第37話 Sランク! しかし……
──ッん?! 今バリン! とか聞こえたが……?
先程まで触っていた水晶玉の感触が無い。
これ、目を開けていいのかな……。
俺は目を開けていいか聞こうと、口を開けた時、黒い人が何やら呟いていた。
「え、Sランクだと……。こんな子が……?」
──ッえ?! 今Sランクって聞こえたような!! もしや、本当に異世界無双きたか?!
「……ん? だがスキルは……」
え? 何? スキルは何よ! 俺は耐えきれずに黒い人に聞いた。
「あ、あの、目を開けてもいいですか?」
「あぁ、もう開けていいぞ」
俺は目を開ける。さっきまで手を翳していた水晶玉が無くなっており、俺の周りにはガラスの破片が散らばっていた。
「水晶玉って私のせいですか……?」
「……」
無言かよ。怖い、相当怒っているのか?
「あ、あのーー」
「ふむ。ちょっと待っていなさい」
そう言って、黒い人は更に奥の部屋に行った。
な、なんだろう? 怒っている雰囲気では無かったが、もしかして請求書的なの持ってくる気か?
しばらくの間、ソワソワしていると黒い人が戻ってきた。
「これを」
黒い人の手から、プレートを貰う。
あ、これデグ達が持っていたスキルが記載されているプレートか。
そこには、
【能力上昇(サポート全 S)】
と記載されていた。
「──ッえ?! おー!? 異世界最強キターー!! Sだ!! よーーし!」
俺は嬉しすぎて両手を上げて力一杯叫んだ。
「スキルの種類も見てみなさい」
Sの文字だけに集中して見ていて気付かなかったが、スキルの種類を見た瞬間に、先程までの嬉しい気持ちがみるみる下がっていく。
「能力上昇……? マジかよ……」
「スキルもランクもとても珍しい」
「でも、能力上昇……」
俺が一番欲しくないスキルだ……。
「そんなに、落ち込む事もない。珍しいスキルである事には変わりない」
「ですが、弱いで有名と聞きました」
「ふむ」
ふむってなんだよ。
「能力上昇って実際どんなスキルなんですか?」
「仲間の能力を上げるスキルだな」
「身体強化で充分だと思う……」
「まぁ、実際に能力上昇のスキルの使い手は少ないが、ここの街にも確か居たと思うから詳しく聞きたいなら、そっちで聞いた方がいいだろ」
あ、なんかもう、めんどくさそうな感じだ。
本来、身体強化や武器強化のスキルで高ランクになると、街で手厚い補助などが受けられるらしい。理由としては、モンスター対策の為だ。
高ランクは一人で小型を倒せたり、中型討伐にもかなりの活躍が期待出来る為、街に住む偉い人達がすぐに囲って人間族の住処から出て行かないようにするらしい。
普通Sランクだったら、こんな雑な扱いされないだろ……。やはり能力上昇のせいか?!
「では、儀式完了だ」
「ありがとうございます……」
早く出て行ってくれと言われている感じがする、クソ!
俺はデグ達が居る場所に戻る事にした。
「お! アトス! どうだった?」
「凄い気になる……」
「……」
俺が凄い落ち込んでいたからなのか、デグ達は焦ったらしい。
「ま、まぁ! スキルが全てじゃないしな! 弱くても気にするなよ」
「そ、そう。臭いのもスキル弱いし気にしない方がいい……」
「うるせ! ベム、お前はいつも一言多いんだよ!」
「スキルの事は、帰ってから話すよ」
こうして、俺達は家に戻った。
「アトス、結局スキルはどうだったんだ?」
「これ」
俺は、スキルが記載されているプレートをデグに渡す。
「どれどれ……。え?! おい!! アトス、Sランクってなんだよ?!」
「え?! デグ私も見たい……」
珍しく、ベムが驚いて身を乗り出してプレートを覗き込んでいる。
「本当だ……。アトス凄い……」
「これはスゲェな……」
二人はとても驚いていた。
「ランクは確かに凄いけど、スキルの種類が……」
「ま、まぁ確かに能力上昇かもしれないけど、実際使用してみたら強いかもしれないぜ?」
「使い方も分からないらしくて、この街に能力向上スキルを所持している人が居るから聞いてみろって言われた」
スキル儀式では武器強化のスキルを狙っていた為、凄い落ち込んで居るのが自分でも分かる。
「アトス、とりあえずその能力上昇の人に会いに行こう……」
「そうだぜ! 弱いって言うのもただの噂かもしれないぜ!」
「そ、そうかな?」
「そうだぜ! もしかしたらモンスター討伐にメチャクチャ役にたつかもしれないぜ!」
「ベムもそう思う。アトス落ち込むのは話を聞いてからにしよ……?」
「そ、そうだよね!」
デグとベムの言葉に少し希望が持てて来たかも!
デグが冒険者達から情報を集めてくれて、能力上昇の使い手を見つけて来てくれたので、今から向かう事にした。
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