第194話 変異体VS中型 2
「おいおい、なんかいきなり、おっぱじめやがったぞ!?」
中型二体が変異体に対して尻尾による攻撃を始める。その叩きつける音はとんでも無い程鈍く身体の芯に到着するくらいの揺れが起きる。
「あんな攻撃が直撃したのに効いてない……」
中型二体による、挟み込む様な尻尾攻撃が直撃した筈なのに変異体は傷一つ付いていなかった。
「おいおい、中型二体って人間族の砦を壊す程の威力があるんだぞ!?」
「アトス様、変異体にダメージは無いようです」
中型二体は変異体に攻撃が効いてないと悟ると、距離を取る様に離れた。
「ふむ。どうやらこの中型達も頭を使って戦闘するタイプですな」
「前に戦った時と同じタイプのモンスターって事?」
「恐らくは、そうだと思われます」
「非常に厄介……」
距離を取った中型は、人間で言う所の叫び声みたいな音を周囲に響き渡らせた途端に周りで待機していた小型達が一斉に変異体に向かって攻撃を開始した。
「やっぱり、あの小型達は中型に従っていたのか」
「どうやら、その様ですな」
「こんなに綺麗に統率されているなんて思って無かったです」
次々と変異体に突っ込んでいく小型達を見て、初めて変異体が攻撃のモーションに入る。
一度自身の身体を小刻みに振るわせたかと思うと身体中にビッシリと生えているトゲを前方に向かって飛ばしたのである。
「「え、遠距離攻撃!?」」
変異体の攻撃を見て、ロピと遠距離担当の二人が驚いている。
変異体の飛ばしたトゲは次々と小型達に突き刺さっていく。そして驚いたのは、その威力である。
「小型の外装を一撃で突き破っています……」
普段小型の外装に攻撃しているチルはどれくらい小型の外装が硬いかよく知っている。だからこそ変異体のトゲが、いとも容易く突き刺さっている事に驚いているようだ。
変異体の遠距離攻撃を食らった小型達は満身創痍状態で生きては居るが、殆どが動けないでいた。だが小型の数はまだまだいる為に、どんどんと小型の集団と変異体の距離は縮まっていく。
「強い……」
俺は目の前の光景を見て呟く。
そして、小型達がとうとう変異体に到達すると、変異体も尻尾による攻撃で小型達を薙ぎ払うように振るう。
ここで、更に変異体の凄さを目の当たりにした。変異体の尻尾による攻撃モーションは先程の中型と同じだが、威力、スピードが段違いだった。
小型達複数体を巻き込みながら軽々と吹き飛ばしたのである。
「強いですな……」
続いて、リガスまでもが変異体の強さに声が漏れる。
「もしかして、二種はこのジャングルで前から争っているのかなー?」
「雷弾の考え方は合ってそうだな」
「私も姉さんの意見が合ってそうな気がします」
確かに、そう見える。中型二体が小型達を従えて、ここら周辺のジャングルを守っていて、変異体がそれに対して何か不都合な事をしているから、争っている様にも見える。
「ッチ、この騒ぎに乗じて逃げ出したいが、無理そうだな」
斥候は辺りを見回すが、モンスターだらけである。一度俺達を認識したら一斉に襲い掛かってきそうだ。
それからは、変異体の攻撃パターンが確立された。
まず尻尾により距離を詰めて来た小型達を複数巻き込みながら吹き飛ばし距離を空けて、その次に遠距離攻撃で次々と狙い撃ちをして倒していく。
「変異体強すぎじゃない……?」
「あ、あぁ」
疲れ知らずのモンスターの為、小型達はどんどんと地面に横たわっていく。特にトドメを刺さないので、その場で動けないけど息があるモンスターばかりである。
「パワーバランスが一体だけおかしいな」
俺達からしたら、小型とは言え行動不能な個体が増えれば増えるほど逃げ易くなるので、有り難いが逆に変異体にもし目を付けられたら厄介だな……
俺達はこのまま、小型の数が減る事を待っていたが、再び中型二体が叫ぶ様な音を立てると次は一斉に小型達が変異体から逃げ出す様に背中を見せて走り去っていく。それは中型二体も同じでジャングルの奥に走り去る。
「ふむ。どうやら中型の方は撤退命令を出したらしいですな」
統率の取れた動きでモンスター達は逃げるが、変異体は背を向けて逃げ出す中型に目掛けてトゲを飛ばすが、中型を守る様にトゲの射線上に小型が入り込む。
トゲを食らった小型はもちろんその場で動けなくなるが、中型二体は変異体の攻撃範囲外まで移動出来たらしく、変異体は追うのを諦めた。
それからは、変異体が静かになった水場で水分補給の為か暫く水に顔を入れ飲み、身体を休めた後にユックリとジャングルの奥へと移動していった。
「も、もう大丈夫だ」
斥候は周囲にモンスターが居ないか確認した後に木を降りた。
「大丈夫そうだ」
周囲の気配を探り問題無い為木から降りた。
「まさか、中型と変異体が争っているなんて、思わなかったです」
「あぁ。しかも強さが段違いだったな……」
「変異体は倒さず見るだけが一番ですな」
それから俺達は今見た情報を少しでも早く共有する為に住処に戻る為に移動を始めた。
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