14
何だかんだでまた母経由でお誘いがあり、またしても受けてしまった杏奈は一人項垂れていた。
断るつもりとか言いながら、またずるずると会ってしまっていいものだろうか。
まさかいつの間にか広人に惹かれているとでもいうのだろうか。
(いやいや、気の迷いだわ。)
はぁぁと大きく息を吐き出し、鏡で身なりを確認する。
「今日こそ断るわ!」
鏡に映る自分に向かって、そう高らかに宣言した。
今日は駅前で待ち合わせだ。
今回先に来ていたのは広人の方で、前とはうって変わってカジュアルな洋服だ。
それに先日買ったメガネをかけている。
遠目から見てもすごくかっこよく見えた。
メガネひとつでこうも印象が変わるとは、自分のセンスの良さに杏奈は思わず笑みがこぼれる。
「広人さん、断然この方がいいですよ!とても素敵です。」
「えっ、ありがとうございます。」
メガネを指差しながら杏奈が言うと、広人は頭を掻きながらお礼を言う。
なんとなく頬が赤くなった気がして、杏奈はからかうように言った。
「もしかして照れてます?」
そのとたん、広人は耳まで赤くなって、ごまかすように咳払いをした。
そして逆に杏奈を指摘する。
「あ、杏奈さん。スカートが短すぎです。それに胸元も開きすぎている。目のやり場に困るでしょう?」
「ええー?この格好変ですか?」
杏奈は裾をヒラヒラさせてみたりして首を傾げる。杏奈にとっては普段の格好そのままだ。特に猫を被ったりなんかしていない。
「いや、そういう訳じゃないです。その、杏奈さんが魅力的すぎて他の男性に見られるのが嫌と言いますか…。」
そう言いながら、広人は真っ赤になって口元を抑えながらゴニョゴニョと言い訳をする。
「はっ、すみません。別に僕たち付き合っている訳じゃないのに、そんなこと言って。」
「…いえ。」
褒められたような怒られたようなよくわからない気分になり、杏奈は少し考え込んだ。
広人の言動を見ていると自分に好意を寄せてくれているのではと思うことが多々あるのだが、よく考えたら未だ連絡先も交換していないし、そもそも“僕たち付き合っているわけじゃないのに”だなんて発言をするなんてまったくもって理解不能だ。
(じゃあ何で会うのよ?付き合いたいなら付き合ってって言えばいいじゃない?)
モヤモヤとした気持ちは膨らむばかりで終始そんなことを考えていたら、またしても断る機会を失って一日が終わった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます