第135話 イケメンのピンチ!
そこには五人の冒険者が居る。そのパーティは顔の整ったショートソードを装備した男と弓矢を装備した女性四人である。
「ふふ。私の武勇を見ててー?」
一人の女が男に擦り寄る様に近づき耳元で囁く。
「あ、あぁ。もちろんさ!」
男は女にそこまで慣れていないのか過剰なスキンシップに戸惑いながらも返事を返す。そして、それを見ていた別の女性達も我先と男に近づく。
「ちょっとアンタ! 何しているんですか!?」
「ババァが色付いてんじゃねぇーよ!」
「私からしたら、みんなババァ……」
「「「あ?!」」」
「ご、ごめんなさい……」
先程まで男について言い争っていたはずなのに、今度は女性同士についての言い争いを始める。
「み、みんな落ち着いて。モンスターがそろそろ来るよ?」
「ふふ、あんな奴らほっとけばいいのよ」
「で、でも流石にそんな状況じゃ無いと思うんだけど……」
「ふふ、本当にアナタ最高だわ……。顔はカッコイイのに、女慣れしてない所が良いわ」
女性三人で争いをしているのを良い事に女は男に対して更に詰め寄る様に接触する。そしてそれに気付いた三人が更に怒り出す。
「アンタ抜け駆けは許さないわよ!」
「バ、ババァ! お前何しているんだよ!」
「生き急いでいるオバさん達は行動が早い……」
「「「あ!?」」」
「ご、ごめんなさい……」
「あはは、さて皆んな、お遊びは終わりだよ。モンスターがすぐそこまで来ている」
流石にモンスターの気配がすぐそこまで近付いて来ているのを察知して男は女性達に戦闘準備をする様に指示を出す。そして五人が構えを取ると直ぐに茂みから小型が姿を現した。
「それでは皆さんいつも通りいきましょう」
「よっしゃー! ババァは下がってな」
「ふふ。貴方こそ下がりなさい」
「アナタ達仲悪いですね」
「皆んな仲良くしよ……」
小型が現れても後衛である女性達は言い争っている。しかし、しっかりと小型から目を離さず弓を構えている。そして男の方も小型に向かい走り出す。
「女性達の仲は難しいね……。まぁ今は小型に集中しなくちゃな」
そう言って男は小型の注意を惹きつける為に目の辺りを斬りつけてから直ぐに離れる。その姿は美しく舞う様に見えるだろう。
「ふふ。やっぱりいいわー」
「おう。それに関してはババァに同意だ」
「私もアナタ達と同じ意見です」
「この事に関しては歳は関係無いね」
「「「あん?!」」」
「す、すみません……」
男の戦い方は倒す為のものでは無い。それは人間もモンスターも惹きつける為のものなのだ。
その影響は大きく、不思議と今までの小型は後衛を狙わず常に男の方に向かって行くのだ。
だが先程も言ったが男の戦い方は相手を倒すものでは無い。攻撃自体もモンスター所か人を殺傷出来る威力さえ無い。なので男一人で戦闘した場合は恐らく動物すら狩れないだろう。だが男には仲間が居る、そして攻撃担当がいる事により男の戦闘スタイルは価値が出てくるのだ。
「もっと攻撃しないと流石に惹きつけられないか」
そう言って男は舞うテンポを上げた。その姿は先程まで優雅な物腰であったがテンポが上がった事でより一層完成度が高くなり魅了する動きになったと言えよう。そしてテンポを早める事により小型に対しての攻撃回数が増えて来た。
「よし、大分注意を惹きつけられたな」
小型が男に惹きつけられた事を確認した後衛達は攻撃の準備に入る。
「ふふ。テンポ上げたわね」
「だな!」
「ちょ、ちょっとアナタ達アレを見て下さい!」
「ん?」
攻撃するのも忘れて後衛達が見たのは、一人の魔族であった。大盾を構えて小型の突進を受け止めていたのだ。
「な、なによあれ……?」
「歳食っているんだから、アレくらい説明出来るんだろ……?」
「アナタ達、せ、戦闘に集中です!」
「信じられない……」
各々が驚き何やら呟いていた。それは後衛の女性達だけでは無く、前衛で小型を惹きつけている男もそうであった。
「な、なんだアレ? ひ、一人で受け止めているのか!?」
舞う様に動いていた男だったが魔族がとんでもない事をしているのを見て一瞬止まってしまった……。そしてその隙を狙ったのか分からないが小型が攻撃を仕掛けてくる。男は一度止まった舞を直ぐに再開させようとするが遅く、直撃を食らった。
「や、ヤバイ!」
そう呟いた瞬間に男は吹き飛ばされて気を失った。
「ま、不味いわよ!?」
「気絶しちまったのか?!」
「とにかく攻撃です! こちらに注意を惹きつけないと食べられますよ!」
「それは絶対にダメ……」
後衛達は各自矢を強化して小型に向けて撃つ。炎に包まれた矢先と風で強化された矢先が小型に突き刺さるが、小型は気にした様子も無く男に向かって行く。
「な、なんでよ……?」
「確実にダメージは食らっているぜ?」
「いつもなら前衛が居ないと直ぐにこちらに来ますのに」
「食べられちゃう……」
後衛の女性達が驚いているのも無理は無いだろう。いつもなら前衛がモンスターの注意を惹きつけないと直ぐにこちらに向かってくる筈なのに今回は男に向かって行くのだ。
「今回の小型おかしくない!?」
「ババァに言われなくても分かっているんだよ!」
「とにかく攻撃して少しでもこちらに惹きつけましょう!」
「うぅ……食べられちゃう……」
一番年齢が若い女の子が泣きながらも小型に向かって矢を撃つ。だがその行為も虚しく小型はとうとう男の目の前に到着した。
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