第117話 休憩所での出来事
俺達は休憩所に着いてから寝床を準備している時に獣人族達が近づいて来た。俺達の周りに寝床を置いている者は居ないので俺達に用がありそうだな……。
「おい、そこのクセー人間族!」
んー、もしかしなくても臭い人間族は俺の事か? 俺は声を掛けて来た方に向いた。そこには二人の獣人族が立っていた。獣人族だけあって大柄である。
「えっと、俺の事か?」
「お前以外誰が居るんだよ!」
そう言うと獣人の男二人が武器を構えて走りながら向かって来た。
「さ、さすがにいきなり過ぎじゃないか!?」
ロピやチルに引けを取らない程の速度で近付いて来る。やばい、俺では太刀打ち出来ない相手だ!
「人間族め。俺達獣人族をいつもコケにしやがって」
「兄貴、俺が先にボコボコにしてやるぜ!」
一人の獣人が前に出た。そして物凄い形相で俺の事を睨みつけている。
「人間族が!」
獣人族の鋭い蹴りが飛んで来た。あ、これ終わったな……。俺は避ける事も防御する事も間に合わないと思い、ただ蹴りが迫ってくるのを見ているしか出来なかった。すると俺の後ろから黒い影が横切った。
「な、なに!?」
蹴りを放った獣人族が驚いているのが見える。
「アトス様、無事ですか!?」
「チル、ありがとう……」
俺は突然の出来事で何が起きたか分からなかった。
「おい! 何故人間族を庇う!」
「私の主人だから」
「ッッ! やっぱり……」
獣人の男が更に怖い表情をして睨みつけて来た。
「兄貴!」
「任せろ、人間族風情が獣人を好きに出来ると思うな」
もう一人の獣人がチル達を超えて俺に攻撃を仕掛けて来た。
何やらスキルを利用しているのか異様に足が早い。
「ま、またかよ」
俺は慌てて獣人に背を向けて走り出す。
「遅い!」
「ほっほっほ。そうでもありませんよ?」
「魔族だと!?」
次はリガスが攻撃を受け止めてくれる。そしてロピは俺の前に立ち壁になるような立ち回りをしてくれている。てか三人とも反応早過ぎね?
「お兄さん大丈夫だった?」
「みんなのお陰で何ともないよ」
「よかったー」
こちらを向き嬉しそうに笑うロピだが再び前を向くと険しい表情で獣人二人を見ている。
「何故アトス様に攻撃を仕掛けた」
「アトス様だぁ!? ッチやっぱりコイツを殺すしかないか」
「なんだと?」
「兄貴! やっぱり遅かったぜ!」
「やむ終えない、ソイツをやれ」
「あいよ!」
口調の悪い獣人がチルを無視して俺の方に向かってくる。
「お兄さん、下がってて!」
「お前さんにも用は無いんだわ」
「え?」
そしてロピも飛び越えて再び俺に攻撃を仕掛けてきた。今回は既に頭の中を戦闘態勢に切り替えているので、なんとか反応する。
「ッチ避けてるんじゃねぇーよ」
次々と攻撃をしてくる。俺は地面を転がりながら攻撃を避けていく。
「フッハ、なんだよその避け方」
不恰好だっていいんだよほっとけ!
心の中で悪態を吐きつつ地面を転げ回る。その間もチルとロピは獣人に攻撃をするが、全て避けて執拗に俺を狙ってくる。
「姉さん!」
「オッケー!」
チルが再度獣人の男に攻撃を仕掛ける。だが案の定躱されてしまうが今度は細かく攻撃をしているので、なかなか振り切れないでいるらしい。
「ッチ、なかなか振り切れねぇな」
「逃さない」
「兄貴!」
男がリガス達の方を見ると獣人は既に倒されていた。
「あ、兄貴!」
「強過ぎる……」
「ほっほっほ。いえいえ」
その後はロピとチル達の戦闘も呆気なく終わった。
「チルちゃん退いて!」
ロピの合図によりチルはすぐ様その場を離れた。そしてロピの手には小石が握られている。
「電気付与。いっけー!」
ロピが投げた小石が獣人に当たる。
「あ? こんな小石で何がガガガァ!?」
小石が当たった瞬間に獣人は一度大きく痙攣した。
「な、なんだこれ動けねぇ……」
「チルちゃん今だよ!」
そして先ほど離れたチルが再び獣人の目の前に現れる。
「アームズ……」
「!?」
「少し眠るといいと思う」
チルの重い一撃が腹を抉った。獣人は白目を剥きそのまま気絶した。
「ほっほっほ、二人共良い連携でしたよ」
「ほんとー?」
「えぇ」
「よかったねチルちゃん!」
「うん。姉さんのサポート最高だった」
「チルちゃんの一撃もね!」
それにしても、コイツらなんで俺の事を狙ったんだ?
すると、今の騒ぎを遠巻きに見ていた人達が集まって来た。
「いやー、あんたら強いね。そいつらはここら辺で一番強い獣人なんだけどね」
先程、俺達に色々教えてくれた人間族の人が近付いて来る。
「コイツらはなんで俺を?」
「気を悪くしないかい?」
少し言い辛そうに俺の方を向きながら話しかけて来る。どうやらこの獣人達は同胞であるロピとチルが俺に無理矢理奴隷にさせられていると思い込んでいたらしい。そこで助ける為に俺を狙ったと……。
「それにしても、いきなり襲い掛かってくるものか?」
「ははは、それは単純にこの二人が血の気が多いだけだね」
シクの講義で人間族は他種族を奴隷にすると習ったし、そういうイメージが他の種族に根付いてしまっているのも仕方の無い事に思える。
「アトス様を狙うなんて絶対許せません」
「そうだー、そうだー」
「このゴミ二人を死刑にしましょう」
「そうだー、そうだー……ん?!」
悪ノリしていたロピがチルの言葉に疑問を持った。
「チルちゃん? それはやり過ぎなんじゃないのかな?」
「そんな事ない。このゴミ達は神に手を出したのだから」
「あ、始まっちゃった……」
ロピは諦めて俺の側まで来て座り込んだ。そしてチルは縛り上げた二人の周りに出来るだけ乾いた木材などを置いている。
「チ、チル何しているのかな?」
「はい、コイツらを燃やそうかと思いまして。リガスもっと乾いた木が必要」
「かしこまりました」
いやいや、お前も何普通にチルの言う事聞いちゃっているの!?
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