第156話 職人探し

 ドワーフの村は人が多く、とても賑わっていた。色々な武器屋、防具屋、他にも旅に役立ちそうな物が売っていたり、珍味などが売っているお店などがある。

 その活気のお陰かチルの元気が戻って来たように見える。


「チルちゃん、アレ見て!」

「武器がいっぱいあるね」

「チルちゃんは武器使わないし防具の方が興味ある?」

「ううん、武器屋も見たいと思っているよ!」


 獣人姉妹は手を繋ぎながら楽しそうに見ている。


「ほっほっほ。チル様が少し元気を取り戻しましたな」

「あぁ。何が理由か分からないけど良かったよ」


 恐らくまだ悩みは解決して無いだろうが……。


「それにしても、凄い数だな……」

「どのお店でロピ殿の武器を作製してもらうか迷いますな」


 お金の問題があるが、そこは妥協しないで最高の武器をロピには使って欲しいな。


「お兄さーん、なんかこの店大きいからここ入っていいー?」


 ロピとチルが少し先にある店を指している。他の店と比べて十倍くらい大きい店がそこにはあった。


「大きい店だな」

「人も沢山居ますな」

「ここでなら最強の武器を作れるよ、きっと!」

「姉さん、あの剣凄い綺麗だよ」

「どれどれー?」


 四人で飾ってある店を見ていると、ドワーフが居たので恐らく店の亭主なのだろう。

 俺はドワーフに話しかける。


「すみません」

「いらっしゃい!」


 髭がモジャモジャのドワーフが営業スマイルを浮かべながら俺達を見る。


「何の武器を探しているんだ? ウチは品揃えも質もいいぜ」

「オーダーメイドでの武器作製とかしているか?」

「値段が高くなるが対応出来るぜ」


 当たり前だがここでも金か……。


「予約とかって出来るか……?」

「あぁ、問題無い」


 それから俺はドワーフにスリングショットの説明をして作製を頼んでみるが……。


「あん? そんなのドワーフである俺が作るわけねぇーだろ!!」


 いきなり烈火の如く怒りだすドワーフに俺達は戸惑ってしまう。


「なんだその武器は。弓でも無いし、そんな中途半端な武器で何が出来るんだ!」

「い、いやこれでも鹿とかモンスターを狩れるんだが……」


 俺は亭主の怒声にビビり声が小さくなる……。

 このドワーフこぇーよ。


「石を飛ばすだけで鹿なんて狩れる訳がねぇ! それにモンスター相手なら尚更だ!」


 確かに、石を飛ばすだけでモンスターを倒せると思わないのはしょうがない。実際にロピのスキルが無ければ絶対ダメージなど与えられないだろうし、それなら素直に弓を使用した方が全然マシだろう。


「それに、俺の店はこのドワーフの村で一番大きいんだよ! 俺にもプライドがある。そんな武器を俺が作ったなんて噂になったら、俺の店は終わりだ帰ってくれ!」


 有無を言わさずに俺達は店を追い出されてしまう。


「もぅー! 私の最強武器の良さが分からないなんて武器職人失格だよ!」

「落ち着いて。姉さんの技の威力を見せたら向こうから作りたいって言ってくるよ?」

「チル様の言う通りですな。あの技を見たらスリングショットの有用性が分かると思います」

「だけどアレはロピのスキルを組み合わせて初めて出来る芸当だからな……。他の人がスリングショットを使用してもせいぜい狩猟に使える程度だろう」


 やはりこの世界では弓が後衛職で使う武器という認識だろう。

 それから俺達は良さげな武器屋を何店舗か周りスリングショットの作製が出来ないか聞いて回るが、結果は先程同様にドワーフのプライドとして、その様な武器と思えない物は作れないと断られてしまった。

 ただ、全部の武器屋が断ると言うよりかは、大きくて有名である店を持つドワーフが断る感じである。

 逆に、店の前にあまり人が居ない所に聞いてみると難色した顔をしつつも引き受けてくれる店も沢山あった。

 だがロピがヤル気ない人に最強の武器は作れないと言い断ったのだ。


「なかなか見つからない」

「ほっほっほ。ドワーフも頑固ですが、ロピ殿も頑固ですからな」

「だって、あんなヤル気ない感じで作ってもらっても意味無い!」


 リガスの言う通り、ロピは頑固であった。その後も何店舗も回って作製依頼をし、作っても良いと言ってくれる店はいくつも有ったが、どのドワーフもやはり難色の表情を見せた。そしてその表情が出る度にロピは他の店に頼むと言って断ってしまうのだ……。


「とりあえず、今日はここまでにして寝床を確保しよう」

「えー。もっと見たい!」

「姉さん、また明日もあるから」


 早く武器を作製したいのか、ロピはまだまだスリングショットを作製してくれる職人を探したいらしいが、そろそろ日が暮れる為明日にする事にした。


「明日こそ、良い職人を探してみせる」

「私も手伝うね」

「チルちゃん、ありがとうー」

「ほっほっほ。お金も稼がないとですな」

「それを思いださせんなよ……」


 金の無い俺達は、適当な場所を見つけて野宿の準備をする。周りを見渡すと、同じくテントを張って居たり、野宿の準備をしている者達が沢山いる。


「みんなお金無いんだねー」

「姉さん、声が大きい!」

「ほっほっほ。世の中厳しいですな」


 俺達の様な者は村にある宿に泊まるお金が無い為この様な場所で寝るしか無いが、商人など、比較的お金を持っている者達は宿を借りている。


「なんで商人さん達も武器を見るの?」

「ふむ。恐らくここで良い武器を買って他の場所で売るんですな」


 転売か……。

 俺もすればよかった。


「でも、人数が多いから夜の見張りとかは楽でいいな」

「むしろ、村で見張り的なのを立てているから、夜の見張り要らないね」

「確かにそうですな」


 

 こうして俺達は深い眠りに就いた。

 


 

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