35
杏奈は出勤前に寄ったが、minamiは開店直後らしくまだ人の気配はない。
杏奈は大きく深呼吸をしてから、思いきって中へ入っていった。
「いらっしゃいませ。」
店内へ足を踏み入れた直後に、満面の笑顔の琴葉に迎え入れられる。
琴葉は杏奈を見ると、一瞬きょとんとしたが、すぐに笑顔になって言った。
「わあ、お久しぶりです!」
杏奈としては構えていたのに、琴葉からは敵意なんてこれっぽっちも見えなくて拍子抜けしてしまう。
「…お久しぶりです。」
逆に辿々しくなってしまった杏奈は、上手くきっかけが掴めずに無言でショーケースを眺めた。
ここパン屋minamiは、オープンなパン屋とは違い洋菓子店のようにショーケースにパンが並んでいる。
「お決まりでしたらお申し付けくださいね。」
無言でショーケースを見つめる杏奈に、琴葉が声をかける。
その物腰の柔らかさに、杏奈は胸がじんじんと痛んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます