第164話 募集

 ドワーフの村に戻った俺達は頼まれた小型の素材を渡しに向かった。


「おいおい、もう小型を倒して来たのかよ……」

「私達に掛かれば余裕だよ!」


 現在武器が壊れてしまいロピは戦闘に一切参加して無かったが……。


 まぁいいか。


「さすが雷弾だな。やっぱり一発で倒しちまったのか?」

「も、もちろんだよ」


 ロピは途端に目がキョロキョロと動き俺の後ろに隠れる様に移動した。


「それじゃ、これは依頼料だ」

「確かに頂いた」

「また、頼む」

「あぁ。その時は声を掛けてくれ」


 俺達は店を出て戻る事にする。


「お兄さん、今日はもう帰るだけ?」

「時間的に微妙だがやる事もないしな」

「では、狩りにでも行って今晩は鍋にしますかな?」

「「「賛成!」」」


 リガス以外の三人が賛同し、今日はリガス特製鍋だ!

 獲物を獲る為に俺達は急いでジャングルに再度戻る。

 だがその途中で人だかりが出来ていた。


「なんだろー?」

「姉さんの出待ちかも」

「えへへ、それは照れるなー」


 ロピは人だかりの方に近づく。


「ほっほっほ。どうやらロピ殿の出待ちでは無さそうですな」

「えー」

「残念……」

「リガス、何の人だかりか分かるか?」

「ふむ。どうやら先程の集団ですな」


 マジかよ……。


「お兄さん、人がどんどん集まってくるよ?」

「凄い人だかりです」

「何やら募集しておりますな」

「とりあえず近付いてみるか……」


 人集りに近付くと、先程の集団が演説をしていた。


「皆の者! 注目するんだ!」


 台に登り高い位置から大声で呼びかける人間。

 そんな人間を店の店員や一本道を歩いていた者達は足を止めて注目し始める。

 そして台の上に乗っている男は自身に注目が集まっている事を確認すると、大衆に向けて更に大声で呼びかける。


「我々は強き者を募集している!」


 強き者?


「今、我々はモンスターが蔓延る場所の更に奥を目指しているのだが、モンスターの数が多い為兵士が必要だ」


 周りの人間達も何の事か分からないのか、あちこちから話し声が聞こえる。


「理由は教えられないが成功した暁にはそれ相応の褒美を用意している」


 台の男が声を掛けると脇で待機していた兵士達が大きな宝箱を運び大衆の目の前に置かれた。


「これが成功した時の報酬になる」


 宝箱を開けると中には金や豪華な装飾がギッシリと入っていた。


「あ、あれ本物かなー?」

「ね、姉さん落ち着いて。あれだけ有ればもうご飯に困らない……」


 姉妹は宝箱から目を離せられないのか瞬きもせずに凝視している。

 周りの人間達も同じく宝箱から目が離せないでいる。


「見て貰えば分かると思うが、これだけの財宝があれば暮らしていくのに困らないだろ」


 確かにあの宝箱に入っている財宝の三分の一もあれば一生遊んで暮らせるだろう。


「これと同等の宝箱が後二十個ある!」


 これまでに一番の反応が大衆から上がる。


「参加者でこの宝箱を分け合って貰ってもいいし、好きにしてくれ。また、もし仮に参加者が一人だった場合で成功したら一人で全て貰って頂いて結構!」

「「「「「「おーーー!!」」」」」」


 その一言で大衆が食いついた。


「俺参加するぞ!」

「お、俺も!」

「お前ら雑魚はお呼びじゃねぇーんだよ!」

「私達も参加するわ!!」


 そこからは押し合い蹴り合いの様に台の男に向かって詰め寄る。


「それでは出発は一週間後にする! 参加希望の者は朝に村の入り口に集まってくれ」


 俺達の周りでは、早速武器を新調すると言ったり、パーティを組む為に他の者達に声を掛けたりと参加表明している者達が殆どの様だ。


「参加するのは良いが、これは命が掛かっている! 我々の兵士も何人か殺された。くれぐれも命の危険がある事だけは知っといて貰らいたい!」


 兵士の注意喚起に関してはあまり聞こえておらず皆は宝箱の事に夢中であった。


「お、お兄さんどうする!?」

「ア、アトス様! どうされますか!?」


 どうやらココにも宝箱に夢中で話を聞いてない者達が居たようだ。


「なんか、怪しくねぇーか?」

「ふむ。アトス殿の言う通り怪しいですな」

「で、でもあれだけの財宝があればメガネさんに払う事が出来るよ!?」

「それは、そうなんだけど……」


 トラクに武器の代金を払わないといけないが、まだ目処が立っておらず、丁度どうするか考えていた所である。


「とにかく一度皆んなで考えよう」

「ほっほっほ。そうですな、どっちにしろ一週間は時間がありますし」

「わ、分かった!」

「姉さん、あれだけあれば一生安泰だよ!」

「そ、そうだよね!?」


 二人は宝箱に入っていた財宝が未だに忘れられないのか、興奮が収まらないらしい。


「アトス殿、どうされるんです?」

「うーん、怪しいけど、金が無いのは確かだからな……」

「あれだけ有ればお釣りが来ますな」

「リガスはどうするべきだと思う?」

「ふむ。参加して危なくなったら逃げれば良いでしょう」


 確かに……。


「確かにそうだけど、それだと流石に不味く無いか?」

「ほっほっほ。仲間以外どうなろうと私には関係ありませんな」


 やはりここの世界に住んでいる人達は基本ドライだな。シクも恐らくリガスと同じ意見だろうし、ロピやチルも同様だろう……。


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