第200話 モンスターに追われる

「ん、なんだ?」


 何かの気配を感じて俺は目が覚めた……

 隣を見ていると、既にリガスとチルは起きていた。


「アトス様、何か感じます」

「俺も何か感じて目が覚めたけど、原因は?」

「ふむ、分かりませぬ……」


 リガスは周囲をゆっくりと見回している。


 なんだか、嫌な予感がするな……


「チル、念のためロピを起こしてくれ」

「分かりました」


 チルは直ぐ様、気持ち良さそうに寝ているロピを起こしに行く。


「リガス、モンスターか?」

「恐らくは……」


 ロピも起き出したので、俺達は万が一に備えて戦闘準備を整えて見張り台に向かう。


「お兄さん、どうかしたの?」

「いや、何か嫌な予感がするんだ」

「嫌な予感?」

「あぁ。それが何なのかは分からないが、準備するのに越した事は無い」

「アトス様の言う通りです、事前に準備しておくのは大切です」


 そして、見張り台に着くと、既にマーズが居て、他の者達も次々と集まって来る。


「マーズ、何か変わった事は無いか?」

「アトスさん、丁度呼びに行こうと思っていました」

「何か、嫌な予感がしてな」


 俺の言葉にマーズが少し驚く。


「アトスさんもでしたか。実は私も何かを感じて起きたのですが、周囲を見渡しても特に異常が無いんですよね……」


 見張り台から見える範囲に何か変わった様子は無く。モンスターも特に見つけられない。


「ふむ。何かが居る気配はしますな」


 リガスの言葉を聞いて全員があちこち様子を窺うが、やはり見つける事が出来ず、辺りは真っ暗で静まり返っていた。


「な、何も居ないよな……?」


 誰かが、ボソリと呟いた瞬間だった……


「!?」


 いきなりモンスターの気配を感じる。


「皆さん、モンスターです!!」


 本当にいきなりであった。今までは言い様の無い気配を感じていたが、今ではハッキリとモンスターの気配をあちこちに感じる。


 三班全員で、モンスターをやり過ごす為、いつもの様に気配を出来る限り消す。


「お、おい。なんで今日に限ってモンスターの気配を察知出来なかったんだよ!」


 フィールが慌てながら、マーズに質問する。


「分かりません……。今までは近づいて来る気配は感じ取れましたが、今回は全く分かりませんでした……」


 大木の下を見ると、中型を中心に小型達が大木を、囲む様に動いているのが見える。


「な、なぁ。なんかこの大木を囲んで無いか?」

「もしかして、俺達の事気付いているんじゃないか?」


 確かに、見ると何故かこの大木を囲む様に小型達が動いている様に見える……


「ま、まさか……」


 その時、マーズが何かに気付く様な感じで周囲を見渡す。


「し、信じられない……」

「おい、一人で納得してないで説明しろ!!」


 フィールを始め、三班全員がマーズが何に気付いたか知りたい様だ。


「恐らく……モンスター達は私達の事に気付いています」

「ふむ。私もそう思いますな」

「その上で、更に私達が逃げられない様に周囲を固めています」


 俺達の逃げ場を無くしているだと!?


「皆さん! 決行時間変更です!」


 既にモンスター達にバレているので、マーズは大声で指示を出す。


「これから、脱出します!」 


 いきなりの事で、動揺しつつも事前に決めていた事なので、素早く行動する。

 その間にモンスター達は常に何かをする様な動きで大木の周りに集まる。


「や、やばいぞ!」


 掛け声の方に向くと、なんと脱出しようと決めていた木がモンスター達によって、どんどん倒されて行く。


「お、お兄さん、私達が向かう方向の木がどんどん倒されて行くよ!?」


 俺達が木の上を移動する事が分かって、木を倒しているのか!?


「アトス殿! この調子では周りの木を全て倒されて逃げ場が無くなりますぞ!」


 普段からおだやかな口調で話すリガスが、今回に限って、とても声を荒らげて伝えて来る。


「マーズ、どうする!」

「……」


 険しい表情を浮かべながら最善の手を考えているマーズ。


「皆さん! 移動する方向を変更します!!」

「大丈夫なのか?」

「ドワーフの村までの木が倒されてしまった以上、逆方向に逃げるしかありません!」


 急遽方向を変更し、俺達はモンスター達が蔓延るジャングルを更に奥へと進む事になった……いや、仕向けられたのか?


「おいおい……これすらもモンスター達の考えての行動とか言わないよな……?」


 木を移動しながら、誰かが呟くが、その答えを知っている者は誰一人居ない。


「マーズ、このまま奥に向かったらリンクス達と合流出来なくなるぞ!?」

「おっしゃる通りですが、今は移動しないと、逃げ道すら無くなってしまいます」


 俺達は木から木へと移動をするが、やはり慣れて無い為直ぐ真下にモンスター達が追って来て、時折体当たりをして木を揺らしたり倒したりして来る。


「完全に、俺達を何処かに向かわせようとしている動きだな」

「ふむ。恐らくアトス殿の考え方で合ってますな。モンスター達は我々をどこかに誘導しておりますな」


 だが、誘導されていると分かっていても俺達にはどうする事も出来ずに、ひたすら木の上を移動してモンスター達から逃げ続けるのであった……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る