第110話 アトスの実力 2
俺は意識をチル以外にも向ける。もちろんチルのサポートは引き続き継続しているが、グイン達の方も視界に収める。
そして、グインに青いラインを敷く。
「ガード!」
グインの足元に俺にしか見えない青いラインが現れる。
「どうだ……?」
様子を見てみるが何の変化もしていない様だ。
「ダメなのか……?」
「お兄さん、何か試しているの?」
ロピが心配そうに見つめて来るが今は応える余裕が無い。そもそもロピやチル、グインに対してはサポート効果が反映して他の者には反映されないのは何故だ?
俺に酒場で能力向上を教えてくれたカカは俺に対して効果を反映させていた。別にその場で会った関係なのにもかかわらずだ。
「俺の意識の問題か?」
俺は仲間意識の領域を仲間のリザードマン達まで広げてみた。無理やりだろうが、頭の中ではグイン達が仲間だと何度も繰り返す。
その間にもリザードマン達は致命傷は負わないまでも、擦り傷などがドンドン増えて来る。そしてグインに対して複数の敵が剣撃を振り下ろす。
「あ! チルちゃんの先生が!」
ロピは斬られる瞬間を見たく無いのか目を背けてしまっている。
「頼む! ガード!!」
そして最期のチャンスだと思い再びグインに青ラインを敷く。
「お、お兄さん! チルちゃん先生無事だよ!!」
「よし!」
グインの方を見ると斬られた筈なのに無傷なのが信じられないと言うように不思議そうな顔をしている。そして相手側のリザードマンも不思議そうにしている。
「おい! グインの野郎も獣人みたいに攻撃が効いてねぇーぞ!」
「……話している暇があるのか?」
グインは直ぐに正気に戻り不思議現象については一度忘れる事にしたのか鋭い肘打ちを敵にかましている。
「お前ら、グインを早くやっちまえ!」
「おう!」
相手側も正気に戻り再び攻撃を再開した。だがグインには攻撃が効かない。何故なら俺のスキル効果が反映しているからだ。
「成功して良かったぜ……」
そして俺はそのまま他の仲間であるリザードマン達にも意識を広げてサポートを試みる。
「ガード!」
よし! 他のリザードマン達にもしっかりと効果が効いている! そして今気付いたが青のラインを俺は一度に5個も出している。
「最大何個まで出せるんだ?」
「え? なんか言った?」
「いや、何でもない。ロピはこっちに敵が来ないか確認しててくれ」
「まかせて!」
俺は意識や視野をどんどん広げる。
「ガード!」
五つのラインを一気に出す。そして仲間をひたすら守り続ける。グイン達も状況に慣れてきた様でチル同様相手からの多少の攻撃は無視して、攻撃に集中し始める。すると敵の数がどんどん減っていく。さすがここまで耐え忍んだだけはある。一人一人が相当の戦士なので敵を次々倒していく。
「お兄さん見て見て! チルちゃん達がどんどん薙ぎ倒していくよ!」
ロピは空を切る様にシャドーボクシングの真似をする。
そして、しばらく経つと数も減り残りはトッポと相手側の村長だけになった。
「えへへ、グ、グイン作戦成功だな」
「……何を言っている?」
「俺は、裏切った様に見せてただけなんだよ!」
なんて言い訳だ……。
「チルちゃん先生、そんな奴ぶっ飛ばしちゃえ!」
「……そうだな」
「ま、待ってくれよ! な?」
「……問答無用だ」
グインは素早くトッポに三発放つ。
「ウゥ……、イテ……」
トッポは地面に片膝を着く。そして次は村長の方に詰め寄る。
「グイン、やめてくれ。女達は返すから」
「先生、そんな奴ぶっ飛ばすべき!」
「……承知した」
チルはロピと同じ様にグインに言うと、またグインも同じ様に三発放ち村長は気絶した。
そして、グイン達は奥さんや子供達を解放してお互い抱き合っている。
「お兄さん良かったね!」
「あぁ。やっぱり家族は一緒じゃないとな……」
「アトス様には私達がいます」
「そうだよ! 魔族さんもね!」
「ありがとうな」
俺は二人を優しく抱きしめる。
「「えへへ」」
二人はお互い向き合って最高の笑顔を向けあっている。そして俺が離れると物足りなさそうに見ている。
……はは、まだ子供だな。
そして、喜びの再会を果たしていたグイン達がこちらに来た。
「……アトス様、今回は本当にありがとうございました」
「「「「「「ありがとう!」」」」」」
グインの言葉に続けて他のリザードマン達もお礼を言ってきた。
「……チルから聞きました。途中から敵の攻撃が効かなくなったのはアトス様のお陰だと」
「いや、気にしないでくれ。これからどうするんだ?」
「俺達は村に戻って生活を続けます」
「そうか」
どうやら今回の戦闘で大人数のリザードマン達が亡くなった。それは両方の村合わせてだ。グイン達はこの村のリザードマン達の生き残りと一緒に生きていくらしい。もちろん罰は与えると言っていた。ただしトッポに関しては他者より重い罪を与えるらしい。
「……アトス様達はこれからどうされるつもりで?」
「その事なんだが、一つお願いがある」
「……なんなりと」
「しばらく村で休ませてくれ。リガスを回復させたい」
「……もちろんです」
「それと、この子を引き続き鍛えてあげて欲しい」
俺はチルの背中を優しく押して一歩前に出す。
「アトス様?」
「強くなりたいんだろ?」
俺はチルに慣れないウィンクをする。
「はい! 先生、引き続き戦闘を教えて下さい」
「……アトス様が仰るなら心得た!」
「チルちゃん良かったね」
「うん!」
こうしてリザードマンの女性達を助け出して俺達はしばらく村に滞在した。
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