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「すみません見てないです。でも何で?」
正直に言うと、広人は姿勢を正して言った。
「実は、初めてお見合いをしたときに出会った彼女が忘れられないんです。」
(初めてのお見合い?誰?)
「とても綺麗でしっかりしてるのに、酔ったり怒ったり立てなくなったり、無防備にも寝てしまったり。とても可愛いでしょう?その人がずっと頭から消えないんです。」
広人の言葉に、杏奈は一気にあの日の記憶がよみがえった。
酔ったあげく粗相をして、しかも怒って。
立てなくておぶってもらったはいいが、途中で寝てしまった。
あの日の記憶。
「あの、もしかしてそれって、わたしのこと?」
とたんに恥ずかしくなって恐る恐る聞いてみると、広人はにっこり笑って頷いた。
「そうです。僕も杏奈さんを見習って足掻いてみようかと。もう一度僕にチャンスをいただけないでしょうか?」
頭を下げる広人に、杏奈はポカンとするばかりだ。
頭がこんがらがって、上手く働かない。
広人の始めてのお見合いの相手は杏奈であり、その杏奈のことが忘れられない広人。
一度は断られたら身でありながら、もう一度チャンスをくれという。
それはどういうことなのか。
考えたらとても重要なことを言われている気がして、杏奈の胸は勝手にドキドキし始める。
「そ、それならちゃんと言ってください。広人さんの気持ち。ちゃんと聞きたい。」
言いつつも、頬に熱が集まるのがわかった。
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