第317話 RPNを下げよう

 さて、RPNによる評価で高得点が出たので、それを改善してみようということになった。

 前回説明したように、高得点は悪いのだ。

 会議室から場所を移し、今は冒険者ギルド内の訓練所にいる。


「剣士が剣がなくても戦えるってことを教えて上げるわ」


 シルビアはそういうと、鞘から抜いた剣を地面に置いた。

 剣を落としたシチュエーションを再現したのだ。

 敵役の俺はシルビアに襲いかかる。


「片手剣ならこうやって盾で打撃を与えることも出来るわよ」


 シルビアが盾でこちらの攻撃を防ぎつつ反撃してきた。

 所謂、シールドバッシュって奴だな。

 俺は盾が当たる瞬間に体を後ろに引いて、そのダメージを逃がす。

 荷重測定スキルで測定しても、0.0000000009ニュートンしか荷重はかかっていない。

 ナインオー……

 エヴァンゲリオン放送開始から25年ですか。

 そりゃあ、歳も取るはずだ。


 おっと、話がそれたな。

 この完璧な消力を使いこなすあたり、海皇になれるんじゃなかろうか?

 今の私ならオーガにも勝てる!

 いや、オーガは散々倒してきたけど。

 いい加減話を元に戻そう。


 シルビアの膂力なら、並みのモンスターは屠ることが出来そうだ。

 しかし、これは盾を持っている場合だ。


「両手剣だと盾は持ってないだろ。その場合はどうするんだ?」


 シルビアに一旦攻撃の手を止めてもらい、盾の無い場合の対処を考えてもらう。


「鞘による打撃か、自分の体を使った攻撃ね。剣士のジョブだとスキルがないから本職には負けるけど、剣を拾うまでの時間稼ぎくらいは出来るわよ」


「そうだね。ただ、剣が壊れて使い物にならない状況だと、拾い直すのは出来ないから、それの時は素手で相手と戦う術が必用か」


 故障モードで剣を落とすという事だっので、拾い直すまでの時間稼ぎが出来るなら、厳しさは段階を下げても良かったのだが、壊れたとなるとそれは違ってくるな。

 実際には、冒険者の多くはサブウェポンを持っているので、メインウェポンが使えなくなっても対処出来るようにしている。

 金の無い新人冒険者でなければ、ほぼ全員といってもいいだろう。

 そうなると、問題になってくるのは新人冒険者か。


「確かに、新人はサブウェポンを買うお金は無いし、武器のすっぽぬけもやるし、刃の角度が悪くて剣を折ったりするわね」


 シルビアが顎に手を当てて、新人の失敗しそうな事を挙げる。


「冒険者ギルドで新人にサブウェポンを貸し出すのはどうですか?」


 レオーネが対策案を提言してくる。


「それはいいかもしれないね。どうせ結果の報告に来るのだから、そのときに回収すればいいし」


 使えなくなるのを前提にした対策だな。

 落とさない、壊さないなんて絶対になくすことが出来るわけないし、サブウェポンの携帯を義務付けるのはいいかもしれない。


「落とさない工夫も必用じゃない?滑り止めを塗ったり、紐をつけたりすればいいのよ」


 シルビアの言う滑り止めはわかるが、紐は同意できないな。


「紐はダメだろ」


「何でよ」


「常時紐で手首と剣を繋いでいると、手の動作範囲が限られるだろ。紐を長くすると絡まるだろうし。それに、紐の効果で剣がどう動くかわからないから、自分自身を傷つけちゃう事もあるだろうな」


 前世では紐を使った対策はあった。

 検査ゲージで穴位置を確認するピンにワイヤーをつけて、落ちないように対策していたのだ。

 落下と紛失の対策だな。

 検査ゲージのピンなんて、刃がついているわけじゃないから、ワイヤーの長さの範囲でどう動いても危険はないが、冒険者の使う剣となるとそうも言ってられないだろう。


「だったら、腕に剣を埋め込んじゃえばいいのよ」


「宇宙海賊か!」


 左腕にショートソード埋め込んだら生活しづらいだろうな。


「柄の部分に布を巻いて滑り止めにするくらいしかないかしらね。金属だと滑りやすいから」


 シルビアは奇抜な案を止めて、まともな事を言う。


「金属でも、ローレット加工をすれば、滑り止めになるけどな」


「ローレット加工?」


 ローレット加工が無いので、シルビアがわからないのは当然だな。

 ローレット加工がわからない人はペットボトルのキャップをみて欲しい。

 ギザギザがついていると思う。

 それがローレット加工だ。

 Wikipediaだと金属に施すとあるので、樹脂であるペットボトルは厳密には違うのかな。

 あとはググレカス。


 一先ず現物を見せる必要があるため、リングゲージ作成スキルで、外周にローレット加工が施されたリングゲージを作り出した。

 外径と長さは剣の柄と同程度の寸法にしてある。

 シルビアは俺からリングゲージを受けとると、それを握って感触を確かめる。


「これなら滑りにくいわね。これでも剣を落とすようなら、冒険者には向いてないのよ」


 ジョブが剣士で、冒険者に向いてないとなると、どうやって生きていけばいいんだろうな?

 シルビアの言葉に、俺は考えてみる。

 まあ、そんな奴は品質管理部で鍛えてやればいいか。


「サブウェポンの携帯とローレット加工で厳しさと頻度を下げることが出来ますね!」


 レオーネの言葉に俺は頷いた。

 さて、次の故障モードに取り掛かろうか。




※作者の独り言

RPNの評価ってすごく時間がかかるんですよね。

だから、適当に書類だけ作っちゃったりする誘惑にかられたりする会社があったり、無かったり、ラジバンダリ。

コピペしたら、無い工程のRPN評価がされていて、客にバレて大目玉って話がどこかにあったとか。

真面目な話をすると、ポカヨケが必要かどうかは、RPN評価で決めています。

ポカヨケ無くても100%検出されるものなら、ポカヨケ必要ないですからね。

それにしても、走行中に屋根が取れる車はRPNが何点だったのか見てみたいですね。

やってない可能性もありますけど。

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