07
今回はレストランの入口で待ち合わせだ。
前回とはガラッと雰囲気を変えて髪は下ろしてきたし、Aラインのシックなワンピースにヒールのある靴だ。ピアスとネックレスも少し派手目なものを選んで着けた。
広人はというと、前回同様シワのない上品なスーツに、やはりダサい分厚い黒淵メガネだ。
レストランの入口で待つ杏奈の姿を見て、広人は思わず固まった。
「びっくりしました。前と雰囲気が違いますね?」
「はい、こっちが本当の姿です。前回は猫被ってました。びっくりしましたよね?」
挑戦的に発言する杏奈に、広人は口元を手で覆う。
(さあ、嫌がりなさい。)
着物を着た上品な杏奈に幻想を抱いてはいけない。
それが良いというなら、それは杏奈の本当の姿ではないのだから、今日の姿を見てガッカリするに違いない。
杏奈としてはそれを期待していたわけなのだが。
「何というか、申し訳ない気持ちでいっぱいです。」
「はい。」
よしきた!
と思ったのは一瞬だった。
「僕なんかが隣にいていいのかなって。その、何というか、杏奈さんが綺麗すぎて…。」
「へっ?」
何を言われたか理解できずに、杏奈はすっとんきょうな声を出してぽかーんとしてしまう。
おかしい、嫌われる予定だったのに“綺麗”とか言わなかっただろうか。
「えっと、嫌じゃないんですか?」
訝しげに尋ねると、広人は照れたように頭を掻きながら言う。
「嫌だなんて滅相もない。僕はその、こんなですし、地味というか。」
ははっと柔らかく笑う広人に、杏奈はつられて思わず笑みがこぼれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます