殆どである。

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