卒業文集

む つ き

出席番号 1番 消息

これは卒業文集の場を借りた、私への消息である。


私へ、中学入学してから色々なことがあったね。私は、この学校が感受性豊かな友人たちと語り合い、高め合い、学んでいける環境だと妄想していました。そんな小説で読んだような中学校はここには存在しなかった、と気づいた時には滅した幻想の大きさに呆然とするしかなかったよね。それでも周りについていこうとしたけど、やはり大きすぎるギャップを埋めることはできなかった。

空気を読めない子の烙印を押された私は学校に行くのが億劫になりましたね。たくさん傷ついたよね。泣いて泣いてずーっと泣いて、もっと泣きたいはずなのに涙が出なくなって、ずっと、周りと足並み揃わない自分への嫌悪と酷い仕打ちへの憎悪を消化できない夜だった。


でもね、あの日、そうあの日ね、大人に助けを求めてくれてありがとう。『死』の恐ろしさに屈してくれてありがとう。

人間としての恐怖心を忘れないでくれてありがとう。

朦朧としてきた意識の中で曖昧だった『死』という概念が現実性を帯びて迫ってきたような気分がして、ずっと望んでいたはずの『死』が途端に大きくて冷たくて暗い塊に見えて、とんでもなく怖くなったんだよね。まだ鮮明に覚えてるよ。速くなる鼓動を指の先まで感じて、身体は一生懸命に生きようとしている事実に震えたその足のまま保健室に駆け込んだ。

お陰で今を生きています。生きてて良かったよ。嬉しいことも割とあったからさ。死ななくても今のところ大丈夫だよ。死ぬのは今じゃなくても大丈夫だよ。

冷静になって周りを見回してみて。

すごく少ないけど素の私のことをわかってくれて寄り添ってくれる人はいるでしょ。その人と今は生きていくことにしたよ。


そして、10年後の私へ。幸せですか?

きっと今の私には想像もできないような苦しみに苛まれているんだろうな。

生きる苦しみが、死ぬ恐怖に勝ってしまうようなことがあるかもしれません。死なないで、なんて短絡的なことは言いません。それを言われるのが一番困るってわかってるから。

でも、18歳のあなたは生きたいと願ったという事実は忘れないでください。

そして、たまにでいいから思い出してください。意識が遠のく中、大嫌いだったはずの大人に助けを求めたあの生命力を。あの恐怖の感性を。

では、またね。きっと10年なんてあっという間ですよね。この6年間があっという間だったように。

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