第214話 皆んなと再会

「はぁはぁ……しつこいな……」


 後ろを振り向くと中型二体を先頭にモンスターの大群が俺の事を追ってきている。


 かなりの時間、モンスター達を惹きつけているが、やはり無尽蔵の体力を持つモンスターと人間である俺とでは体力に差があり過ぎる為、今では十メートルも間は無いくらいには距離を詰められている。


「マーズから貰った例の玉の効力スゲェーな」


 あの玉を自分に振りまいてからと言うものの、全モンスターが理性を失った様に俺に向かって来た。


「けど、そろそろ効力が切れて来たか?」


 最初の頃と比べて、モンスター達は徐々に自我を取り戻して来たのか、今では隊列を組んで俺の事を追い掛けて来た。


「……ん?」


 何かを感じたので周囲を見回すが、特に変わった所は無い。気にせず走り続けていると、茂みの中からいきなりロピが現れた。


「良かったー、お兄さん無事だったんだね!!」

「ロピが居るって事は変異体を?」

「うん! お兄さんのお陰であの三人も無事だよ!」


 あの三人は無事か……良かった……


「少し後ろにチルちゃん達も居るから、後は少しずつ皆んながこっちに来ると思う」


 ロピの言葉を聞いてから次々と三班が集まって来る。


「アトス様、ご無事で良かったです」

「ほっほっほ。やはり無事でしたか」

「チル、リガスも無事で良かった」


 続いて、マーズとフィール、トインが姿を表す。


「アトスさん、本当に良かった」

「お前、カッコつけすぎだろ!」

「でも、カッコ良かった!」

「あはは、皆んな無事だな」


 そして、俺が助けた三人が追い付く。


「アトス! 本当に良かった……」

「お前のお陰で俺達、まだ生きているぜ!!」

「もう、絶対に諦めねぇから安心してくれ」


 遂に、三班全員が再び集結した。


「では、皆さん此処からは更に大変な状況になる事が考えられますので、気をつけて下さい!」


 マーズの言葉通り、俺達の後ろにはモンスターの大群が居て、そして、近くには変異体の姿まである。


「このまま、やりあって欲しいもんだな……」

「えぇ。それが理想ですね……中型達と変異体が争っている間に逃げ出せればいいのですが」


 俺の呟きにマーズが返答するが、俺達の考え方は、どうやら甘かったらしい……


「!? おい、アトス、マーズ!」


 斥候がいきなり叫び出す。


「他の場所からモンスター達の気配がするぞ!?」

「まさか!?」


 斥候の言葉にマーズまでが反応する。

 気配を読む事に慣れている二人は近くからモンスターの気配を感じた様だ。


「アトスさん、どうやらモンスター達に先回りされた様です……」


 先回りだと!? 俺達の行動を先読みしていたってことか……?


「ふむ。やはり知能を持ったモンスターは厄介ですな」

「本当に人間を相手にしているみたいです」

「そ、そんな事よりどうするのー!?」


 ロピの言う通り、早く何か次の手を考えないとモンスター達に囲まれてしまう。


「折角ここまで頑張ったのにオイラ達死んじゃうのか……?」

「弱音吐いてんじゃねぇーよ!」

「で、でもどうすればいいんだよ……」


 そして、俺達がどうすれば良いか考えている間にモンスター達が現れた。


 数が相当いる為、さっきみたいな俺のスキルを使用しての突破は無理そうだ。仮に出来たとしても半分以上が犠牲になるな……


「ここまでですかね……」


 マーズがボソリと呟くが他の者はそれどころじゃ無い程慌てている。


 俺達は走るのを辞めると、中型達も直ぐには襲い掛かっては来なかった。


「ん? なんで襲って来ないんだ?」


 モンスター達は止まった後に、俺達人間の方を向いて無かった。


「もしかして……」

「ふむ。それしか有りませんな」

「私達の作戦成功?!」


 そう、モンスター達は変異体が現れた事で、変異体の対応を余儀なくされているのか、俺達に構っている暇が無い様だ。


「よし、これなら……まだ希望はある」


 先程まで思考停止していたマーズだったが、糸口を見つけた瞬間、直ぐに動き出す。


「皆さん! 変異体の方に突っ込みます!!」


 マーズの言葉に誰もが驚く。


 それは、そうだろ。


 まず、俺を追って来た大量のモンスター達。

 そして、中型の指示によるものなのか、先回りして俺達の逃げ道を塞いでいる別部隊のモンスター達。


 更には変異体の姿もあり、マーズはその変異体に向かって走れと言っているのだ……


「おいおい……あの中を更に変異体に向かってか?」

「そうです。それしか道はありませんよ?」

「こ、ここは変異体と逆に向かった方がいいんじゃ無いか?」


 三班全員が振り向くと、確かに変異体の方に向かうよりも、変異体と逆の方に向かって逃げる方が明らかにモンスターの数が少ない。


「いえ、それでは先程と同じ結果になって体力切れで私達が捕食されるだけです」

「で、でもよ……変異体に向かって行く理由はなんだよ?」

「一度、混戦させて本格的に戦わせます」

「どう言う意味だ?」

「今見ている様子だと、中型と変異体は話し合っている様に見えます」


 確かに、いつまで経っても変異体と中型達は戦闘する気配が見えない。


「このまま、話し合いの結果、我々を分け合うとかになれば、それこそ逃げ場が無くなり、捕食されるだけです! なので、敢えて前に突き進み、私達と言う餌を見せつけて争わせます」


 マーズの言葉には説得力があった。今回の遠征に参加して無い者が聞けば、マーズの言い分は妄言と吐き捨てられるだろう。

 しかし、俺達はこの遠征でモンスター達に知識がある事を知っているし、モンスター同士が会話している事も知っている……


「マーズ、勝算はあるのか?」

「それが、三班全員が最も生き残れる作戦かと……」


 フィールの問いにマーズが語り掛ける。


「ほっほっほ。私はマーズさんの意見に賛成ですな」

「私も!」

「私もです」


 リガス、ロピ、チルが賛同する。


「はは、確かにな。俺も賛成だ一人だけ生き残っても意味無いしな。生き残るなら三班全員でだ!」


 俺の言葉が引き金になった様に全員が賛同する。


「それでは、皆さんしっかりとついて来て下さいね。死ぬ事は許しませんよ?」


 こうして、俺達は中型と変異体がいる方に走り出す……

 

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