第197話 中型達の行動 2

 夜に中型達が現れた日から、毎日モンスター達が夜になると現れる様になった。


「ッチ、今日も来やがった……」

「マーズとアトスの事起こすか?」

「今はマーズだけでいい、頼む」

「分かった」


 中型達は決まって、大木付近で止まり何かを探す様に夜明けまで居続ける。


「また、現れたと聞きました」

「おう、昨日も来たし、これで三日連続だぜ?」

「……何か目的があるのでしょうか?」


 マーズは注意深く観察していると、アトスも起き出して来た様だ。





「また、現れたのか?」

「その様です……」


 クソ、これで三日連続の出現かよ……


「中型達の様子はいつもと同じなのか?」

「えぇ。まるで何かを探している様に居続けていますね」


 一体何を探しているんだ……?

 そもそも、何で最近になってから現れ始めた?


「おい、また来たって聞いたぞ?」

「オイラ小心者で、こんなにモンスターが居る所じゃ寝てられねぇーよ……」


 フィールとトインまでもが起き出して来て見張り台に集まってくる。

 周囲を見渡すと三班全員起きている様だな。


 いや、一人だけ寝ている者が居るが、俺達の中で唯一中型や変異体に対抗出来る人物なので寝かせとくか。


「うにゅうにゅ、えへへ、おいしい物が沢山あるよ……」


 どこからか、聞いた事のある寝言が聞こえる。

 よく、この状況で寝られるな……


「このままだと不味いな」


 俺は頭を切り替えてモンスター達の様子を窺う。


「こう、毎日だと休まりませんね」


 ここ三日間は中型達の影響で殆どの者が睡眠に支障をきたしている。


「この際、住処を変えるか?」

「オイラもそっちの方が良いと思うぜ?」


 三班の視線がマーズに集まる。


「いや、ダメですね……」

「な、なんでだよ?」

「この様な大きい木が他に見付かれば良いですが、ここから見渡す限りこの木より大きいのが見つかりません」


 確かに、ここより高い木は見当たらないが理由はなんだ?


「なんで、大きい木じゃねぇーとダメなんだ? 分散して複数の木に作れば人数的にも問題無いだろう」


 フィールの考えに誰もが頷く。木が高ければ見張りをする際に遠くまで見渡せるが、こんな状況が続くならば住処を変えるのは良い案に思えるが……


「ただ、住むだけならフィールさんの案で問題はありません。しかし、モンスターが居た場合は話が別です」

「どういう事だ?」

「そこら辺の木ですとモンスターの攻撃に耐え切れないからです。もし仮にモンスターに気付かれても、この大木なら他の木に比べて丈夫ですので大丈夫でしょう」


 なるほど……留まる理由はそこまで考えての事なのか。


「だけどよ、流石に毎日こんな感じだと寝れねぇーぞ?」

「オイラなんて、あの変異体が現れてから少しの物音で起きちゃうぜ」


 皆が物音や気配に敏感になり疲れが取れていない様だ。


「そもそも、なんでモンスターがここらに、いきなり集まる様になったか分からないと住処変えても同じ事が起きたらまた変えないといけなくなるだけだろ」

「アトスさんの言う通りですね」


 それからは、三班全員で何故モンスターが集まってくるか考えるが、誰一人として予想が付かない展開の為分からないで居た。

 その内、太陽が登って来て辺りを明るく照らし始めた。


「おいおい、もう朝になっちまったぞ?」

「オイラ、今頃眠気が……」


 朝日が登ると、今まで大木の周囲に集まって居たモンスター達は、水場の方に向かって去っていくのが見える。


 すると、モンスターが去ったタイミングでロピ達がやって来る。


「ふわぁー、お兄さんおはよー」


 眠い目を擦り挨拶して来るロピ。


「アトス様、おはようございます」

「ふむ。気配で分かっていましたが、また出ましたかな?」

「あぁ、日が昇り始めたら水場の方向に向かって去っていった」


 やはり、チルとリガスは起きていた様だな。


「ふぁー、出たって何が出たのー?」


 大きな欠伸をしながら質問する、ロピに三班全員が少し驚く。恐らく、あちこちにモンスターの気配があった筈なのに熟睡していたロピに驚いているのだろう。


「姉さん、気付かなかったの?」

「何が?」

「ほっほっほ。ロピ殿はやはり大物の様ですな」

「えぇ。あの環境で寝られるのは凄いですね……」


 マーズまで感心していた。


「姉さん、昨夜と今朝にも中型達が出たんだよ?」

「え……? 本当?」


 ロピ以外の全員が首を縦に振る。それを見たロピは、流石に恥ずかしかったのか、顔を赤くしながら笑って誤魔化した。


「あ、あはは。それで皆んなは何をしていたの?」

「いや、どうしてここ最近モンスターが毎日夜になると来るか考えていたんだよ」


 モンスターの考えなんて分かるはずも無いが、皆んな必死に考えていた。餌を探しにだとか、散歩だとか色々な意見が出たが、どれも違うだろうと意見が出た。


「なんだ、そんな事で悩んでいたの?」

「そんな事と言っても、それが分かれば対策が取れるんだよ」

「え? 皆んな分からないの?」

「その言い方からすると、ロピは理由分かるのか?」

「うん」


 何の躊躇いもなく頷くロピに全員の視線が集中する。


「強くなる為に私達を探しているんだよ?」


 初め、ロピの言葉を理解出来る者は居なかった……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る